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漏らしちゃったよ

 エルファさんに話を聞いて気になったから外に出てみたよ。空気がおいしい。本当に小さい島で、海が広がってて逃げ場はないね。


「ここにきて一年経った。わたっしも最初は脱出を考えたがすぐに諦めた。無駄だと察したのだ」

「でも帰りたいよね」

「叶うのならば。潮風で髪や肌がベタつくことにも、体を洗うたびに裸を見られるのにも慣れない」

「そうだよね! あんな牢屋みたいなところに詰め込まれて、どういうわけか戦わないといけないなんて無理だよね!」

「そこは問題ない。雨風をしのげ、戦うことで強さを証明できるのでな」

「あ、そう」


 戦うことはいいんだ。さすがは騎士だね。

 そういえば兄さんが見えないよ。どこに行ったのかなぁ?


「海よ風よ、私を讃えよ!」


 何をやってるんだろう、あの変態は。そんなに海に落とされたいのかな。次は間違いなく死ぬよ。転生できたとしても人間じゃないかもしれないのに。


「すごい自信。わたっしが負けるわけだ」


 エルファさんが悔しがってるよ。あんなのと張り合うだけ時間の無駄だよ。疲れて寿命が縮まったら大変。美少女は笑顔を見せてくれればいいんだよ。


「エルファさんは、魔法使えるの?」

「使えるには使える。だが得意ではない。こうして火を出して眺めるので精一杯なのだ」

「十分すごいよ! あたしの世界に魔法はなかったからね」

「やはりか。知り合いの転移者も同じことを言ってた。魔法の代わりに、別の技術が進化したと聞いたのだ」

「そうだよ。車とか飛行機とか」

「魔法より便利なことだろう。この島から出ることくらい簡単にできてしまうに違いない」


 それはどうかなぁ? 海上を車は走れないし、飛行機を飛ばすにも滑走路がない。闘技場を出たら波打ち際だから、自転車も現実的じゃない。科学も万能じゃないよ。


「エルファさん、食べ物はどうしてるの?」

「それが不思議と降ってくるのだ。ほら、あれだ」


 エルファさんが空を指差す。

 大きさがバラバラな木箱が何個も落ちてきたよ。バラエティーの企画でやる無人島生活の物資みたい。


「うーん。箱の大きさに対して中身が合わない。果物の量もパンの量も少ないのだ」


 エルファさんが木箱を覗くと人が集まってきた。みんな待ってたんだね。でも浮かない顔。満腹感を得るには程遠いみたい。ざっと百人はいるもんね。


「私の前で辛気臭くしないでくれ。私の神々しさが消えてしまう。それにしてもなんというパンだ。立派なカビが生えてしまっている。リンゴもバナナも傷んでる。とてもじゃないが食えたもんじゃない」

「兄さん!」

「本当のことを言って何が悪い。毒にはなっても薬にはならん。百害あって一利なし。木箱を燃やして暖をとるくらいで……?」

「兄さん?」

「おいラーニャ、これをどう見る」

「どうって……どう見ても手紙だよね」

「見るところが違う。字を見ろ」

「字? これって日本語だよ!」

「にほんご? なんだそれは?」

「あたしと兄さんがいた世界の国の言葉だよ。エルファさんの知り合いの転移者が使ってなかった?」

「そういえば使っていたかもしれない。わたっしに色々説明するときに書いてた覚えがある」

「……ふん。そういうわけか」


 手紙を読んだ兄さんの表情が曇る。


「なんて書いてあったの?」

「世界は終わった。生き残ったのは自分だけ。地下に蓄えていた食べ物は今回で最後」

「どういうこと?」

「簡単なことだ。エルファの言う転移者がみんなをこの島に集めたのだろう。転移したとき、能力に目覚めたのかもしれないな」

「転送系の能力とか?」

「さあな。何はともあれ食べ物を送っていたが限界がきた。食べ物が底をついたに違いない」

「意味がわからないよ、兄さん」

「さすがは異世界だ。人類を滅ぼすほどの何かがいる、ということだ」


 兄さんが全くふざけてない。真剣に話したよ。

 もしも兄さんの言ってることが本当なら、もうみんなが帰る場所は!?


「なんという! なんという! あの伝説は本当だったのか」

「落ち着いてエルファさん。で、伝説って?」

「世界を滅ぼす魔物だ。神の使いが現れたときに現れると言われてきたのだ」

「神の使い?」

「おそらくは転移者のこと。それなら納得がいくのだ」

「それは残念だ。せっかくの異世界ライフが泡となったということだ。どこの魔物か知らんが許せんな」

「あたしも許せないよ。エルファさんの知り合いの転移者なのかあたしたちが原因なのかはわからないけど、心が苦しいよ!」


 あたしと兄さんが原因だとしたら、どんなことをしてでも魔物を倒さないと。でもどうしたらいいの?


「エルファ、この手紙を燃やせ」

「いいのか」

「早くしろ。間に合わなくなっても知らんぞ」

「わたっしに勝ったきさっまを信じよう」


 エルファさんが火を放つと、手紙はあっという間に灰と化したよ。


「ラーニャ、手を繋ぐぞ」

「兄さんと手を!?」

「早くしろ。じゃなければ成功しない」

「わっ、わかったよっ!」


 兄さんと手を繋ぐだなんて照れちゃうよ。きゃー。

 あれ? 一瞬で景色が変わった。大地が広がってるよ。


 ――ドスン!


 ヤダナー、コワイナー、ジシンカナー。

 ダルマサンガ……コロンダ!


『ガアアアア!!』

「きゃああああ!!」


 驚いて漏らしちゃった。

 振り向いたらドラゴンがいるんだもん。

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