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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
3章 動機不明

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アリバイ

 ――三日後の七月十二日。来栖は、自殺者達との関わりがあったであろう人物の事情聴取を行っていた――


武内 光(たけうち ひかる)さん……ですね。本日は捜査のご協力感謝します」


「いえいえ。今回は何を聞きたいんですか?」


 彼が来栖が犯人だと睨んでいる男、武内光。二十八歳の細身の男。


「今回お伺いしたいのは、こちらの掲示板サイトについてです」


 来栖はPCの画面を武内に見せた。そこに映されていたのは、武内が利用していたネット掲示板。

 武内は「またか」と言わんばかりにため息をついた。

 

「武内さん、貴方は()()()()()()()()()()というハンドルネームでこの掲示板サイトを利用していましたね」


「えぇ。そうですよ」


「前回は佐藤さんの件でお話をお聞きしましたが……他にも貴方と連絡を取り合っていた人は居ますね?」


「まぁ、それなりには居ますけど……」


「では貴方は、これらの人物に見覚えは」


 自殺者の掲示板サイトでのハンドルネームと顔写真、本名が書かれている資料を武内に見せる。武内は一つ一つ資料に目を通す。


「あ〜この人か!知ってますよ。よくお話してましたから」


 武内はそのハンドルネームを見て、頷いた。


「そうですか。実際に会ったことは無いですか」


「いや〜オフ会とかはしたことないんで、会ったことも無いです」

 

「ですが、会う約束はしていますよね?」


「えぇ……まぁ。でも、その後から連絡がつかなくなってるんです」

 

「それもそのはずです。この人達が亡くなっている……という事は知っていますか」


「……え?」


 武内は来栖の発言に驚いている様子だ。来栖は武内の表情を確認しながら、資料に書かれた人物達について話し始める。


「亡くなった人達の死亡推定時刻は、佐藤さん六月十日、山内さん六月十四日、坂本さん六月十九日、松田さん六月二十四日、伊藤さん七月八日……。あまりにも、日にちが近すぎるんです。何か知っている事は?」


「……知ってる事……?……この人達は自殺願望が強かった……それくらい?」


「そうですか……。それで貴方は、この人達とコンタクトを取り……自殺を叶えてあげたんですか」


 来栖は武内を睨みつけながら、そう言い放った。


「は?何言ってんの?何……自殺じゃなくて殺人だ思ってるんですか?」


「私はそう思っています。ただ確証はありません。でも、貴方はこの人達とダイレクトメッセージで話をしていた……。それは何故?」


「何故って……話聞いてあげて、少しでも気持ちが楽になったら良いなと……」


「そうですか……。では、それぞれの亡くなられた日、貴方はどこに何をしていましたか?」


 来栖の質問に、武内は少し苛立ちながら言う。

 

「は?一ヶ月前の事なんて覚えてる訳ないでしょう?じゃあ、逆に聞きますけど刑事さんは一ヶ月前の事、覚えてますか?」


「……いえ」


 来栖は武内の質問を返され、答えることが出来なかった。武内は呆れたように言う。


「ほら〜刑事さんも覚えてないじゃん」


「では、直近の七月八日。伊藤さんが亡くなられた日の二十時頃から二十三時頃、貴方は何を?」


「え〜っと……。確か、その時間はBARで飲んでました。新宿のBAR○○って所です。防犯カメラとか〜店の人に聞けば、分かると思いますよ?」


「そうですか……。では……六月二十四日は?」


 ――その後三十分程の事情聴取を行った。だが、決定的な証拠は得られず、武内を帰らせた。来栖は気持ちが晴れぬままコーヒーを買い、ため息をついた――


「はぁ〜……中々、尻尾掴めないわね……」


「……先輩」


 すると、先程部屋の外から事情聴取を見ていた加賀美慎一郎が、来栖に話しかけた。


「ん、どうした?」


「あの人を本当に疑ってるんですか?……この件は自殺の線が濃厚なのでは?」


「う〜ん、でもなーんか匂うのよね〜……。刑事の勘ってやつ」


 来栖の考えに慎一郎は半信半疑だ。来栖が何故そこまで他殺にこだわるのか、慎一郎には分からなかった。


「はぁ……そうゆうものなのでしょうか」


「そうゆうもんなのよ」


 来栖はそう言うと、缶コーヒーを一気に飲み干した。

 すると加賀美が気になっていたことを来栖に問いかける。

 

「来栖さん。元々は捜査一課に居たんですよね。どうして機捜に?」


 慎一郎のその質問に来栖は、コーヒーの空き缶を見つめながら動きを止めた。


「う〜ん、痛いとこ突くね〜……」


「あ……すみません」


 慎一郎は軽率な質問をしてしまったと罪悪感を覚え、咄嗟に謝った。

 来栖は飲み干した缶コーヒーの空き缶をゴミ箱に投げ入れ、ベンチに腰掛ける。

 

「いいのいいの。……四年前くらいかな。あの事件、覚えてる?」


「四年前……あ、あのスクランブル交差点爆破テロ事件ですか?」


「そう……その頃、私は本部の捜査一課に居た。その事件当時、私達は待機を命じられてた。……けど、馬酔木(相棒)がね、飛び出して行っちゃったの。それで私も止めようとはしたけど、話を聞いたら……いてもたってもいられなくて、そのまま車を走らせた……。その後、まぁ……色々あってね。命令無視により私は機捜に移動になり、相棒は命令無視と許可なく発砲したことの責任を取り、警察を辞めた……」


 来栖は俯きながら、暗い声色で話をした。

  

「そうだったんですね……」

 

「そうそう。あの頃は色々と大変だったわ〜まぁ、今も大変だけど……。ほら!さっきマル被が言ってたBAR行くよ!」


 来栖はいつもの明るい雰囲気に戻り、加賀美の肩をポンっと軽く叩き、歩いて行った。

  

「あ、はい……」


 ――来栖は車を走らせ、新宿のBARに向かった。そこは昼間はカフェ、夜はBARとして営業している店だ――


「いらっしゃいませ〜!」

 

「すみません。警察です。少しお時間よろしいでしょうか」


「え……あ、はい。こちらにどうぞ」


 店員の案内で、店のバックヤードに通された二人。


「それで……どうゆうご要件でしょうか」


「すみません、突然来て。あの、七月八日夜にこの男来ました?」


 来栖は武内の写真を店員に見せた。


「あ〜武内さん?常連ですよ、その日もこの店に来てます」


「何時頃から居たか、分かります?」


「二十一時くらいから居たかな。」


「……そうですか。ちょっと防犯カメラって見せて貰えます?」


「はい、良いですよ。ちょっと待っていてください。」


 そう言い店員は、防犯カメラの映像を二人に見せた。

 すると、別の人物が武内の横に座った。そして何かを武内にこっそり手渡した。その後男は、注文した酒を受け取り別の席に行ってしまった。


「えっと、この人は常連?」


「いえ、初めて来るお客さんでした……」


「そうですか……。この映像貰っても?」


「はい、大丈夫ですよ」


「ありがとうございます」


 来栖は店員から防犯カメラの映像を受け取り、分駐所に戻ってきた。


「う〜ん、武内に何を渡したんだこの男……」


「薄暗くてよく分かりませんね……。紙?でしょうか」


「紙……文通でもしてんのかね」


「足がつかないように、小さな紙に何かを書いて渡している……とか」


「有り得るね……。この映像解析して貰いに行ってきて」


「分かりました」


 慎一郎はPCを持って部屋を出た。それから三十分後、慎一郎が戻ってきた。


「映像解析終わりました」


「お、ありがとう〜」


「別の監視カメラにもこの男性が映っていましたが、ハッキリとした顔までは特定できませんでした……」


「そっか〜……まぁ、マスク付けて徹底的に顔を見られないようにしてるし、仕方ないか」


「この男、どうしますか?」


「う〜ん……まぁとりあえず、この男は後回し。武内の方、動きないか掲示板サイトを見てみましょう」


「分かりました」


「あ、でも他の呼び出しがあればそっちを優先ね。こっちは自殺って判断された事件だから」


「はい、分かりました」


「じゃあ、ちょっとコーヒー買ってくる。加賀美はコーヒー飲む?奢るよ」


「え……はい。ありがとうございます」


――次回へ続く――

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