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他にも異世界転移者がいることがわかったよ。出てくることはないけどね

 勝ち誇った表情をあたしに向けてくる兄さん。ドヤ顔が腹立たしいよ。勝ち方は誇れるものじゃなかったのにね。

 闘技場から戻った兄さんを囲む人、人、人。揃いも揃って裸族ばかり。腰に布を巻いとけばいいってもんじゃないよ。男でも服着てよ。


「讃えよ! 崇めよ! 私が神である!」


 あちゃー。完全に自分に酔っちゃってるよ。勝てて嬉しいなら素直に喜べばいいのに。祝ってもらえて嬉しいなら素直に受け止めればいいのに。

 でも無理もないかなぁ。不器用で捻くれ者なのが兄さんだもん。よく見ると目が死んでる。異世界人とはいえ三次元、男に囲まれているからかな。


「みんな、わたっしが勝ったときと反応が違う。やはり、わたっしは嫌われているのだな」

「それは違うよ、女騎士さん。兄さんを祝っているのは男の人ばかり。ずっと女騎士さんが勝ってたんでしょう? お互いの格好が格好だから祝えなかったんだよ」

「そんなにわたっしに近付きたくなかったということか。そうとわかれば死ななければ。勝てない騎士に価値はない」

「ちょっとおおおお! 胸元からナチュラルにナイフ出さないでよ!」

「わたっしは死ぬ。止めるなよ。いいか、止めるなよ」

「それが女騎士さんの覚悟なら止めないよ。見るのは苦しいからそっぽ向いてるね」


 こんなに可愛いのに惜しいよ。けど覚悟を決めてるようだから止めちゃ悪いよね。せめて苦しまないように祈ってあげよう。


「死ぬぞ。いいか死ぬぞ。ほーら死ぬぞ。サクッと死ぬぞ。きっと痛いけど死ぬぞ。血をドバドバ流しちゃうが死ぬぞ。止めるなら今しかない。あー死んじゃう。もう死んじゃうのだ」


 あれ? あれれ? なかなか死なないね。モタモタしてると死ねなくなっちゃうよ。後押ししてあげた方がいいのかな。精一杯応援するべきかな。よーし。


「頑張れ頑張れ騎士さん! 苦しまず逝けよ騎士さん!」

「し、死ぬぞ。死んじゃうのだ」

「頑張れ頑張れ騎士さん! サクッと逝っちゃえ騎士さん!」

「し、ししし、死死死」


 あたしの応援が足りないのかな? 中途半端な応援じゃダメだよね。全力で応援しないといけないよね。


「がーんーばーれー!! がーんーばーれー!! きーしーさーん!!」

「う、うぅぅぅ~! うわあああ~ん!!」

「頑張……あれ? どうしたの? そんなに嬉しい?」

「死にたく……ひっく……ない」

「ええええ!?」


 まさかまさかの展開だよ。腰抜かしちゃうところだったよ。目玉が飛び出しちゃいそうにはならなかったけどね。

 凛とした姿から一転して泣き崩れちゃって。可愛いの幕の内弁当かな。強がっちゃってまったくもう。


「わたっしは……どうしたらいいのだ? 死ぬ勇気がないくせに……生き恥を晒したくないと言ったり。覚悟が決まってないということか」

「覚悟を決める方向が違うよ。死ぬのを応援したあたしもおかしかったよね。そこはごめんなさい。死にたくないことを見抜けなかったあたしはマヌケだね」

「どんなことでも誰かを応援できることはすごい。きさっまは素晴らしいのだ」

「慰めてくれるの? 嬉しいよ、女騎士さん」

「わたっしに慰められて嬉しいとは変わっている。きさっまは優しい人だ」

「人の優しさを引き出せる女騎士さんも素晴らしいよ。そんな人は死んじゃダメ。あたしが死なせないからね」

「そうか。いい見張りができたようだ。わたっしの名前はエルファ。きさっまの名前を聞いてもいいか」

「もちろん。あたしはラーニャだよ」

「ラーニャか。どうしてここに連れてこられたのか、心当たりはあるか」

「全く原理はわからないけど、心当たりはあるよ。けど言っても信じてもらえないよ」

「話すだけでも楽になる。わたっしが聞き役を引き受けよう」

「えーっとねぇ。崖から落ちちゃったんだよ」


 言っちゃった言っちゃった。

 にわかには信じられないだろうに頷いてくれるエルファさん。なんか申し訳ない。


「崖から落ちた、か。もしかしてラーニャは異世界転移者なのか?」

「へっ? どうしてそれを?」

「わたっしは異世界転移者を一人知っている。だが残念だ。ここから逃げ出してしまった」

「逃げ出せるの?」

「まず無理だ。建物から出ることはできるが、島から出ることは無理だ」

「どうして?」

「どこまでも海が広がっているのだ。どんな体力自慢でも限界がある」

「まだ島にいるんじゃない?」

「島といっても小島で建物はここだけ。生えている木は数える程度で実は生らない」

「魔法で乗り越えたとは考えられない?」

「それは考えづらい。魔法は効率が悪いのだ」

「空を飛んだりとかできないの?」

「大気中の魔素を体内に取り込み魔力に変え、さらにそこから発展させなければならない。空を飛ぶことは可能だが、魔力が切れれば落下してしまう。飛びながら魔素を取り込み魔力に変えるなんてことができるのなら話は別なのだ」

「できないの?」

「息を吸うと吐くを同時にしろと言えばわかるだろうか」

「なーるほどー。納得」


 魔法を使うのにも一苦労なんだね。

 あたしと兄さん以外にも転移者がいることがわかってよかったよ。エルファさんと話すの楽しいなぁ。

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