元相棒
――後日、来栖と御影は新宿へと赴いた。車内で二人は昔を懐かしんでいる――
「こうやって捜査するの久しぶりね」
「そうだな……。懐かしい……」
「あんたが刑事だった時、私とバディ組んで色々解決したよね〜」
「あぁ……」
来栖の話を聞き流しながら、御影は車窓から新宿の景色を眺めていた。
「懐かしいな〜……あんた、本当凄い捜査能力だったよね。あと……めっちゃモテてた」
「……あ?」
御影は来栖の言葉に反応し、来栖の方に目を向けた。
「いや〜あんたが通る度に女達が、コソコソってさ〜かっこいいだのクールで綺麗だの言ってたのよ〜。そんで私に敵意むき出し〜みたいになってた(笑)」
「なんだそれ……」
「昔、警視庁に日和ちゃんが、あんたにお弁当持ってくる度に、その女達がガッカリしてたの面白かったな〜(笑)」
「そんな事あったか……?」
「あったよ〜!ほんと、あんたは日和ちゃん以外眼中にないんだね〜」
「当たり前だろ……」
――そんな話をしていて、御影も昔を思い出す。数年前のある日、報告書を作り終えた来栖は昼飯を買いに出掛ける――
「はぁ〜!腹減った〜!買い物行くわ。馬酔木、あんたは何か食べる?買ってくるけど」
来栖は作業をしている御影に話しかける。
「いや、大丈夫だ。今日は日和が弁当持ってきてくれる」
「あ、マジ〜?相変わらず、ラブラブなんだから〜」
「お、おい!あんまデカい声で言うな!」
「羨ましいですな〜!」
来栖は御影の肩を揺らしながら、そう言った。
「はぁ……」
来栖のいつものいじりに、うんざりしている御影。
するとスマホが鳴り、メールを見ると日和が着いたと連絡が来た。
「あ、来たみたいだ。ちょっと行ってくる」
「行ってら〜」
御影は椅子から立ち、部屋を出た。
来栖はニヤニヤしながら、その後をこっそり追って部屋を出る。
来栖が廊下を通ると、先程御影とすれ違ったであろう女性警察官達がコソコソと話している声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、さっきの馬酔木刑事じゃん!」
「ね!はぁ〜イケメンだわ〜……眼福〜……」
二人の反応を見た来栖は鼻で笑った。
「何が眼福じゃ……!仕事人間で日和ちゃん一筋野郎だぞ……。それに私にはクッソ厳しいし……!」
来栖は誰にも聞こえない程の声で、愚痴をこぼした。
来栖が外に出ると、御影と日和が話しているが見てた。
「ありがとう、日和」
「ううん!全然!みか君、お仕事忙しいでしょ……ちゃんと食べてる?」
「うん、ちゃんと食べてるよ。日和は最近どう?仕事には慣れたか?」
「元気にやってるよ!……でも仕事はまだまだかな……」
「そうか。日和も体には気をつけて、無理はするなよ」
「ありがとう!」
「弁当、ありがとうな。大事に食べるよ」
「うん!また今度、時間がある時に作って持ってくるね!」
「日和のご飯、美味しいから嬉しいよ」
「そう言って貰えて、私も嬉しい!」
御影は日和と話す時は穏やかで、優しく微笑みながら話をしている。他の誰にも見せない顔だ。
するとこっそり覗いていた来栖が、御影の後ろから覗き込んで来た。
「日和ちゃ〜ん!元気〜?」
「うわ、びっくりした……」
御影は背後から突然、声が聞こえたことに驚き振り向く。
そして日和は久しぶりに来栖の顔を見て、パッと表情を明るくさせた。
「希実さん!お久しぶりです、元気ですよ!希実さんは元気ですか?」
「私も元気!最近何してた?」
「最近は仕事詰めで……でも今日、みか君と希実さんに会えて、元気貰えました!」
「えへ〜!嬉しい事、言ってくれるじゃないの〜!」
来栖が嬉しそうに日和の頭を撫でた。
それを見た御影は、来栖を睨みつけた。御影の視線に気が付き、そっと手を退かした。
「おい、来栖〜……」
「あ、ごめん馬酔木〜邪魔したね(笑)そんじゃ私は、先においたましますか!じゃあね、日和ちゃん!」
「はい!また一緒にお茶しましょう!」
「ありがとう〜!」
来栖はそう言いながら手を振り、その場を後にした。
「悪いな、日和」
「ううん!全然!久しぶりに希実さんに会えて良かった〜あ、そういえば同期の人って、もう一人いたよね?確か皆見さん?……だっけ?一緒じゃないの?」
「……。あいつは……別の所に居て会えないんだ」
御影は一瞬言葉を詰まらせた。そして言葉を濁し日和に伝えた。
「そっか……。また会いたいな」
「……すまない、そろそろ時間だ。弁当ありがとな、大事に食べるよ」
「……うん!じゃあ、また後で!」
「あぁ、気をつけてな」
そう言い日和を送り出した。
日和を見送った後、御影は警視庁に戻った。
その十分後、来栖はコンビニ袋を片手にニヤニヤしながら、御影に近づいてきた。
「……来栖、なんだその顔。ニヤニヤして……。弁当やらんぞ、俺のだ」
「要らんよ〜。いや〜幸せそうで羨ましいなと〜」
「……なんだそれ。そう言うお前は、恋人居ないのか?」
御影の言葉に固まる来栖。その表情を見た御影は、申し訳い気持ちになった。
「……す、すまん」
「いやぁ〜……ね?警察ってかっこいいじゃん……?だからモテると思ったのよ……。でもね……。忙しくて合コンには行けんわ、出会いは無いわで……」
来栖は暗い顔で、明後日の方向を見ながらそう言った。
「モテたいから警察になったのか……不純な動機だな」
「なー!どんな理由であれ、私のお陰でこの国の平和が保たれてるならいいじゃん!私の恋人はこの国じゃー!」
「はいはい、そうですね」
御影は来栖の発言を適当に受け流し、日和から貰った弁当を食べ始めた。
「クソ!適当に流しやがって!」
――そんな懐かしい思い出に浸りつつ、御影と来栖は、大塚明莉が目撃された通りの防犯カメラの場所に着いた。そしてその防犯カメラの映像を管理している人物に話を聞きに行く――
「失礼します、警察です。少し防犯カメラの映像を見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「警察……何か事件ですか?」
「そうなんですよ。この辺で行方不明の人を探しているんです」
「そうなんですか……。分かりました、少々お待ち下さい。今、防犯カメラの映像をお持ちします」
「助かります」
「……さて、残っているかどうかだな」
「そうね……。ギリギリってところかしら」
――十分後、管理人が映像を持って来た――
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
二人は管理人にお礼を述べた。
「見たいのは、いつの映像ですか?」
「一ヶ月前の映像って、まだ残ってますか……?」
「確認してみますね。……えっと……一番古いので六月二十日のものですね……」
「では、それから順に見せて貰っていいですか?」
「はい、分かりました」
――御影と来栖は映像を早送りしながら、行方不明の大塚明莉とスーツの男が写っていないかを確認した。そして六月二十一日の映像を確認しようとする。すると、来栖がある事に気がつく――
「ん……?」
「どうした……?」
「ここ見て……」
御影は来栖が指さした方に目を向ける。
「……六月……二十二日……?は?」
「ない……。二十一日の映像がない……」
御影は六月二十一日の映像が消えていることに、驚きを隠せない。
御影は、管理人の方を睨むように見つめた。
「管理人さん、何故六月二十一日の映像が無いんでしょうか」
御影は、管理人を問い詰める様な言い方で問いかける。
御影の問かけに管理人は狼狽える。
「えっと……。実はその日のカメラに不具合が生じてしまって……映像が残っていないんです……」
「……それは本当なんですか……?」
御影は管理人の言葉を疑っている。都合良く、その日だけ映像が残っていないなんて信じ難い話だ。
「は、はい……!本当です……!他の人にも確認してもらっても構いません……!」
御影は管理人の顔をじっと見つめ、本当に嘘をついていないかどうか観察する。
管理人は目を泳がすなどは無く、御影に真剣な眼差しを向けた。それに御影は、管理人が嘘をついているようには見えず、とりあえず管理人の言っていることを信じることにした。
「分かりました。……では、二十一日の前後、防犯カメラを確認していて、不審なものを見たことはありませんか?」
「不審なもの……特には」
「そうですか……。……来栖」
御影は来栖の方に目を向けた。
「……そもそもが取れて無いんじゃあ、復元しようも無いわね」
「だよな……。まさか、その日だけ取れてないとは……。予想外だ」
「そうね……管理人さん、一応残ってる映像を頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、分かりました……」
――その後、管理人から防犯カメラの映像を受け取った二人は、車へ戻ってきた――
「……クソ……手がかりがなくなってしまった……。どうするか……」
「う〜ん……聞き込みをするにも、時間が経ちすぎてる」
「そうだな……。行方不明の三人の誰か一人でも情報があれば、他も分かるかもしれない」
「そうね……。こっちでも色々調べてみる」
「すまないな……非番の時にわざわざ来てもらったのに」
「いやいや、いいのよ!なんか懐かしい気持ちになれたから。……あんたが、こうして仕事が出来てる事自体……私にとっては……安心するのよ」
「……そうか」
そう言うと御影は、そっと視線を車窓に移した。
元相棒と言うだけで、ここまで親身になってくれる来栖。そんな来栖の優しさを御影は、素直に受け取れなかった。
――次回へ続く――




