2話 「波紋の音」
あれから半日ほど経った。
その間、特に何も起こらず、ただ時間だけが過ぎていた。
俺は何をしていたかと言うと、考え事をしていた。
あのアネットの
「アーサー君は私の彼氏だから。これからもよろしくね!」
という言葉がずっと頭の中で暴れまわっている。
俺はほんとにアネットと付き合ってたのか?あんな可愛い人と?
だとしたら記憶喪失前の俺、すごすぎる。
俺は、少し俺の過去について気になってきた。
また、俺の能力についても。どんな感じで使えるんだろう。
そりゃー強いんだろうが、重力をどう操ることが出来るんだろう⋯。
なんかいろいろ試したけど、何もできそうにないしな⋯。
俺はそんな事を考えていた。
だが、今はもう考えても何も分からないという結論にいたり、ただただ布団でゴロゴロしている。
ガチャン
ドアが開く音がした。ドアが開く音を聞いたのは今回が初めてだ。
ドアのある方向を見ると、ちっちゃくて可愛らしい金髪の少女が立っていた。
ロリっ子だ!
「こんにちは、えーと⋯ア⋯アルバートさん!!」
「アネットさんから名前は聞いています!」
「ちがーう!!」
「え?」
「俺の名前はアルバートじゃない。アーサーだ!」
「ぁ、ぁレ?い、いや、冗談ですよ!」
「この天才超能力者が人の名前を忘れて間違えるなんて、あるはずがないじゃないですか!」
「本当か?」
「は、はい⋯」
少女はそっぽを向いて口笛をを吹いている。
あからさますぎる。絶対に素で間違えたが、今回は信じといてあげよう。
「ところで、君の名前は?」
「えっと、私の名前はルミナス・コメットです。コメットって呼んでください!」
彼女の名前はルミナス・コメット。
能力は光。
光を創造・操ることが出来る。
能力ランクはBランク。
めちゃくちゃ強いのだが、本人があまり使いこなせていない。
「能力は光です!」
「な、なあコメット」
「なんでしょうか?」
「その、能力とやらがよくわかんなくて、コメットのを見せてくれないか?」
「え、能力がわからない?」
「あ、そうでしたね!アーサーさんは記憶喪失中でした!」
「アネットさんに伝えられてたのに忘れてました!テヘッ」
すごい記憶能力が悪いのだろうか。なんかコメットはよく忘れている気がする。
それとも、ただ単に俺に意識が向いていないだけなのか。
だとしたら悲しいな⋯。
「では、私の能力を見ててください!」
「えっと、あそこにある花瓶めがけてうちますね!」
「ちょっ、ちょっと待て。花瓶にはうつな。後片付けがめんどくさいだろ」
「たしかに!じゃあ⋯」
コメットは俺の方を見た。
コメットは不敵な笑みを浮かべて俺の方を見ている。
その瞬間、俺は死を覚悟した。
「ま、待て!!早まるな!俺はまだ死にたくない!」
「冗談ですよ!」
コメットはクスクスと笑った。
俺は気が気ではなかったが、俺も笑ってごまかした。
「では、窓の外に打つのはどうでしょう?」
「それでいこう」
コメットは技のポーズらしきものを採り始めた。
窓の方向に手のひらを向けている。思っていたほど大層なものではなさそうだ。
手のひらが光り始めた。
「ライトビーム!!!」
ドゥオン!
コメットがそういった瞬間、衝撃波で俺はふっとばされそうになった。
衝撃波の後、白いレーザーみたいなものがコメットの手のひらから飛び出した。
窓ガラスに穴を開け、その後すぐに窓ガラスが崩壊した。
「ライトビーム」という技名はダサいと思ってしまったが、威力は優秀なようだ。
あれを本当に俺にうっていたなら、間違いなく死んでいただろう。危ない危ない。
「コメット、能力ランク?ってやつはいくつだ?」
「えーっと、私はBですね。あ、でも今のが本気じゃないですから!コメットは、もっと強いライトビームを出せたりしますし、他の技だって打てます!」
俺は驚いた。コメットでBランクなのか。しかもこれ以上の力も秘めていそうだ。
そうすると、俺のSランクって相当やばいんじゃないか。
どのくらい強いんだろう、神様とかと渡り合えたりするのかな。
俺は気になってコメットに聞いてみた。
「コメット、俺の能力、重力でSランクなんだが、どのくらい強いんだ?」
「そうでしたね!アーサーさんはSランクでした!」
「Sランクは⋯世界で唯一の一人だった気がします!超能力研究会がだしていた指標によると天変地異レベルだとか」
「ま、まじ?」
やばいな、俺。
早く能力を使ってみたいと思った。でも重力は対象を選ばないとなんだっけ。
天変地異とか言ってるからヤバそうだし、今は使わないでおこう。
そもそも、使い方が分からないのだが。
「アーサーさん、超強いですよね!戦闘の時ドがガガーンって敵を一網打尽にして!」
「でも、Sランクなのに重力なのが残念です⋯」
「ど、どういう意味だ?」
「重力って比較的弱い方なんですよ。巷では最弱とも呼ばれてたり」
「Sランクだからアーサーさんは強いですけど」
なんか、コメットの話を聞いていると勘違いしていたかもしれない。
能力そのものに能力ランクがあるのではなく、本人が能力をどのくらい使いこなせているかで能力ランクが決まるっぽいな。
「そうか、それはがっかり」
一方その頃
「こちらアネット。応答願います」
「こちらコードS。アネットと通信中。オーバー」
「生存者報告。アネット、コメット異常なし」
「アーサー、意識失うも復活。記憶喪失中」
「アレン戦闘中に死亡」
「船長アレンが死亡いたしましたので、私副船長アネットが船長を引き継ぎます。よろしいでしょうか」
「承認します」
「副船長はコメットを指名しま―」
ドゥン!
「うわー!」
アネットを衝撃波が襲った。
「こちらコードS。アネット大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
「多分、コメットがライトビームでもうったんでしょう。いつものことです」
「そんな人を副船長に任命しても大丈夫なのでしょうか⋯」
「記憶喪失中よりかはマシかと⋯。承認お願いします」
「了解しました。コメットを副船長に任命⋯承認しました」
「追加で一つ。後30分ほどで水星に到着します。オーバー」
「了解しました」
「では、通信を切ります」
ブチッ
(もうすぐ水星か。流石にアーサー君にももう少し状況を伝えておかないとだし、部屋に戻ろうかな。)
アネットはそう考えながら、宇宙船の廊下を歩いた。
窓の外を見ると水星が少しだけ見えていた。
特に何も起こらず、アネットはアーサーがいる部屋についた。
「みんな、聞いて」
アネットはドアを開けて言った。
なんの予兆もなく来たもんだからびっくりした。
もしかしたら緊急事態かもしれない。
「私たち、チーム"霹靂の破壊者"はまもなく水星に到着します」
「ん?」
ん?なに、あのチーム"霹靂の破壊者"って。
誰が名前つけたの?ネーミングセンスなさすぎるでしょ。
厨二病がこの船にいるのか?
「アーサー君、どうかした?」
「あの、その霹靂の破壊者って⋯」
「あー、それのこと。ダサいよね。わかるわ」
「その名前、アーサーさんが名付けていた気がします!イタいなーと思っていたのですごい覚えていますよ!」
マジかよ⋯。過去の自分センスなさすぎだろ。
コメットが覚えているなんて相当だぞ。
俺でも少し俺のことに失望した。
人って記憶がなくなるだけでも感性って変わるものなんだろうか。
「その名前って、変えることできないの?」
「無理、だね。一度決めたら超めんどくさく手続きをしないといけない」
「だから今は無理。私達結構反対したんだけどアーサー君止まらなくて」
やっぱり、俺の過去については知らなくてもいいかもしれない。
「そんなことより!もうすぐ水星に到着します!」
「でも、作戦指示の前にアーサー君に説明しておかないといけないことがあるの」
「私達は3人で1チームなの。アーサー君とコメットと私」
「私が船長で、コメットが副船長」
「コメットが副船長なんですか?」
「あ、そうでしたね。アレン船長は死んだんでした」
「アレン⋯?」
「あー!!アーサー君気にしないで」
「そして、私達結構強いから、重要な任務の水星支配を単独で任されちゃったの」
「こんな感じかな」
「じゃあ、次に水星支配の作戦についていろいろ説明するね!」
「コメットも聞いててよ!」
アネットが「水星支配」について説明を始めた。
コメットもちゃんと聞いている。
その説明の途中だった。
―ポチャン
波紋の音がしたのは。
窓の外に打つ時、気圧の差でこっちに空気めちゃくちゃ流れ込んでくるー。みたいな展開も考えたのですがやめました。超人は空気なくても生きていけるみたいな設定にしようと思ってます!水は窒息するかも?後々決めていきます。




