何処に
——来栖と解散した後、御影は事務所に戻り旭に関する情報をまとめていた。いつの間にか寝落ちてしまったようだ。時刻は七時十二分。眠気眼で画面を見つめていると、メールが届いていたことに気がついた——
「メールか……」
メールを開いて見ると、それは依頼のメールだった。
メールにはこう書かれていた。
「今村 渚と申します。娘の今村 恵が三週間前から行方不明なのです。警察にも捜索願いも出しましたが、音沙汰がありません。お願いです、娘を探して頂きたいです。ご連絡頂けると幸いです」
「行方不明か……。この事件に繋がりが……?」
御影はこの依頼と来栖から頼まれた事件が何か繋がりがあるのではないかと踏み、その依頼を受ける事にした。
後日、会う約束を取り付けた。
――後日、御影の事務所に依頼者が訪れて来た――
「初めまして、今村さん。私はアンドロメダ探偵事務所の馬酔木御影と申します。本日はよろしくお願いいたします」
御影は今村へ挨拶し、名刺を渡した。
「今村渚です……。よろしくお願いいたします……」
今村は娘が居なくなってか、憔悴している様子だ。
御影はメモ帳とペンを取り出し、早速話を聞く。
「ご依頼の内容について、もう一度詳しく教えて頂けますか」
「は、はい……。娘は、今村恵と言います。年齢は十七歳で、高校三生です。約三週間前からバイトに行くと言ってから連絡が取れず、警察に捜索願いを出して貰いました。ですが……しばらく経っても警察からの連絡がありませんでした。ですからここに……」
「なるほど。恵さんは何のアルバイトをしていましたか?」
「確か……居酒屋?だったような気がします」
「そこに行った事は?」
「いえ……無いです」
「なんと言うお店ですか?」
「品川にある……〇〇と言うところです」
「では、そのお店にいつから勤務していましたか?」
「えっと……三ヶ月くらいかしら……」
「バイトのシフト時間は?」
「え〜……毎週水曜日と土日……いつも出かけていくのは十五時半頃で、帰りは二十一時半くらいですかね……」
「なるほど……。不自然な所は無いですね……。他に恵さんが、何処か頻繁に行っていた場所はありますか?」
「……わ、分かりません……。実は……あまり娘と会話できてなかったんです」
「……理由を聞いても……?」
「恵……高校生になってから自分の事、あまり話さなくなりました。……学校に馴染めてないのかなって思ったりもしました。夫にも恵の事について話してみましたが……教育に関しては任せると言って、全然話し合ってくれませんでした……」
「そうでしたか……」
――約一時間程、御影は今村の話を聞き、今村恵の居場所の手がかりを探った――
「ありがとうございます。最後に恵さんの顔がハッキリと分かる写真はありますか?」
「はい……少々お待ちください」
今村はスマホを取り出し、家族が一緒に写った写真を御影に見せた。
「これで……大丈夫ですかね」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。少し、スマホをお貸しいただけますか?」
「どうぞ……」
今村は御影にスマホを手渡し、御影は受け取ったスマホにケーブルを繋ぎ、写真をPCにコピーした。
そして写真を受け取ると、今村にスマホを返した。
「ありがとうございます。では早速、調査に参りますので何か気になる事があればいつでもご連絡下さい」
「はい、お願いします……!」
今村は深々と頭を下げ、事務所を後にした。
今村を見送った後、御影はデスクに座り、情報をまとめる。
「……まず、来栖から頼まれた探して欲しい人物は、西川 さくら、十八歳。約一ヶ月前から行方不明……。白石さんから相談された、パパ活をやっていると噂の人物は大塚 明莉、十七歳。約二週間前から連絡がつかなくなっている……。そして……今村恵、十七歳。約三週間前から行方不明……か……。全員高校生……調べて見るか」
御影は、まずその三人の共通点がないか調べる事にした。すると、ある事が分かった。
「……この三人、同じ高校だな。……っと言うことは友達か……あるいは知り合いの可能性がある……全員顔が整っているな……あ、白石さんが言っていたモデルをやってる先輩ってこの三人か……?他に共通点……バイト先や部活に関しても……」
作業をしているうちに、あっという間に時間になった。まずは今村恵が働いていた居酒屋に向かうことにした。そして車を走らせ、御影は今村恵が働いているバイト先の店に到着した。
「お忙しい中、失礼致します。私、こうゆうものです」
御影は店長に名刺を渡した。
「探偵の方ですか……。それで、何のご用でしょうか」
「私、今人探しの依頼を承っています。その探している人と言うのがこの方、今村恵さんです。こちらで働いていると伺って来ました」
御影は、店長に今村恵の写真を見せながら話をした。
店長は写真をじっくりと見た後、口を開く。
「……う〜ん、知らないな〜……。うちでは雇ってないよ」
「……え?」
御影は店長の言葉に耳を疑った。雇っていないとなると、今村恵は一体何処に行ったのだろうか。
「えっと、もう一度よく見ていただけませんか?……ほ、本当に知りませんか?」
「すみませんが……私は知りません」
「……そ……うですか……。それではもし、この方を見かけたら私にご連絡ください」
「はい、分かりました」
御影はその場を後にしようと荷物をまとめ始めた瞬間、部屋のドアが開き店員の青年が入って来た。
「店長〜この新メニューの事なんすけど〜……。あ、すんません」
「い、いえ」
青年は御影を見て、軽く会釈する。
青年はチラリと横目で、今村恵の写真を見た。
「……あ!」
青年はその写真を見て驚き、声を上げた。そして青年は、御影に近づき話しかける。
「あ、あの!それって!」
「え……?知り合いですか?」
「知り合いも何も、お……俺の彼女です!」
「え!ほ、本当ですか?あの、お名前は?」
「松下 康っていいます」
「松下さんですね。お時間よろしければ、お話お聞かせ願えますか」
「は、はい。あと三十分くらいであがりなんで、ちょっとだけ待って貰っても良いですか?」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
その後、松下と店長は仕事に戻り、御影は三十分程部屋で待つ事になった。その間、情報をまとめながら時間を潰す事にした。
――三十分後、松下が仕事から上がり御影が待つ部屋に入って来た――
「お待たせしました!」
「いえ、お仕事お疲れ様です」
「あ、ありがとうございます!恵の話ですよね?」
「えぇ、そうです。どうぞおかけになって下さい」
「あ、ありがとうございます」
松下は御影の正面に座ると、御影は話を始める。
「実は今村恵さんが行方不明になったと、お母様から依頼を受けました。それで、お母様から恵さんがここで働いてるとお聞きし、何か情報を得られないかと思い伺いました」
「そうだったんですね……。恵……最近全然連絡なくて……めっちゃ心配してたんです……。行方不明ですか……」
「えぇ……それで、お聞きしたいのですが、松下と恵さんはどう言った経緯でお知り合いに?」
「同級生です。同じ学校で知り合いました」
「同じ学校だったんですね」
「……はい。えっとそれで……恵のお母さんが、恵がここで働いてるって言ってて、ここに来たんですか?」
「そうなんですが……恵さんはここでは働いていないんですよね?」
「そうなんすよ……。恵はここで働いてないのに、何で恵のお母さんはそう思ったんですかね……」
「恵さんが……お母様に嘘をついていたのかも……」
「嘘……?何で……」
「現状、分かりかねます……。ですが、恵さんとお母様、あまり会話が多くなかったみたいで……恵さんは何かと心配かけない為に、彼氏のいる居酒屋でバイトしていると嘘をついたのかも知れません……。あくまで、憶測に過ぎませんが……何かを隠しているのは間違いないかと」
「なるほど……。恵……どこ行ったんだ……」
御影は自分の憶測を松下に話した。
だが、まだ情報が少なすぎる。ましてや今村恵はここで働いていないとすれば、他に行きそうな場所が分からない。
すると松下が、あることを思い出す。
「あ、そういえばちょっと前に、地下アイドルにスカウト受けて、これから雑誌にも載るみたいなこと言ってました」
「地下アイドル……。恵さんが所属している事務所は、知っていますか?」
「事務所までは知らないですね……。すみません……」
「いえ、有力な情報提供、ありがとうございました」
「はい……恵を早く見つけてください……!」
「お任せ下さい。必ず……見つけてみせます……!」
――次回へ続く――




