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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
2章 タイムリミット

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無能

 ――御影と旭は無事に事件を解決し、日が沈み月が顔を出した頃、ようやく福島県から東京都の事務所に戻ってきた。お土産を両手いっぱいに買った旭は、ソファーにドンッと荷物を置いた――


「ふぅ!帰ってきた〜!いや〜今回は流石に疲れたね〜」


 旭は荷物を置いた後、ソファに腰掛け体を伸ばした。 御影も荷物を置き、上着をハンガーにかける。そして帰って来てすぐなのにも関わらず、デスクに向かって作業を始めた。

 その様子が気になった旭はソファーから立ち上がり、御影のデスクに近づきPCを覗き込む。

  

「ん?みかちゃん、何してんの?」


「……掲示板……」


 御影はPCの画面を一心に見つめながら、そう答えた。

 

「掲示板?……あぁ!あれか!梶が使ってたってやつ?」


「……そう……。それを探してる」


 旭の方を一切向かず、タイピングする手を止めなかった。旭は御影のその切羽詰まった様子を見て、御影の体を気遣う。

 

「な〜るほど……。けど今日は休んだら?……あっちで泊まったとはいえ、体はまだ休まってないでしょ?……体的にも精神的にも疲れ溜まってんじゃない?」

 

「……いい……。俺は、少しでもあの事件の手がかりになりそうなことは、全て調べる……。休んでる暇なんて……俺にはない」


 御影は旭の言葉に耳を貸さなかった。

 その様子に旭は、心配そうに御影を見つめた。


「……でも……」


「……俺のことは良いから、お前は休め。梶との一件で疲れてるだろ」


「……いや別に。梶とのやつでは疲れてないよ。あれくらいどうってことないけど……さっきの疲れたは、美味しい物食べ過ぎて食べ疲れたって意味〜」


「はぁ……そうかよ」


 御影は旭の呑気な発言に、ため息をついた。

 今回の事件、御影は異様な執着を見せていた。それはきっと今回の事件と、約三年前の渋谷スクランブル交差点爆発テロ事件の関連性があると御影は考えているからだと、旭は察した。

 そのことについて、旭は御影に問いかける。


「……みかちゃんは今回の事件は、三年前の事件と関連してるって思ってるの?」


 旭の言葉に、御影のタイピングをする手が止まった。そしてゆっくりと口を開く。

 

「……。……直接的にでは無いにしろ、近しいものは感じる。爆弾なんて……そうそうあってたまるか」


「……そうだよね。……みかちゃんは犯人を見つけたいの?」


「……当たり前のこと聞くな」


「犯人見つけたら、どうする?」


「……殺す。……殺して俺も死ぬ」


「……それって意味あるの?」


「……それが今、俺が生きる理由だからな」


「でも……それは日和さんが悲しむんじゃない?」


 御影は一瞬目をカッと開き、思いっきりデスクを叩いて立ち上がった。そして旭の方を向き、すごい剣幕で捲し立てる。


「さっきからなんなんだ!変な質問ばっかしやがって!何でそう俺の過去が気になる!お前には関係ないだろ!今は一人になりたいんだ、お前はどっか行ってろ!」


 御影は旭の傷をえぐる様な質問攻めに耐えきれず、怒りを露わにする。旭はそんな御影の目をしっかりと見つめながら話す。


「みかちゃんは……それで良いの?」


「はぁ?……何が言いたいんだよ……!」


「みかちゃんの人生って……何?」


 旭のその質問に言葉を詰まらせた。御影は旭から目を逸らすことが出来なかった。

 御影は目線を落としながら、ポツリポツリと話し始める。

 

「……俺の人生は……復讐だよ……。ただの自己満足の復讐だ。俺がこの世で最も愛した人……。そして俺の恩師の命を奪った犯人を見つけ……殺して……俺も死ぬ。それが……俺の人生だ」


 御影は今まで見た事のない表情を旭に向けた。寂しさ、悲しさ、恨み、覚悟。様々な感情の籠った眼差しだった。

 御影の言葉を受け取った旭は、ゆっくりと話し始める。


「……俺は……みかちゃんには……もっと色んなことを知って欲しいな」


 旭は複雑な感情を抱きながら、呟く様にそう言った。


「……何だよそれ……。意味分かんねぇ……」


 御影は旭の意味不明な発言に、疑問を持ちながら椅子に座り直した。


「……いいからもう、お前は休め……。俺は犯人探しで忙しい」


「……分かった。俺はゲームでもしてるよ」


「俺の邪魔をしなければ、それでいい」


 ――三十分が経過したが、御影は様々な掲示板を見ていたが何も手がかりが掴めなかった――


「……クソ……。掲示板って言っても多すぎる。どの掲示板かくらい教えてくれても良いのに……。今頃、警視庁(あっち)に情報が回ってきているはずだ。……俺が今も……刑事だったら」


 御影はボソボソと独り言を呟いていた。すると御影は席を立ち、何処かに電話をかけるためにベランダに向かった。


「……もしもし来栖?」 


 するとワンコールで来栖が電話に出た。

 

「……あ!馬酔木!丁度電話しようと思ってたんだから!あんたまた危険な事したんだって!?こっちにまで話回ってきてんだけど!もう危険な事はしないって約束したじゃん!」


「す、すまん……。今回は仕方なかったんだ」


「なーにが仕方ないだ!そう言っていつもあんたは自分を大切にしないでさ〜……で、何?なんか用があるから、そっちから電話して来たんでしょ?」


「あぁ……今回の事件に関してだ」


「何〜?私も暇じゃないのよ」


「今回の事件の犯人、梶秋宏が利用していた掲示板とその内容を教えて欲しい」


「は?……ド直球ね〜……無理に決まってるでしょうが。それくらいあんた分かってるでしょ?」


「……分かってる……だけど頼れるのはお前しかいないんだ……。頼む……」


「はぁ……私がそんなに口が軽いと思ったの……?これは機密情報。教えたら……私までもクビ」


「……だよな……。すまない……」


 そう言うと御影は黙り込んでしまった。

 すると来栖は通話越しに御影の違和感に気がついた。

 

「……ねぇ、大丈夫?」


「いや……別に何でもない」


「……あんたはそうやっていつも誤魔化すよね……。察しはつくけど……日和ちゃんのことでしょ?あんま深入りしないわ。……さすがに情報は流せないけど、あんたの話はいくらでも聞く。……だからまた連絡ちょうだい」


「あぁ……。ありがとう」


「じゃあ、仕事に戻るわ」


「あぁ……急に電話掛けて悪かった」


「良いわよ。……長年あんたとつるんでんだから、それくらいどうって事ないわ。それじゃまた」


 御影は来栖との電話を切り、部屋に入った。


「……やっぱり……ダメだよな……」


 御影は悔しそうな顔をしながらまたデスクに座る。


「……あれ、電話?来栖さん?」 


「……そうだ。よく分かったな」


「みかちゃんが頼る人なんて限られてるでしょ」


「……そうだな……。でも、やっぱり刑事を辞めた俺には、情報は教えられないだと」


「それはそうだね……」


 御影はPCの画面をボーッと見つめ、弱々しい声で呟き始める。

  

「……俺が刑事だったら……。あの時、上の言う事を聞いて素直に従ってたら……。何か変わったのかな……」


「……それは誰にも分からないよ、それに日和さんのところに行ったのは正しかったと思う」


「……俺が居ない今の警察は……何をしているんだろうか……。」

 

 旭はただ黙って、御影の方を見つめる。

 

「三年……三年以上も経ってるのに……俺が撃った犯人は未だ見つかってない……。確かに実行犯の何人かは捕まった。なのにどうしてそいつの情報がないんだ……。俺が今も捜一に居れば、その犯人をすぐに見つけられてたはずだ!……今の警察は無能だ!凶悪犯が今も野放しにされている!何故今も見つかっていないんだ!本当に……警察は無能だ……!」


 御影は段々と怒りをあらわにして頭を抱えながら、心の底からの気持ちを吐き出した。その言葉を聞いた旭は、ゆっくりと口を開く。


「……そうだね……。今の警察は……無能だよ」


 聞こえるかどうかの小さな声でそう呟いた旭は、御影から目を離さなかった。

 

――次回へ続く――

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