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第122話:下剋上④

ーー久世フェーズ


高宮の表情に焦りは見えない。


よく観察する。


これまで高宮はまっすぐ返してくるだけだ。


恐らく本音なのだろう。


驕りではない。


これまで日本を守ってきたのだという気概を感じる。


ただ一つ気がかりなのは、俺でもなく、めぐみでもなく、はるか彼方か。


何故か、俺たち二人を見ている気がしない。


(......不可解だが、畳み掛ける)


俺たちの言葉が切れれば終わりだ。


ここで言い負かし、認めさせる。


総理の座から引き摺り下ろす。


弁明して手配を取り消させる。


やる事は多い。


だが、正念場だ。


俺には、勝利の女神めぐみがついている。


彼女がいて、俺たちの負けはない。


(恐るな。いけ!)


「高宮総理。デポルに恐怖を抱き、デポルに家族や大切な人を奪われた。そんな人たちのことを考えた事は一度でもありますか?」


高宮は、何事もなかったかのようにこちらを見据え回答する。


「もちろん、デポルに限らず、加害者からの被害にあった被害者ならびにご家族の方々に対して、不徳の致すところ。まだまだ法整備も追いつかずーー」


「いつまでそれを言うんだ?」


気づけば俺は高宮の声を遮っていた。


どうしても許せない。


前世でもそう。


現世でもそう。


『法整備が追いつかない』


政治、特別法務省、法曹協会、様々な隔たりが法整備を遅らせる。


「何十年前からそれを言ってるんだ?」


口調が抑えられない。


だが、めぐみは止めない。


ならば俺は、アクセルを踏み切るだけだ。


「戦後からまともに法改正をしたのか?国に都合がいい法律だけを残し、国民から血税を搾取する」


「日本人を守るといいながら、他国や加害者、デポルへの罪は後回しにし、日本人だけが実名で報道される」


「お前らにとって、俺たち日本人は金を生み出すための代えがきく人形としか思ってないんだろ?」


「だから上っ面なことを、平気な顔して全国放送で言えるんだよ」


俺は、現世ではなるべく感情は殺してきた。


デポルを殺す時以外は。


前世での後悔、変えられない自分と世界。


全てが許せなくて、思いの丈を吐き出す。


SNSはこちらに傾きつつある。


しかし、高宮は百戦錬磨。


このくらいの雑言、どうということはないだろう。


「それは感情論ではないか?君も知っての通り、法整備は進んでいないように見えて、水面下で様々な手続きを経て進んでいる。何事にも準備には時間がかかる」


めぐみが待ってましたと言わんばかりにスマホを取り出す。


先ほどとは違い、黒瀬にモニターにつながせた。


高宮の眉が一瞬動く。


そう。


水谷ひとみ。


彼女の。


冥土からの置き土産。


高宮にとっては、爆弾になりうる代物。


めぐみが説明に入る。


「これは、亡くなる直前まで、国と法とデポルの闇を暴き続けた、法曹協会前会長、水谷ひとみ氏が残した調査書類です」


大画面に表示される。


手続きに関わった弁護士、政治家、検事、検察、組織、それぞれの氏名、海外口座を経由した口座への入金記録。


そこには先ほどの三橋、山本、警察庁長官の名前、事細かく記されていた。


ひとみが命を削り、証拠を掴んだ。


「これは、ほんの一部です」


「これが全て表に出れば、日本の政治家は何人残るでしょうね」


高宮の視線が鋭くなる。


美しい横顔からは、考えられないほどの口撃。


ひとみとめぐみ。


このセットを敵に回さずに済んでよかったと心底思う。


しかし、高宮も怯まない。


「その証拠の出所は本当に正しいものですか?何を持って正とする?」


「口座をくまなく調べれば済むことです」


めぐみは涼しい顔で言ってのける。


「高宮総理。あなたは清廉潔白かもしれない。けど、あなた以外は?」


高宮の瞬きが減った。


ダメージは入っている。


「三橋さんは?各省庁の皆様は?あなたの政党の政治家たちは?」


「本当にあなたと同じ、清廉潔白ですか?」


「弱者から血税を。被害者には泣き寝入りを。それが当たり前になっていませんか?」


SNSはお祭り状態だった。


怒り、疑問、期待、憎悪。


あらゆる感情が匿名という仮面を被り、一斉に流れ続ける。


高宮が口を開く。


「……なるほど。ここまで辿り着いたか」


だが、高宮の目には一切の曇りはない。


しかしその眼力、表情からは想定していない言葉。


俺とめぐみは、蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなった。


「君たちは……デポルが何か。知っているか?」

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ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・コメントで応援いただけると嬉しいです。 #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公 #社会風刺
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