頼み事
――御影が旭の正体を知ったその頃、警察庁の地下に存在する基地に居た一条、柊、葉月、八乙女の前にある人物が現れた――
「……GOD」
一条は彼の方を見てそう呟く。
腕を後ろで組み仁王立ちしている人物、それは彼らにGODと呼ばれていた。
「突然すみませんね。君達にまた頼み事をしたいんです」
「……頼み事」
柊は息を飲んだ。
GODが彼らに頼み事をするという事は、人が消えるという事。
「……おや……まだ神代は居ないのですか」
「えぇ……まぁ……。まだ復帰の正式な手続きは済んでませんよね」
GODは少し考えた後、ゆっくりと口を開く。
「……そうですね。ですが……緊急でお話があります。……神代 朱稟を……ここへ呼びなさい」
GODの静かだが高圧的な雰囲気に、その場に居る全員が固まる。誰もがGODには逆らえなかった。
「……分かりました」
「では、神代も来たら、私に連絡をしなさい」
GODはそう言い残しその場を後にした。
全員が敬礼をしてGODを見送った後、一条はため息混じりに呟く。
「……今度は何を考えているのか」
「……ひぃ〜……しゅーくん呼ぶとか……ただ事じゃないよね……また何か大きな事件が、起こるのかな」
「そうね……」
柊はその場にしゃがみ込みながら、そう弱音を吐いた。そんな柊の横で八乙女も腕を組みながら、ため息をつく。
こののっぴきならない事態に、その場の全員が張り詰めた緊張感に包み込まれた。
「……神代には俺から連絡する」
一条はスマホを取り出し、神代に連絡を取る。すると神代はすぐに電話に出た。
「はい……どうしました」
「神代……すまないが、こっちに来れるか。……GODがお呼びだ」
「…………分かりました」
神代は一瞬の沈黙の後、了承した。
その後、すぐに電話が切れてしまった。
――一時間後。神代が基地に到着し、全員でGODの部屋に向かった――
「……神代、大丈夫か……」
「……はい。お気になさらず」
そう言ったものの、神代の表情は死んだ様だった。一条は神代が心配だったが、GODの命令を断る事は出来ない。
「……そうか」
一言だけ呟いた一条。
そしてGODの待つ部屋に着き、一条は部屋の扉をノックをした。
「どうぞ」
部屋の中から声がし、一条は扉を開ける。
「失礼します」
全員がGODの前に横並びに立つ。
そしてGODはチラリと神代を横目に見た。神代は何の反応も示さず、無表情でただ一点を見つめていた。
「今日、君達を呼んだのはある頼み事をしたいのです。……頼み事と言うのは、これです」
そう言いGODは、書類の束を差し出した。
「拝見します」
一条がその書類に目を通した。そこには最近、横行している闇バイトに関する情報が書かれている。
「最近は、闇バイトと呼ばれている犯罪が多発しています。それに書かれている大元を調べ……潰して欲しいんです。もしかしたら……テロを目論んでいる組織かもしれませんので」
「……なるほど……御意」
「御意」
一条の後に続き、四人もこの件を受け入れた。
「……頼みましたよ」
そして一同はGODの部屋を後にしようとする。
するとGODは、八乙女だけを呼び止めた。
「あ、八乙女君……少し話が。他は下がって構いませんよ」
「分かりました。行くぞ」
八乙女はその場に残り、他は部屋を出た。
そして八乙女を待つこと数分。八乙女が部屋から出てきた。
「何の話だったんだ?」
「ん?……あ〜少しは科警研に顔出せって」
八乙女は何かを誤魔化すようにそう言った。一条は少し不審に思ったが、追求はしなかった。
「……そうか」
一同廊下を歩いていると、神代が口を開く。
「……再び始まる……」
「ん?どうしたの、しゅーくん」
柊が首を傾げると、神代はある憶測を話し始める。
「このタイミングで、呼び出し……。多分、僕達が極秘に調べている事に勘ぐってる……」
「……つまり、それを遅らせる為に……この件を押し付けたって事か」
一条の言葉に神代は頷いた。
「……その通りです」
「なるほどね……。じゃあ、さっさと済ませましょう」
神代の言葉に八乙女は、気合を入れた。
そして葉月も八乙女と同様に力こぶをポンっと叩き、気合を入れる。
「分かりました。それじゃあ、ちゃちゃっとGODの頼み事終わらせましょう!」
「葉月、どれくらいかかる?」
一条の問に葉月は即答する。
「五時間程あれば、特定できます」
「流石だ。じゃあ、他は準備するぞ。闇バイトのバックには暴力団が居るはずだ。気合い入れて行くぞ」
「はい」
一条の言葉に四人は同時に返事をする。
その後、基地に戻ると早速準備に取り掛かり、情報収集を始めた。
約五時間後、闇バイトの大元を特定した葉月。そしてACTORSは、その組織のアジトの制圧に向かう準備を始める。その間、葉月はその組織の新たな情報を目にした。
「この暴力団、闇バイトの他に色々ヤバい事してるみたいです。柊さんこれ見て」
「ま、マジ……?薬物関係も取引してたのか……」
「新しい麻薬の密輸ね〜……。その薬、調べて実験したいわ」
二人の話に割って入った八乙女の発言に、柊は顔を引き攣らせる。
「八乙女さん、またそんな物騒なこと言って……やめて下さいよ〜……」
「結構大きいところだから、今回で潰し切れるかは分からないですけど……とりあえず、今やれる事はしないといけません。それに……私達には優先しなきゃいけない事もありますしね」
三人が話している間一条、神代は武装を完了させた。
すると一条が柊に近づいて来た。柊が、不思議に思っていると一条が口を開く。
「柊、お前は後方支援を頼む」
「え!?僕も!?」
「一応だ。もし、外に逃げ出す奴が居たら狙撃しろ」
「隊長としゅーくんから逃げられる奴なんて、居ませんよ〜……。まぁ分かりました……。ルート確認して、待機します……」
柊は不安そうに渋々了承し、準備に向かった。
すると一条は今度は、ロッカーの前で身だしなみを整えている神代の方に向かった。
「頼んだぞ。……神代」
一条はそう一言、神代に声をかけた。
手袋をはめた神代が、チラリと一条の方を向いた。
「……久しぶりだな、こうして仕事をするのは」
「……出来る事なら……あの人からの仕事なんて、もうしたくないのですが」
「……仕方ない……俺達は、あの人からは逃げられない」
一条の言葉に神代は、手を止め黙り込んでしまった。
――そして暴力団の本拠地に向かうACTORS。本拠地は人気の少ない雑居ビル。そこのビルは暴力団が一切を管理している事が分かっている。離れた所で、柊は車から降りる――
「よし!僕は配置に着き次第、連絡します!」
「あぁ、頼んだぞ。安全に気をつけろ」
「了解!」
少し車を走らせ、ビルから死角になる場所で車を止める。そして前線を張る、一条と神代は装備を整え車を降りる。
「……よし、行くぞ神代」
「……了解」
「お気をつけて」
「行ってらっしゃ〜い」
葉月と八乙女は、二人を見送る。
「八乙女、もし何かあれば連絡くれ。葉月を頼む」
「了解です」
すると柊から無線が入る。
「配置に着きました。応答願います」
「了解、そのまましばらく待機だ」
「了解」
そして緊張した面持ちで一条と神代は車を降り、雑居ビルへと向かった。
ビルの裏口から侵入する二人。その裏口は本来、カードキーが無いと開閉は出来ないが、葉月のハッキングにより自由自在に開閉が出来る。葉月は二人が侵入後、裏口のロックをかけ、細工をしカードキーでは開閉を出来なくした。
その後、足音を立てずに二人は、暴力団の頭が居るであろう場所へ向かう。そして二人は物陰から団員の様子を伺う。
「隊長は先に……ここは僕が……」
「分かった……。目的の場所は分かるな?」
「はい、大丈夫です……」
「じゃあ、ここは頼んだ」
「はい」
そう言うと神代は、団員に向けて銃を放つ。そして、その隙に一条は階段を進んで行った。
それを見つけた団員が、階段を上がろうとするの一条を追うが、神代は阻止する。
「邪魔だ!殺すぞ!お前らやれ!」
団員五人が神代に襲いかかる。
それを軽々とあしらい、反撃する。一人の団員が銃を構えているのが見えた神代は、相手に撃たせる間もなく神代が先に相手の頭を撃ち抜いた。
すると一人に後ろに周り込まれ、ナイフで刺されそうになるが、後ろを振り返ること無く相手の腕を撃ち抜く。
「ぐあぁ!」
腕を撃ち抜かれた団員は蹲る。その頭に神代は蹴りを入れ気絶させる。
残り三人の団員が、一斉に襲いかかる。その瞬間、神代は一人の腕を掴み、体制を崩させる。そしてその団員のみぞおちに拳を叩き込む。その団員の足を他二人の団員に引っ掛け、他の団員の体制も崩す。その瞬間、他二人の団員の眉間に銃弾を食らわせた。
辺りが静かになった。そして神代の周辺は血に染っていた。神代は階段を上り、一条と合流を図ろうとしたが、みぞおちに拳を食らった団員がゆっくり立ち上がった。
「……く……クソが……!」
神代は無言でその団員を横目に銃を構え、引き金を引いた。神代は気絶させた団員にも引き金を引き、殺害した。
そして階段を上ろうとしたその瞬間、一条から無線が入る。
「頭に逃げられた……」
「逃げられましたか……。……非常口かもしれません……。先に向かいます」
「頼んだ」
神代は引き返し、非常口へと向かった。神代は無線で柊に繋いだ。
「柊さん、頭が逃げました。非常口です」
「了解、見えてるよ〜」
すると、柊の見ていた非常口から暴力団員らが出て、車に乗り込むのが見てた。
「ターゲット確認……」
柊はスナイパーライフルを構え、車のタイヤに狙いを定め引き金を引いた。
暴力団の車のタイヤに穴が空き、身動きが取れなくなった。そしてその場に一条と神代が来て、車に乗っている人達を撃ち抜いた。
「制圧完了……後はGODに任せよう。神代、戻るぞ。……俺達にはまだ仕事残ってる」
「はい」
そんな話をしている間、暴力団の頭は血に染った車内でガタガタと震えていた。
その後、GODが準備したであろう黒ずくめの男達が来たことを確認し、二人は車に戻った。
――次回へ続く――




