happens again
――小笠原千遥が働いていた職場で、上司の七瀬から話を聞いた後、二人は事務所に戻り、情報を整理していた。一番の手がかりになるであろう、小笠原千遥のPCが何処にもないということで、一気に事件性が増した――
「……やっぱり……これは普通の自殺じゃないな」
「だね〜怪しい所が満載……」
御影はデスクの椅子に座り、PCで情報を文字に起こしていく。その一方で旭は、ホワイトボードを移動させ同じように情報を書き出していく。
「まず、情報をまとめようか……。死亡した人物は小笠原千遥。職業ジャーナリスト。仕事熱心で真面目な性格。自殺した場所は自宅のクローゼット。死亡推定時刻六月二十九日二十二時から一時頃。妹の小笠原由綺さんが七月一日に発見。その後警察を呼び、二名の警官が訪れた。鑑識も入り、自殺と断定。解剖はされず」
「ここまでは、事件性無しって感じだよね」
「あぁ、だが……不審な点がある。一つは妹の由綺さんと七月一日、会う約束をしていた。二つ目は遺書が見つかっていない。三つ目は警察の報告書に小笠原千遥という名前が記載されている書類が無い点。四つ目は千遥さんが使っていたPCが無い点……」
「……それに一番は警察を呼んだのに報告書が、どこにもないことだよね」
「あぁ……PCが無いことも気になる。有り得るとしたら……会社の人が千遥さんのPCを内緒で保管している……とか。他には、千遥さんに恨みを持つ人物が千遥さんのPCを持ち去った……。だとしても信憑性が薄いな。それに……千遥さんが書いた記事はどれも真実を書いていた。今どき珍しい記者だな……。最近は悪意を持って有名人を付け回す、ストーカー野郎が多いからな……」
「う〜ん、やっぱ誰かとトラブってたんじゃない?それで自殺してしまった……それ以外有り得ないと思うけど?」
旭の意見は尤もだ。本当に警察が捜査をしたらな、警察も同じ様に考え、早々に捜査を切り上げたに違いない。だが……
「その線は濃厚だが……何故それを警察は隠す必要がある?」
「……隠す?」
御影の言葉に旭は、首を傾げた。すると御影はある憶測を口にする。
「もし……小笠原千遥さんが警察側に不利な情報を手に入れてたら……」
御影のその言葉に旭は、ペンを動かす手が止まった。御影は、警察内部も疑っているようだ。
果たしてこの事件は、自殺か他殺か。もし他殺なら、誰が犯人なのかまだ見当がつかない。
すると、御影のスマホが鳴る。スマホを手に御影は、椅子から立ち上がり画面を確認すると、電話をかけてきたのは来栖だった。
「もしもし、来栖どうした?」
御影は突然の連絡に驚き、質問する。すると来栖は、ため息混じりに話し始める。
「まーたうちの管轄で自殺が起こった……。これで六件目……」
「……またか」
「今回も首吊り……。何なのかしら……最近の流行り?」
「……そんな流行りなら、来ない方が良いだろ」
「それはそうね〜……」
御影は来栖の冗談混じりの報告を受る。人が死んでいるというのに、そんな冗談が言えるのは人の死に慣れてしまった警察だからだろう。
そして御影は、さらに詳しい情報を尋ねる。
「それで、そのご遺体の様子と周辺の様子は?」
「ご遺体は特に変わった所はなし。周辺はゴミだらけね……」
「遺書は?」
「遺書らしき物はあったわ。それと……前にも言ったネット掲示板を利用してた……」
「今回も……か」
「ネット掲示板に、死にたいだとか消えたい。もう何もかもが嫌になったって書いてあった。……で、それに対してシャイニングしいたけが、一緒に死にましょう……お話しませんかって……書いてある」
「……またそいつか……。ここまで関わってると疑わざるおえない。もう一度そいつに事情聴取した方がいいんじゃないか?」
「そうね……。ここまで関わってるとなると……もっと詳しい話を聞いといた方がいいわね。ありがとう、また何かあったら電話かけるわ」
「分かった。またな」
そう言って電話を切った。御影は眉をひそめながら、旭の方を向いた。
「また自殺者が出たそうだ」
「えぇ〜!?また!?多くない?」
「あぁ、異様に多いな。しかも同じ区域で」
「う〜ん……やっぱ殺人……?」
「……分からない。だが、怪しい人物はいる」
「もしかして……」
「そう……梶ともネット掲示板で連絡を取っていた……シャイニングしいたけという人物……。今度、来栖がそいつに話を聞くそうだ」
「そっか〜……。どんな奴なんだろ」
「まぁ、色々と分かればこっちにも連絡してくれる。それまで待つしかないな」
「ただ待ってるのもな〜……。あ、そうだ!小笠原さんに連絡してお姉さんの自宅見てみるのは?」
「あ〜確かにな。一度現場を見ておくのも大事だ。何か手がかりがあるかも知れないからな。よし……」
御影は旭の意見に同意し、さっそく小笠原に連絡を取る。
するとすぐに電話を取った小笠原。
「あ、もしもし。馬酔木です」
「はい、小笠原です。馬酔木さん、何か分かったんですか?」
「それがですね、お姉様のパソコンが職場にも自宅にも無いと言うのが分かりまして」
「え……パソコンが……」
小笠原は驚いた声色でそう言った。だが、何故だろう御影にはその声に違和感があったように思えた。
「……えぇ。それに他にもいくつか不自然な部分がありまして……ですから一度、お姉様のご自宅にお伺いしたいと思うのですが……よろしいでしょうか?」
「……えぇ、もちろん。何かのお役に立つのなら」
「ありがとうございます。では明日、お姉様のご自宅に伺っても?」
「分かりました。では明日、ご案内します」
「はい。明日、よろしくお願いいたします。失礼します」
小笠原は快く提案を引き受けてくれた。そして明日、小笠原千遥の自宅へ足を運ぶ形となった。
「よし……。小笠原さん、了承してくれた」
「お!やった〜!これで何か分かると良いね!」
「あぁ……。だが、あまり期待しすぎるのも良くない。ご遺族の方々が、千遥さんの遺品整理の為に家に来てるはずだ。そこで大事な証拠が持っていかれていたら……」
「あ〜……そっか〜……。まぁ、現場に行く事で何かしらのヒントが貰えるかもよ〜?みかちゃんはあんま悲観的にならないでよ〜!」
旭は御影の肩に手を置き、励ますようにそう言った。
「そうだな……。にしてもお前は楽観的だよな」
「え?そう〜?えへへ……」
「何で照れてんだ!別に褒めてねぇよ」
旭は照れ臭そうに笑うが、すぐさまツッコミを入れる御影。
「えぇ〜そうなの〜?みかちゃんももっとポジティブに行こうよ?」
「ポジティブね〜……。俺には無理な話だな」
そう言い御影は、デスクの椅子に座り直した。そして再び渋い顔をして考え込んだ。
――次回へ続く――




