タレコミ
――神代達が暴力団の本拠地に乗り込んだ日。その一方で、御影の方でも動きがあった。御影のスマホに一件のメールが届いた――
「……ん?メールか」
そのメールを開いてみると、一年ほど前に御影と旭が訪れた、小笠原千遥の働いてた会社の七瀬からの連絡だった。御影はすぐさまメールを開いて、内容を確認する。
そのメールには、緊急で会って話したい事が、あると書かれていた。御影は不思議に思ったが、とりあえず会社に行ってみることにした。
急いで車を走らせ、会社に着くとロビーで七瀬が、出迎えてくれた。
「七瀬さん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。すみません、突然お呼び出ししてしまって」
「……いえ、問題ないです」
「ありがとうございます。では、行きましょう」
そして七瀬と御影は、以前話をした会議室へと入った。
席に座ると、七瀬がお茶を出してくれた。それを受け取ると御影は、早速話を切り出す。
「それで……緊急のお話とは……?」
「実は……高校生がうちに来たんです」
「高校生……?職場見学のようなものですか?」
「いえ……たった一人でここに来たんです」
「一人で……それはおかしいですよね」
高校生が来るなんて、職場見学くらいしか思いつかなかった御影は、不思議に思った。
それは七瀬も同じだった。そして七瀬はその高校生が気になり、話を聞いたようだ。
「はい……切羽詰まった様子で、話を来て欲しいと訪ねてきたんです」
「その子の名前は……?」
「西川さくらさんっと言っていました」
「西川さくら……!」
御影は驚きのあまり、立ち上がった。
それはまさに御影が探していた人物。まさか、西川の名をここで耳にするとは思わず、御影は柄にもなく動揺する。
それに七瀬は驚き目を丸くした。
「ど、どうしました!?」
「すみません……詳しく、お願いします……!その子、行方不明の子なんです……!」
御影は身を乗り出し、凄まじい勢いで七瀬に詳しく事情を聞こうとする。七瀬はその勢いに押されながら事情を話し始める。
「え!?そ、そうなんですか!?わ、分かりました……。えっと……西川さんは昨日の昼頃にこちらを訪ねてきました。西川さんは同級生二人と三ヶ月程、とある高級旅館で、アルバイトをしていたそうです。高額な時給に惹かれ軽い気持ちで応募したようです。その高級旅館は、テレビなどでよく見る有名な人達が来ていたようです」
「有名人……例えば誰です?」
御影はそう言いながら、ゆっくりと席に座り直す。
「えっと……政治家の方や大企業の社長らが数十人居たみたいです。名前までは覚えていなかったみたいです」
「政治家に社長……とんでもないお偉い様だらけですね」
「えぇ……。最初はお酌をするだけでお金が貰えると浮かれていたようですが、徐々に体を触られたりなどの性的被害を受けたみたいです。他の同級生も同じ被害を受けたようで、辞めようと相談した所、脅され辞める事が出来なかったと言っていました」
「……そうですか……勇気を出して言ってくれたんですね……」
「そうですね……。それともうひとつ……ある日、その旅館の倉庫の近くで、話し声が聞こえた西川さんが聞き耳を立てたところ、薬物の売買の話をしているのが聞こえたみたいです。その後、その倉庫を同級生二人と一緒に確認してみると、大量の薬物らしき物が見つかったそうです」
「薬物か……」
「はい……。それで、そこの写真を撮り、その薬の一つを持ち出したようです」
「も、持ち出した!?」
「そうなんです……。それを警察に持っていき、その人達を逮捕させる算段だったのですが……」
御影はその発言に驚きと同時に呆れ果てる。
「はぁ……浅はかですね……。もし、それが本当に薬物なら、自分が捕まるというのに……。あ、だからまだ警察に行けないのか……」
「その通りです……。ですが、それを警察に言う前に怪しい行動がバレ、三人はその旅館から抜け出し捕まらないように逃げて来たみたいです」
「……なるほど……それで行方不明になったと」
「はい……。三人は同時に逃げましたが、行き先をバラけさせ時間稼ぎをしたようです」
「なるほど……でも他の人と連絡してしまっては、簡単にバレてしまいそうですか」
「そうなんですが三人は逃げる前、今まで使っていたスマホを捨て、電話番号の違うスマホを持って逃げていたそうです。そのスマホには、その三人だけしか登録しておらず、最低限の連絡は全て絵や文字の暗号でしていたようです」
「暗号で……」
「はい……。あと西川さんが、もし私達を助けてくれるなら、警察にこの暗号に書かれている場所に来てくださいと言って暗号を渡してくれました。ここへ来た事は、他の二人も知っているようです。そして……その暗号がこちらです」
そう言うと七瀬は、御影に暗号の書かれている紙を渡した。そこにの紙にはこう書かれていた。
「数字の一、円が三つ、鳥の絵、目の絵、歩いている人の絵に明日、夜空の絵、二時を指す時計の絵」
御影は紙を見つめながら、頭を捻る。
「明日の夜……これは時計の……二時……か?」
「だと思います……」
七瀬は御影の隣に座り、共に紙を見て頷く。
「つまり、今日の夜中二時に集まろうとしていたのか」
「でも、場所がまだ分かりませんね……」
「一と円が三つ……円……まる?……まるが三つ……千?」
「千?」
「そう仮定しましょう……。次の絵は普通に鳥か。次に目の絵が二つ……。目……二つ目?……目を開ける……開眼する……?」
「開眼……」
すると御影は、何かを思いつく。
「開眼……かいがん……海岸!」
「あぁ!海の方の海岸ですね!」
「それで歩く人の絵……。これを合わせると……千鳥海岸遊歩道デッキだ……!」
「おぉ!さすが探偵さん!」
七瀬は拍手をし、御影を称えた。
「つまり三人は、今夜二時に千鳥海岸遊歩道デッキに集合する……!」
御影は暗号を解く事に成功し、行方不明の三人が集まる場所が分かった。
暗号はそこまで難しいものではなかった。高校生らしい言葉遊びで作った暗号の為、もし追手がこの暗号を知った場合すぐに三人は捕まってしまうだろう。
すると七瀬があることを思い出す。
「そういえば、西川さんとの会話を録音してくれと西川さんに言われて録音データです!馬酔木さんにお渡しします」
「助かります。とても貴重な情報、ありがとうございました」
御影は七瀬からボイスレコーダーを受け取り、深々とお礼をした。
「いえ!お力になれて良かったです!」
「……ですが七瀬さん……この事を記事にする気は……ありますか?」
御影のその質問に七瀬は少し、顔を暗くさせる。
「……正直悩んでます……こういう件は、圧力で消されてしまうのがほとんどです。ですが……何らかの形で出したいと思います。私は、西川さんの勇気ある行動を無下にしたくありません!」
「……そうですか」
御影は七瀬のその言葉に安心して、表情を和らげた。
――その後七瀬と別れ、御影は事務所に戻って来た――
「さて……今夜、千鳥海岸遊歩道デッキに行くとして……一人で行くべきか……否か」
御影は悩んでいた。西川さくら、大塚明莉、今村恵を追っているものは、きっと政治家の差し金だろう。容赦なく襲ってくるに違いない。そして相手が何人居るかどうかも分からない。一人で助けに行くのは無謀に思えた。
かと言って、警察に頼る事も出来ない。薬物を所持した三人も同じく逮捕されてしまう。それに西川さくらがタレコミした情報すら書き換えられ、無かった事にされる可能性もある。
あらゆる事を想定しつつ、御影は結論を出した。
「……一人で……行くしかないな。必ず……間に合わせる……!」
御影は覚悟を決める。今夜、必ず少女たちを救う。そして家族の元に帰す。その事だけを考え、準備を始めた。
――次回へ続く――




