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外壁というか柵だな柵。村は粗末な柵で囲われていた。
リフィ様は衛兵を脅して中に入る。
こいつ、こいつ……問題起こそうとするの、止めてもらえないですかね。
門から中に入るとマジで何にもない。
拡張を考えて、余裕を持って、柵を設置したんだろうが……こんな広い柵が必要になるのか?
それくらいマジで何もない。
遠くに農地が見えている。
一番大きい建物が領主の館だろう。
「殿下、このような所までよくぞ……」
リフィ様の歩みを妨げるように現れ、礼をする貴族らしき人物たち。
流石に出迎えないのはマズい。と思って、ずっと待ってたんだろうな……
「責任者は誰だ?さっさと引き継ぎをするぞ」
心底面倒くさそうなリフィ様が全員を見回す。
アル助けて!はやく、はやく、はやく。
願いが通じたのか、いつの間にか、リフィ様の横で跪いていたアルが、書状を差し出す。
でもね、俺が望んでた対応と違う。そうじゃない。
え、今、ここで?といった様子の貴族たち。
この人に常識通じるわけないじゃないですか……
それにこの人今、ゴーレム動かすことしか頭にない。
物凄い勢いで通達が行われる。
仕事内容そのものは、なーんも引き継いでないけど。
「というわけで、お前たちはさっさと王都に戻って報告しろ」
いや、しかし、ですがと全員が困惑している。
そりゃそうだ。
「裏帳簿でも教えてくれるのか?確か……」
リフィ様がぼそっと数字を呟く。
慌てて全員直ちに王都へ向かいます。
と館に走っていった。結構遠いけど馬車じゃないんだ。
こっわ、こっわ。その数字何なんだよ……知りたくないけど。
「荷物残されても困るからな。さて、どう時間を潰すか」
視察するにしても一応客人がいる。それも目上の。
何をするにしても客人が問題になる。
かといって領主の館に今すぐ向かうと、彼奴等がここを出ていく準備ができない。
地味に面倒なことになったなぁ。
「あの、彼奴等そのまま逃がすのですか?」
一応善良な民として聞いておく。聞いてしまったので一応だ。一応。
聞かなかったことにしたい。
「もう報告した後に決まっているだろう」
あっ、はい。
自分から証拠を持って、檻に向かうんだー
道中処分出来るなら良いけど。
多分無理だろうなぁ……と、くだらない事を考える。
「まあいいか、隠し場所を見せてもらうか。知らない物もあるかもしれないし。アル、そっちは適当に頼むぞ」
行くぞと言ってリフィ様は馬車に乗り込む。
俺も続く。
リフィ様が興味深そうに、馬車の窓から農地の方を見ている。
この人そんなのに興味あったんだ。
微笑ましいものを見る目でリフィ様を観察する。
「おい」
「何でしょうか」
突然、不機嫌になって、声を掛けてくるのマジで怖いんで。
止めてもらえませんかね。
「後で農地の広さ調べてこい。リオが測量してお前は記録だ」
知ってる。これ絶対作業量が酷い奴だ。
リフィ様から記録魔道具と、測量魔道具を受け取る。
用意いいな!?
「何を驚いているんだ必需品だろう。土地の広さとか重要項目だろう」
ヤバイ、思ったよりちゃんとしてるこの人。
「税に関わる」
金の事なら仕方がない。と納得した。
「必要そうなら領主変わったよ~とかの周知もやっておくように」
よ~とか可愛く言われてもなぁ……不機嫌な状態だと怖いんだよ。
「は、はぁ」
「まぁ必死に周知しなくていいから。どうせ興味ないだろうし」
まあ領主なんて誰になっても一緒、って思ってそうだな。
代々治めている家も無いし。定期的に変わるただの代官じゃな……
先代カラルハ伯爵は陛下だし、その前は先王だったか?
その前のカラルハ伯爵は王じゃなかったが、その頃は村は記録にはなかったし。
さっきの連中だって横領と言ってもなぁ……横領する金がそんなにないだろう。
それでも王家の土地でやったんだ、少額で大罪人だがな!
そう、悪事を働こうにも、ここが、まだ、王家の土地!
っていうのが、彼らにとって大問題だ。
まだ引き継ぎ終わってないし。
民を苦しめるような税率なんて無理だし、問題は起こせない。
ちょっと農地をごまかして、数字をちょこっと触る。その程度だ。
割に合わなさすぎて、可哀想になってきたな……
自分の領地じゃないが発展させよう、なんて、やる気がある奴はこんな僻地に飛ばされるわけがない。
良くも悪くも現状維持で変化がない。そういう場所だここは。
よくリフィ殿下はここを貰えたな。
てっきり前線がある方の国境あたりに配属されると思っていたんだがな。
リフィ殿下は魔術なら何でも好きだが、一番好きなのは攻撃魔術だ。
道中の暴れっぷりからも、前線の方が良いと思うだけどな。本人も。
怖気づくような人ではないし。
まぁ俺にとってはありがたい。前線とか命幾つあっても足りん。
ここも国境だが、険しい山脈という自然の要塞が国境を閉ざしている。
そのためここの防衛は手薄で良い。というのが我が国の方針だ。
リフィ殿下に都合が良すぎる。
第一王子の件以前にもう決まっていたし、一体何を条件に説得したのやら。
ランナ様の件は第一王子のせいで、継承権が混乱しているから、条件で引き受けたと俺は思う。
まさかあの趣味で作るという転移門に期待して……とかはありえないし。
「どうした?」
「いえ、アルが聞いたら大騒ぎしそうだなと」
リフィ教の狂信者は布教するために絶対暴れる。
「だからアルは暫く執務室に監禁する」
物騒だなぁ!
「仕事は山積みだから。問題ない」
キリッとしているリフィ様を幻視。
こいつ、押し付けて逃げるつもりだ。
「適材適所、適材適所」
確かに喜んで仕事するだろうし、効率やら全部考えて最適解だろうよ!
「私は料理で忙しいだろうし……料理代わる?」
「あ、自分が悪かったです」
馬車の中じゃなかったら今、俺は床に頭をこすりつけている。
こいつ、切り札切りやがった。
リフィ様がこの中で一番料理が上手いのだ。
それは反則だよ。
リフィ様が奇人変人だからというのもある。
それ以上に、錬金術とか魔法薬学とか、調理技術に通じる物があるというが大いにある。
まぁ我が国では学園でいざという時に野営の技術を学ぶ。
いやー実習は強敵でしたね……嫌なこと思い出した。
調理なんてしたことない、貴族しかいないと魔法科以外は地獄の実習だよ。
野営が仕事である軍関係も……と思うだろうけど彼奴等は効率重視の保存食頼みだからな。
将来、侍女やら仕える職業に付くなら、実家で特訓している可能性はある。
というか、親は何で教えないんだよ。自分達も苦しんだだろうに。
というのには理由がある。
失敗から学んで保存食頼みなんだよ。爆発するくらいなら保存食で頑張るんだ。
まぁいざという時に、食料なかったり、保存食に文句言わなくなるための授業。
襲撃されて食事ができないとか稀によくあるので。
魔法科はまぁ、魔法科だからね。調合とかでそういうのに慣れてんだよ。
リフィ様が料理得意なのはそこだよ。
学校に来てるような平民なら、家の手伝いする機会とか微妙。出来ない事が多いし。
大半が使用人いる裕福な商家か、入学できるように勉強だからな。
文官候補ばかりだし、あんま野営とか考えてないんだよなあ。
平民の文官の現実は大半が地方で仕事だ。野営技術は要るっていうのによぉ。
平民は出生した奴のそういう情報、あんまり出ないらしい。で、野営で苦しむと。
そもそも周りに出世した奴が居ない、居ても話すような話でもないのはわかる。
授業では物凄い脅される。
転移門が少ない故に、移動の危険が他国よりも高いのだ。
あんなものぽんぽん設置出来る、他所の国力が怖いわ。
日の高いうちに街まで行けない所も少なくない。
野営する確率も高いってわけよ。ここまでの道中とかね。
自分が一番偉ければ下々に押し付ければいいから良いけどな。
今回の移動も壊滅的に料理出来ない人も居るし。
ってなわけで、いつ調理技術が必要になるかわからんのだよ。
食料の調達まで出来るようになる生徒は少ないが、多少の調理の心得くらいは何とか、といった所だ。
ま、調理危ないしね。遭難者が未知の食材で大爆発。とか結構起こってるし。
誰だよ、食材用意されて作るもの決まってる実習で、食べれない野草ぶっ込んで爆発させた奴は。
後は、軍に入る場合は当然必要になる。
そんなわけで学園卒業後は皆、それなりに料理はできる。出来るのだが……
やっぱ錬金術士や魔法薬師には素人がかなわねーよ。
調合と似ているからという理由で料理させてると割と機嫌いいしな。
だから道中はずっとリフィ料理長が食事を用意していたわけだ。
ランナ様達は初日頑張ったよ。うん。
俺?この人の魔術関連の助手させられてんだぜ?
リフィ様とゆかいな側近三人衆で一番の雑魚だからよ!
作業回ってくるんだよ!ちきしょう!
あいつらなんなんだよ。
「じゃ、よろしく」
と、馬車からリフィ様が軽やかに降りる。
こいつ、こいつ……
門の方を見ると必死に走っている貴族達が見える。
貴族達は馬車で門まで行かなかったのか?結構距離あるぞ?
殿下のお出迎えだし……という配慮で馬車を使わなかった?
もしかしたらご一緒に……とか甘い考えだったのか?
おーおー頑張れ。牢屋が待ってるぞ。
リフィ様の方を見るとランナ様達の対応をしている。
リオを探す。
手を物凄い勢いで引っ張られた。
突然の事で叫びそうになった。
「騒ぐと怒られるよ、行こう」
リオに引っ張られて領主の館から離れていく。




