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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
4章 刻印

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悪夢-犬飼旭-

 ――約五年前、スクランブル交差点爆発テロ事件当日――

 十三時十三分、銀行立てこもり事案発生。特殊公安特別制圧部隊(通称ACTORS)の神代朱稟。

 十三時四十一分、SATやSITと共にACTORSは、銀行立てこもりの現場に到着した。到着した後、ACTORSは待機を命じられていた。


「我々は、後方待機とGODに言われている。とりあえず、大きな事態が起きない限りは待機だ」


 一条の指示で待機をする神代、柊、葉月、八乙女。

 あっという間に四十分が経過する。柊は落ち着かない様子で、話し出す。


「まぁでも、これくらいの規模ならすぐに制圧出来そうですね。何で僕達も呼ばれたんですかね?」


 柊が首を傾げていると一条がすかさず答える。


「念の為だろ。何かあってからじゃ、遅いからな」


「確かにそうですね」


 そんな会話をする後ろで神代は、何かを考えていた。


——SATにSIT……勢揃い。対象は五人程度……。武器の数は不明。犯人の人数に対して、ここまでの集めるか……。GODは念の為と言っていたが……違和感がある——


 神代の様子を不思議に思った一条が話しかける。

  

「……どうした?神代」


「……いえ。何でもありません。そろそろ、Sが突入しますかね」


「そうだな。……やはり発生後の対応に関しては、Sに軍配が上がる」


「……人数がSの方がいますから。……でも、個人の力ではこちらの方が圧倒的に上です」


「あぁ……」


 そんな話をしながら、現場の様子を見ていた。その十分後、SATが突入し犯人の制圧に向かった。

 

 ――十四時三分、スクランブル交差点爆発テロ事案発生――


 慌ただしい様子で、車で待機していた葉月から無線が入る。

 

「一条隊長!大変です!」


「どうした?葉月」


「渋谷スクランブル交差点周辺にて、爆発が発生!」


 葉月からの連絡にその場の全員が驚き、体が強ばる。

 そして、神代は先程までの違和感の正体に気がつく。

  

 ——嫌な違和感の正体が分かった……。これは……仕組まれた事件の可能性がある——


「……すぐに現場に向かいましょう」


 神代が真剣な眼差しで一条を見つめる。

 柊は神代の提案に不安を感じていた。


「……で、でも……命令無視になっちゃうんじゃ……!」

  

「……行こう」


 一条は神代が何か考えがあっての事だと察し、その提案に乗った。

 それに柊は驚き聞き返す。


「え!?行くんですか!?」


「何か……確かめたい事があるんだな……神代」


「……はい。その通りです」


 ――そしてACTORSは、スクランブル交差点に向かった。現場から少し離れた場所に車を止め、神代はすぐに車を降りた。神代一人では心配に思い、その後を追い一条も車を降りた――


 神代は急ぎ足で現場に向かう。その道中、考え事をしていた。

 

 ——スクランブル交差点付近にはこの時間、氷室 正昭(ひむろ まさあき)議員が演説を行っているはず。……もしや……——


 嫌な想像をしてしまう。だが、今は現場の状況を確認するのが先決だと思い、現場に向かう足を止めない。

 そして氷室が演説をしているであろう場所に辿り着いた。するとそこは辺り一面、瓦礫が散乱していて多くの人が助けを求めている。絶望的な状況の中、一台の救急車が一人の男を運んでいるのが見えた。

 その運ばれた男をよく見ると、それは氷室だった。


「……氷室議員」


 神代は目を疑った。氷室は頭から血を流し、もう助からないと神代は直感した。

 その場で立ち尽くした神代は、頭の中でグルグルと今までの出来事が入り乱れる。GODへの不信感、これまでの任務。そして今回の立てこもり事件とテロ事件。点と点が線で結ばれる。

 

 ——あぁ……全ては氷室正昭を消すための……あの人達(犬飼家)が仕組んだ事件なのか——

 

 すると百メートル程、離れた場所から爆発音とけたたましい悲鳴が聞こえてきた。

 旭はその音を聞くと急いで音の聞こえた方に駆け寄る。そして音が鳴った場所を見ると悲惨な光景が広がっていた。

 そこには爆発に巻き込まれたであろう、十人程の一般人が倒れている。煙が舞う中人々が逃げ惑い、悲鳴が包み込む。

その光景を見た神代は心の糸が切れた。そして神代は母の言葉を思い出す。


「旭……貴方は、貴方が思う正義の人間で在りなさい」


 神代は振り返り、現状を伝えようと走り出そうとした。その瞬間……


バアァンという音と共に腹部に激痛を感じた。神代はその場に勢い良く倒れ込む。


「グッ……!」


 するとその様子が遠くから見ていた一条が、神代に駆け寄り、肩を貸した。そして神代の身体を起こし、建物の影に移動しながら話を聞く。


「神代!大丈夫か……!?犯人が近くに居るのか!?」


「……ち、違います……。多分あれは……警察官」


 神代は移動する最中、横目で見ていた。視界を煙が遮る中、捜査一課の腕章を付けた青髪の男を。

  

「……そうか……。すぐに応急処置する。少し耐えてくれ」


「……はい」


 ――一条は車に居る八乙女に連絡をし、車を指定の場所にまわしてもらった。神代と一条は人目を避けその場所に向かった。車が到着し、二人は中に入る――


「八乙女、応急処置を頼む」


「分かりました。神代、服脱がせるよ」


「……はい」


 神代は出血が多く、少しぐったりとした様子。八乙女は神代の服を脱がし、傷口を確認する。


「これ……ギリ貫通はしてるけど、中で弾の破片が残ってる……。とりあえず、応急処置をする。痛いけど、我慢して」


「……分かり……ました」


 八乙女は器具を用意し、神代の体に残った弾丸の破片を取り出す。


「ア゛ア゛ッ!……グッ……!アッ……!」


 神代は痛みに苦しみ声を漏らす。柊と葉月は痛々しいその光景に目を背ける。


「……取れた……!頑張ったね神代。止血剤、打つよ」


 八乙女は止血剤を神代に投与する。神代の腹部の傷をガーゼで抑え、固定した。


「よし……すぐ病院行くよ」


「……いや……その前に……!長官とGODの……所に行かないと……いけません……!」


 神代の言葉に八乙女は驚き、声を上げる。


「こんな時に何言ってんの!」


「こんな時だからです……!」


 神代の血走った目に八乙女は驚きを隠せない。これは相当な覚悟を持った目。八乙女は、一条の方を見つめる。


「一条隊長、どうしますか……」


「……行こう、あの方の元に」

 

 ――そう言うと一条は車を走らせる。その道中、神代は今回のテロ事件についての考えを、メンバーに伝えた。それぞれのメンバーが神代の考えに納得を示した。警察庁に着き車を止め、神代は一人で降り歩き出そうとするが、心配した八乙女が一緒に着いていくことに。そして部屋の扉を勢い良く開ける――


「何だ……神代か。突然扉を開けるな」


「……おや、こんな所で何をしているのですか。てっきり、現場に居るものだと……命令無視ですか」


 そこに居たのは当時の警察庁長官、鳴海 英朔(なるみ えいさく)、犬飼 朔夜(いぬかい さくや)そしてGODと呼ばれていた男。当時、警察庁警備局長の犬飼 光崇(いぬかい みつたか)だった。

 神代は息も絶え絶えになりながらも、鋭い眼光で彼らを見つめる。

 

「……これは貴方達が仕組んだ事件……そうですよね」


 神代はこの事件を起こした犯人は、彼ら犬飼家が犯したのだと言い張った。

 元々、神代は犬飼家のやり方に疑問を抱いていた。そして極秘で犬飼家の人物の身辺調査をして、臥龍蛇と何らかの関わりを持っている事に辿り着いていたのだ。そして、犬飼光崇は前々から氷室正昭を敵視していたことを神代は、知っていた。その為今回の事件は、彼らが仕組んだものなのではないかと予想したのだ。

 神代の話を聞いた犬飼は、鼻で笑う。

 

「……何を言っているのですか。言っている意味が……分かりませんね」


 それに続いて鳴海も机をバンッと叩き、立ち上がる。


「馬鹿な事を言うな。このテロを起こしたのは、臥龍蛇と言う組織による事件だと調べがついている」

 

「……嘘をつかないでいただきたい……。臥龍蛇は公安が潜入捜査をしてこの前、摘発に漕ぎ着けた……。その事は貴方達も知っている……。そして、思いついたんでしょう臥龍蛇を使って……氷室正昭を狙った……計画的犯行を……そうでしょう……!」


 神代は気迫に満ちた表情で、叫ぶ様に言い放った。

 犬飼光崇はゆっくりと神代を睨む。そして神代の手に血が滲んでいるのに気が付いた。


「……おや……怪我をしたのですか……。情けない……。流れ弾でも喰らいましたか?……まぁ、私の命令を無視した罰ですね」


 神代は犬飼光崇の衝撃的な発言に、初めて怒りをあらわにした。すると神代は震える手で銃を取り出し、犬飼光崇に銃口を向けた。


「……おや……父親に銃を向けるなど……とんだ親不孝者ですよ」


 神代は容赦なく、引き金を引こうとしたその瞬間……

 後ろに冷たい気配を感じた。


「……銃を下ろしなさい……さもなくば……撃ちますよ?」


 神代の後頭部に銃口を向けた犬飼朔夜だった。旭は震える手を押さえ、銃を固く握り締めた。


「……下ろさない……!」


「……そんな身体で上手く銃が撃てますか?」


「……撃てる……だって……俺(・)はそう育てられた……!」


 銃を構え、本気で父親である犬飼光崇を撃とうとする神代に、鳴海はこう言い放つ。


「……そろそろ会見の時間だ。こんな所で油を売っている時間はない」

 

「……その通りです、何も話す事は無い。……さっさと私達の前から失せなさい」


 犬飼は冷たくそう言い放つ。

 旭の体は限界だった。視界が揺れ、足が震え、腕に力が入らなくなり銃を握った腕を下げた。

 そして全てを諦めた旭は、ふらつく足で壁伝いに歩き、扉を開け出ていった。


「神代!」


 八乙女は部屋から出てきた神代に駆け寄り、その場に座らせた。


「神代、大丈夫……?……やばい……血が……!」


 ガーゼから血が滲み出している。それを何とか押さえながら、神代はゆっくりを口を開く。

 

「……もう……いいです」


「……は?何言ってんの?馬鹿になったの!?」


「……もう……僕はいらない子なんです……。だからもう……このまま……」


 神代は静かに涙を一粒流した。

 それは神代が人間らしい感情をあらわにした瞬間だった。親から突き放され、全てを諦めてしまった。

 そんな神代に八乙女は言葉をかける。


「……馬鹿言うな馬鹿。……神代、あんたを絶対助ける」


「……頼りになりますね……さすが八乙女さん……。でも……」


「でもでもだってじゃない。あんたは子供か!何のためにここに来たの。GOD達を止めるため、そうでしょ……!」


 神代は八乙女の言葉に心を動かされる。


「……私も……あの人達のやり方は間違ってる……改めて分かった……。あんたは……命を軽々しく奪うあいつらを止めたいんでしょ……!」


「……何だ……僕だけじゃないのか……」


 八乙女のその言葉に神代は、少し顔を緩ませた。

 

「当たり前。だって仲間でしょ」


「……仲間」


「……だから、あんたをここで死なせない。必ず助けて……一緒に戦う」


「……八乙女……さん……」


 八乙女にお礼を言いたかったが、視界が段々と暗くなっていった。八乙女が何か言っていたが、もう何も聞こえない。

 

 ――その後、神代は八乙女のおかげで一命を取り留めた。翌日、神代は目を覚ました。病室には葉月が居て、目を覚ました神代を見て涙を零した――


「……やっと……起きた……!」


「……は……づき……」


「そう……!葉月だよ……!あ、皆に連絡しないと……!」


 そしてその数分後、ACTORSの皆が集まってきた。

 一条が安心しきった顔で神代を見つめる。


「……良かった……神代」


「うわーん!しゅーくん、死んじゃうかと思ったー!!!」


 そう言うと柊は神代に抱きついた。

 すると病室の扉が開き、八乙女が病室に入って来た。


「……起きた?神代」


「……八乙女さん……。ありがとうございます……。助けていただいて」


「良いのよ。これくらい……。それより……これからどうするの」


 八乙女がそう言うと、一条が神代にゆっくりと話し始める。


「……神代、一応今は療養中の為仕事を休んでいる扱いになっている……。ACTORSを……辞める事は出来ない。GOD達の支配下である限り」


「……ですよね……知ってます」


「でも、このまま復帰しようとは思っていないだろ……?」


「……はい」


「……分かった。お前が目覚めた事もGOD達には知らせない。好きな様に行動しろ。俺達が何とかする」


「……いいんですか……。僕に協力して……。見つかったら……処分される」


「……いいんだ。俺達はお前に協力する為にここにある。見つかってどうなろうと、どうでもいい。元々は無い命……。首の皮一枚で繋がってるだけの存在だ。ならばこの首、お前にやろう」


 一条の覚悟を決めた発言に神代は目を丸くした。

 

「GOD達のやり方には元々疑問視していた。人を殺す任務を平気で命じてくる。どんな悪人であれ、人間だ。それを法の下で裁かず、我々が裁くのは間違っている。そして今回のテロでそれが確信に変わった。あの人達のやり方は間違っている。このままでは、この国は独裁国家のようになってしまう。それを止められるのは……神代、お前しかいない。GOD達を止める為にお前に力を貸そう」


「……一条隊長」


「隊長の言う通り!これからは君の為に力を使うよ!」


「ぼ、僕も……!何か力になれるなら……しゅーくんの力になるよ……!」


「……言ったでしょう神代、仲間だってね」


 ACTORS全員が、一条の意見に同意した。神代は驚きながらも皆の言葉に心打たれた。仲間の優しさを感じられた瞬間だった。

 

「……ありがとうございます。今まで……僕は誰かを……信じた事がありませんでした……。ですが……貴方達を……仲間だと……信じる」


 ――そして旭は退院後、ACTORSとして仕事に復帰すること無く自由な暮らしをする事に。その中でGODらを止める方法を考え、実行するのだった――


――次回へ続く――

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