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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
4章 刻印

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44/50

正体

 ――来栖との調査の翌日。御影は他に手がかりが無いか、情報を探っているとスマホが鳴った――


「誰だ……」


 御影はスマホを手に取ると、少し警戒しながら電話に出た。


「はい……もしもし……。馬酔木です」


「お、出てくれたか。加賀美だ」


「か、加賀美さん……!?」


 電話の相手は、まさかの加賀美警視総監だった。何故電話番号を持っているのか、直接電話をかけてきたのか不思議だった。


「ど、どうして……この電話番号を……」


「あぁ、来栖から聞いた」


「……あいつ……!……それで、わざわざ警視総監である貴方が、直接連絡をするなんて……私になんの御用でしょうか……」


「あぁ……ちょっと調べたんだよ」


「……?……何について……?」

 

「ほら、お前のところの助手してた奴。犬飼旭についてだ」


「……え……?」


 御影は加賀美の口から思わぬ人物の名を聞き、息を飲んだ。

 

「……電話じゃあれだ。個室の店を予約してある。赤坂の〇〇という店に二十時に来い」


 御影はその誘いに少し躊躇していた。


 ——加賀美さんと二人きりか……。気が引ける……。だが、俺は旭について全然情報が得られていない……。行くべきだろうか……。いや、悩むな……。どんな結果であれあいつの真実を知るべきだ——


「どうする、来れるか?」


「……分かりました。二十時に赤坂の〇〇ですね。行きます」


「分かった……。じゃあ、また後で」


 そこで電話が切られた。御影はため息をつきながら、スマホを見つめた。

 元上司との一体一の食事なんて初めてで、しかもこの精神状態。あまり乗り気にはなれない。だが、真実を知るためにはやむを得ない。


 ――二十時になり、御影は加賀美に待ち合わせした店に入店した。その店は、見るからに高級そうな料亭で、足を踏み入れるのに気が引ける。すると店員が現れ、名前を告げると個室に案内される。個室の扉を開けると加賀美が既に座って待っていた――


「加賀美さん……。お久しぶりです」


「あぁ、久しいな。一年振りくらいか?時の流れは早いな」


「ですね……」


 気まずさを抱えながら、扉の前で立っていると加賀美は座るよう促す。


「……いつまで突っ立っている。座れ」


「……失礼します……」


 御影はゆっくりと座椅子に座った。

 すると豪勢な食事が運ばれてきて、御影は驚きのあまり口を開く。


「……あの……加賀美さん……。こんな豪勢な場所に私が居て良いのでしょうか」


「あぁ、当たり前だ。それに私が呼んだんだ。金の事は気にするな。全部奢るぞ」


「……随分と気前がいいですね……」


「警視総監になった身だからな。お前は遠慮するな」


「そうですか……。では……本日、話と言うのは……」


「まずは飯を食おう。本題は食べ終わる頃に話そう」


「……はい」


 そう言うと加賀美は豪勢な食事に箸をつける。御影も食事に箸をつけるが、緊張してあまり味が分からない。

 そして他愛ない話をしながら、食事を終えた二人。


「あぁ〜!美味かったな」


「……そうですね」


「……では、本題といこうか」


 御影はその言葉に、一気に体を強ばらせる。


「……犬飼旭、初めて会ったのは馬酔木と一緒に事情聴取を受けていた時だな。だがその時、私は少し既視感がしたんだ」


「……既視感……?」


「あぁ……。一度、あいつを見た事があった気がしたんだ……。それで思い出した。私がまだ刑事部長だった頃、会った事があった」


 加賀美のその発言に御影は驚き、食い気味に聞く。

 

「……ど、どこで……!」


「……警察庁本部庁舎の長官室前だ」


「な……!なんで……そんな所に……」

 

 ――約八年前、刑事部長を務めていた頃の加賀美は、訳あって警察庁に出向いた。その際に長官室が見えるソファーに座って待っていた。すると、異様な雰囲気を纏った男女五人が長官室から出てきたのが見えた——


「本当に……これで良かったんですかね?」


 柊は不安気にそう一条に問いかけた。

 

「今更、引き返す事は出来ない。ただ長官と警備局長の命令を聞くしか出来ない」


 一条の言葉に葉月も不本意ながら、納得せざるを得ない。

 

「ですよね……私達……あの方々に助けられたも同然ですもんね……」


「先が思いやられるわ〜……」

 

「これが僕らの仕事です……」


 愚痴をこぼす八乙女に神代は、そう答えた。

 そして五人は、加賀美の横を通り過ぎた。加賀美は無意識に目で追っていた。特にフードを被った長身の男が気になった。

 そして今、その男が旭の顔に似ていたことを思い出した。

 

「あの時見たあいつは、雰囲気が全く違かった。前に馬酔木と一緒に来た時のあいつは、無駄に明るい頭の悪そうな奴だと思った。だが……昔あったあいつは、室内なのにフードを被り、表情一つ変えていなかった。他に数人と長官室を出て来たが、その人達の会話で一言呟いただけだった……。あの時のあいつは……異様な雰囲気だった……」


「やっぱり……旭(あいつ)は……」

  

 御影は加賀美の話を聞いて、点と点が結びつく。旭の正体はおそらく警察の人間であり、前警察庁長官とも面識がある。旭は普通の立場の人間じゃない。


「……それを確信したのは半年くらい前。お前が、関わった事件の後だ」


「半年前……あ、小笠原さんの……」


 約半年前。小笠原由綺が武内光に殺されたはずが、小笠原の死因は、急性心筋梗塞として処理された事件。

 御影にとって悔いが残った事件。


「あぁ、そうだ。あの事件の後、長官と話をしたんだ。その時、長官が一度席を外した瞬間があってな。チラッと長官のデスクを見ると長官のPCが開きっぱなしになっていた。不用心だなと思いつつも、つい魔が差してしまった私は長官のPCを覗き見したんだ。そしたら、A(・)C(・)T(・)O(・)R(・)S(・)と記載されたファイルがあったんだ」


「ACTORS……」


「そのファイルを開くと、私の知らない部隊の情報が入っていた」

  

「え……?警視総監である、貴方ですら知らない……部隊……?」


「あぁ……|公安特殊捜査制圧部隊《こうあんとくしゅそうさせいあつぶたい》という部隊だ」


「……な……なんだそれ……」


 見た事も聞いた事もない部隊に御影は混乱する。

 そんな中、加賀美は淡々と見た内容を話し始める。

 

「……メンバーは五人。隊長一条 玄仁(いちじょう げんじ)、神代 朱稟(かみしろ しゅう)、柊 蒼吾(ひいらぎ そうご)、葉月 桃佳(はづき とうか)、八乙女 紫苑(やおとめ しおん)……そう記載されていた」


「……なるほど……。で、でも……旭の名前が無いじゃないですか……本当にその部隊にいるんですか……」


「……あぁ、居る。」


 御影は加賀美の言葉に硬直した。

 すると加賀美は、スマホを取り出しある写真を見せる。

  

「……神代朱稟……これが旭だ」


 御影は驚きのあまり、言葉を失う。

 その写真に映されていたのは、紛れもない旭だった。だが、普段の旭とは違った雰囲気。無表情で生気のない瞳。その写真に写っていた旭は、この前最後に会った時と同じ顔をしていた。


「……書類の写真を見て目を疑った。だが、どう見てもあいつだった」


「……あいつは……公安警察だった……のか」


「そうだ……。だが、何をしているのか……誰が管理しているのかも分かっていない」


「そう……ですか……。ですが何故、このことを私に言ったんですか」


「……本来なら話すべきじゃなかったが……来栖から聞いたんだ。お前とあいつが、今大変な状態だってな」


 御影はため息をついた。

 来栖に話したのは失敗だったかとも思ったが、思わぬ所で旭の情報を得た為、何も言えない。


「そうですか……」


 ――その後、色々と話をし御影は加賀美と別れ、帰路につく。家に帰る前に買い物をしようと車を降り、歩き始めると、ある人物にすれ違いざまに名前を呼ばれる――


「馬酔木……御影さん」


 御影は背後から急に名前を呼ばれ、驚き振り返った。


「……なんで……俺の名前」


 そう小さく呟いた御影を見つめ、男は微笑んだ。


「驚かせてすみません」


「貴方は……」


「失礼しました。私は、犬飼 朔夜(いぬかい さくや)と申します」


「……犬飼……!」


 その男の名に御影は驚きを隠せない。御影の手が少し震える。


「……初めまして、馬酔木御影さん」


「……貴方はもしかして……犬飼光崇さんの……」


 御影は朔夜に対して警戒心を高め、恐る恐る問いかけた。


「えぇ、犬飼光崇は私のお父様です」


「そう……ですか。じゃあ、そんな貴方が何故……私に」

 

「私が言いたい事は……一つだけです」


「……何です」


「……あ(・)の(・)子(・)の邪魔はしないで下さいね」


 朔夜はそう言いニコッと笑った。

 御影が呆気に取られていると、朔夜は停まっていた車に颯爽と行ってしまった。


「あ!お、おい……!……どうゆう……意味だよ……」


 引き止めるも虚しく、朔夜は車に乗り込んで去っていった。


「……あの子……え……」


 御影はある事が頭を過ぎった。

 顔を青くさせた御影は、旭に電話をかけようとするが、手が震えて思う様に体が動かない。そして、消え入りそうな声で呟く。


「……俺は……とんでもない事を……してしまった」


――次回へ続く――

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