Bet
――その日の夜、二度目の潜入調査をする御影と旭は車内で、今回の作戦会議をしている――
「よし……今回は俺だけが店に入る。お前は何かあった時の為にここに残れ。後、これを付けてろ」
御影はそう言い、ある物を旭手渡した。
「これは……?」
「これは、鐡さんお手製のトランシーバーだ。俺のは……イヤーカフ型だ」
御影は髪をかき分け、耳に付けてあるイヤーカフを旭に見せる。
「え!?これで話せるの!?すご!」
御影は左手の人差し指に付けた、指輪を旭に見せながら機能を説明する。
「指に付けてあるこのブランド風の指輪のダイヤを押すことで、話す事が出来る。不自然な動きをすること無くお前とやり取り出来る優れ物だ」
「おぉ……これも鐡さんが作ったの?すげぇクオリティ……本物のブランド品みた〜い!」
旭はその精巧に作られた指輪を見つめて、そう言った。
「だろ?鐡さんは本当に凄い人だ。ブランド品を身につければVIPカジノへの潜入も容易だと思う。しかも、綾華さんにプレゼントまで用意した」
御影はそう言うとブランドの紙袋をチラつかせる。これは、本物のブランド品だ。
「お!さっすが〜!準備が良いね!」
「当たり前だ。念入りの準備をしなければ、この仕事は成り立たない」
「そりゃそうだ」
「あと、俺のスマホ置いていく」
「え?なんで?」
御影は自身のスマホを旭に手渡した。旭は頭を傾げた。
「来栖からの連絡があると思う。連絡来たら無線で俺に教えてくれ。店内で電話したら怪しまれるからな」
「わ、分かった……」
スマホを置いていくということに旭は、少し不安を覚えた。
すると、御影のスマホが鳴った。旭が画面を見るとそこには来栖と書かれていた。旭すぐに御影にスマホを渡すと、御影は来栖からの電話に出る。
「もしもし、なんだ随分早いじゃないか」
「当たり前よ。あんたに煽られたからには、あんたを驚かせるくらい早く仕事するのが私よ」
「さすがだな。……だが、すまない。これから俺は仕事なんだ」
「はぁ?それで終わり!?……あんたね……人をこき使いすぎ。何?その仕事とやらに行方不明の人が関係あるわけ?」
「直接的には関係ないが……無関係でも無い。来栖が見つけてくれたお陰で、犠牲者が減ったんだ。ありがとう」
「ふん……必ず飲みに連れてってやる。奢ってよ?」
「あぁ……分かった。じゃあ切るぞ」
御影はそう言い、来栖との電話を切った。
「望月一浩さんとマキさん。見つかったって」
「マジか!?早!来栖さん優秀〜!」
「だな。来栖から報告受けたし、じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃ〜い」
御影は鐡が作ったブランド品とシワひとつ無いスーツを身にまとい、車を降りた。そして御影は少し緊張した面持ちで店へと入っていく。
入店すると、前回も居たスタッフが受付をしていた。
「いらっしゃいませ。……ご指名は?」
「AYAさんでお願いします」
「かしこまりました。では、お席にご案内致します」
スタッフに案内され、御影は席に座る。
するとすぐに綾華が姿を現した。御影の顔を見ると綾華は顔をパッと明るくさせ、手を振りながら近づいてきた。
「あ!御影さんだ〜!久しぶり〜!また来てくれたんですね」
「あぁ、AYAさん。久しぶりです」
「あれ?義弟さんは今日は来てないんですか?」
「そうなんです。今日はレポートで忙しいと言っていて、連れてきてないんですよ」
「そうだったんですね!」
綾華は御影が身につけているブランド品に数々に目をやる。綾華は首を傾げた。
「あれ?御影さん、これってあのブランドのバックですか?」
「そうですよ。最近買いましてね」
「えぇ〜!すごい!このブランド私すごい好きなんですよ!」
「そうなんですか?それはちょうど良かった。これ、AYAさんにプレゼントしようと思ってて……」
御影は持って来ていた、綾華の好きなブランドのバックを渡す。
前回、綾華が身につけていたネックレスが、そのブランドの物だったため、事前に用意していて正解だった。
綾華は目を丸くしながら、ブランドのバッグを受け取る。
「えぇ!?これを私に!?ほんとに?」
「あぁ。ここに始めて来た時、君の接客に心打たれて、もっと君と話がしたいなって思ったんです。だから、受け取って欲しい」
「え〜!嬉しい!ありがとう!でも、どうしてこんなにブランド品……?前来た時、普通の会社員って言ってたよね?」
「実はちょっと嘘ついていたんです。本当は、自分の会社を持っていまして。」
「え!?本当!?すごい!どこの会社?」
「○○社って言うところです」
「へぇ〜!調べてみてもいいですか?」
「あぁ、もちろん」
綾華がスマホで検索すると、1番上に出てきたホームページに指を指す。
「そう、これです」
「へぇ〜!こんなの作ってるんですね!すごい!」
「あはは、ありがとうございます」
綾華は御影が作った偽のホームページを見て驚いていた。嘘がバレないか、内心ヒヤヒヤしながらも取り繕った笑顔で答える。
――その後話が弾み、あっという間に一時間が経過した。色々と世間話していると、ボーイの一人がこちらに向かって来た――
「失礼します。AYAさん……」
ボーイは綾華に耳打ちしている。するとボーイの言葉を聞いた綾華は、少し様子が変わった。、
「……はい、分かりました」
ボーイは話を終えると、戻って行ってしまった。
御影が不思議そうに綾華に問いかける。
「どうかされました?」
「プレゼントも貰っちゃったし……お礼としてサービスさせて頂きますね!こっちに来てくだい!」
綾華は席を立ち、手招きをしている。御影も席を立ち、綾華に着いていく事に。
店の奥に案内された御影。綾華は店の奥にある本棚の本を動かすと本棚がスライドし、下に続く階段が現れた。
「……さぁ、どうぞ」
「……失礼します」
御影は予想外の出来事に少し緊張しながら、綾華の後ろをついて行く。
薄暗い階段を降り終え、綾華は目の前の扉を開ける。その先にはキラキラと眩い光、騒がしい声、アルコールの匂い。それに嫌な匂いも立ち込めていた。
御影は今まで見た事の無い光景に圧倒される。
「席に案内しますね!」
綾華そう言い中に入り、御影を席に案内する。御影は歩きながら横目にカジノゲームを楽しむ人々、お酒を飲み酔っ払っている人々、奥ではドラッグらしき物を嗜んでいる人々を見ていた。
「こちらにおかけください!」
「……失礼します。……ところでどうして俺をここに?」
「オーナーが貴方をここに招待するように言われましたので」
綾華はそう言いニコッと微笑む。その笑顔は少し、ぎこちない様に思えた。
「さぁ、今晩は楽しんでくださいね御影さん。ゲームやりますか?それともお酒飲み直しましょうか?」
「……では、お酒で……」
「何飲みますか?頼んできますよ」
御影は酒を選び、綾華はそれをボーイに伝えに行った。御影はぽつりと一人で席に残された。この異様な空間。一瞬でも気を抜けない御影は、辺りを見渡している。
すると、御影のイヤーカフ型の通信機から旭から連絡が入った。それとほぼ同時に、店の奥がザワつき出しているのに気がついた。その奥から男性が御影の方に近づいて来た。
「いや〜はじめまして。馬酔木さん。私はここのオーナーの五十嵐です。こちら、頼まれていたお酒です。少し貴方とお話がしたくてねぇ〜……」
「……これはこれは……わざわざ、どうもありがとうございます。五十嵐さん……」
その異様な雰囲気に気がついた御影。
オーナーと名乗る五十嵐に不信感を持ちながらも、御影は作り笑顔で挨拶を交わす。
――次回へ続く――




