復讐
――梶は逮捕され、前田と高峯は保護され病院に搬送される。そうして御影と旭も車に戻ってきた。警察に状況説明を軽くし、その後は警察署に向かう――
「お二人も取り調べの為、一度署に来て貰ってもよろしいでしょうか?」
「はい、分かりました。パトカーに付いて行く形で向かいます」
「ご協力感謝致します」
警察官が離れ、御影は車の窓を閉めた。
すると旭は運転席のシートに体重を乗せた。
「いや〜!梶マジやばかった〜俺に怪我させるかなかなかじゃん?」
旭は頬につけられた切り傷を指差し、ヘラヘラと笑っていた。
「何で犯人を褒めてんだよ……。……ほら」
御影がカバンから絆創膏を一つ取り出し、旭に渡した。
「え!……ありがとう〜絆創膏常備してるとか有能じゃ〜ん!」
「当たり前だ」
「え?それって常備してるのが当たり前だって意味?それともみかちゃんが有能であるのが当たり前って意味(笑)?」
旭は先程の出来事が嘘のように、いつも通り御影にちょっかいをかける。それに呆れた顔をする御影。
「うるせぇ〜……ほら、そろそろ警察も動く。エンジンかけろ」
「あ!話逸らした〜ってことはみかちゃんは自分が有能って思ってるんですね〜!いや〜その通り!よっ!みかちゃん有能!」
旭は御影を煽てる発言をし、御影は静かに怒りをみせた。そして御影が無言で、旭の頭を軽く叩く。
「あだっ!」
「お前は俺をイラつかせる天才だな」
「えへ〜それほどでも!」
「褒めてねぇんだわ」
「……それにしても、ヒヤヒヤしたな〜……。みかちゃんが爆弾ぶん投げた時は焦ったわ(笑)」
「……そうでもしなきゃ、今こうして生きてないだろ」
「そうだね〜!助かったよ、ありがと!」
旭はそう言うとニコッと笑う。御影は旭の素直な感謝に少し照れくさそうな表情をし、そっぽを向いた。
「……まぁ、お前が居てくれたから、俺が爆弾を処理を出来たと言っても過言じゃない……ありがとな……」
御影が旭に珍しく、お礼を言った。それを聞いた旭は表情が明るくなり、嬉しそうに体を揺らした。そして、車のエンジンをかけ、出発する。
もうすっかり辺りは真っ暗になっている。そんな自然溢れる街並みを通っている最中、信号で停止したタイミングで旭は、気になっていたことを御影に問いかける。
「……ねぇ、みかちゃん……」
「ん……なんだ……?」
「みかちゃんが梶に言った……俺も復讐の為に探偵をしている……ってさ……本当?」
旭の問に御影はしばし沈黙した。そしてゆっくりと口を開く。
「……そうだよ」
「もしかして……日和さんの事件?」
「あぁ……」
「そっか〜……じゃあさ……今回の事件、みかちゃんは梶に何を感じた?」
「……今回は運良く被害者も加害者も助ける事が出来た。……梶は復讐には失敗したが、本当に欲しかった言葉が前田から聞くことが出来て、少しは……報われたと思う。……復讐は不幸しか生まないからな」
御影は少し暗い表情をしながら話した。
旭は御影の今の発言と御影自身の復讐心に、矛盾を感じた。
「……不幸になっても……みかちゃんは犯人に復讐したい?」
御影は旭の言葉に反応し、拳を握った。
「……俺は……日和の居ない今が……一番不幸だからな。どん底から下は無い。だから俺は犯人を見つけて復讐する。俺は……犯人を絶対に許さない。そこにどんな事情があろうとも。どんな手を使ってでも、犯人を殺す……」
御影は覚悟の目をしていた。
旭は続けて三年前の事件について、質問を投げかける。
「日和さんの事件って……三年前の渋谷爆破テロ事件だよね」
「……。あぁ……そうだ」
「……でもその犯人って……捕まった……よね。確か……臥龍蛇って言う犯罪組織の」
「臥龍蛇……そうだな。そいつらの何人かは捕まった。だが……俺が見た……俺が撃った犯人は……また捕まってない……」
「……俺が撃った犯人……」
三年前の事件を起こしたのは、臥龍蛇と呼ばれる犯罪組織。その残党が起こしたテロ事件のはずが、御影が目撃した犯人は捕まっていないという。
御影の衝撃的な発言に旭は、御影の言葉を小さく繰り返す事しか出来なかった。そして旭は黙って何か含みのある目を御影に向けた。
すると御影は話題を逸らす。
「俺の話はいいだろ。……今は梶がどうやって銃や爆弾を仕入れたのかが問題だ。ほら、青になったぞ」
「……うん」
――その約三十分後、御影と旭は福島県警本部に着いた――
「では、こちらでお話を聞かせて頂きます」
警察官に部屋へと案内され、二人は席につく。そして、警察官と対面する形で事情聴取が始まる。
「まず、この事件に関わった経緯を詳しく教えて頂けますか」
「はい、私達はお話した通り探偵をしています。被害者の一人、前田健士さんからのご依頼でこの件に関わる事になりました」
「なるほど……でも何故、警察に事前に連絡をしなかったんですか?」
「私は最初に警察への連絡を前田さんに促しましたが、前田さんは犯人に脅されていました。それに怯え、警察への通報が遅くなってしまいました。それは軽率な判断だと私も反省しております」
「……分かっているなら良いんです。このような事態はとても危険ですので、これからはくれぐれも警察への通報を最優先でお願いします」
「……はい。分かりました」
それからも淡々と御影は警察官の質問に答えていった。
すると御影が警察官に質問を投げかける。
「こちらからも質問よろしいですか?」
「なんでしょう?」
「犯人はどうやって、銃や爆弾を入手したんですか?」
「それは……答えしかねます」
「経緯だけでも大丈夫です。お願いします」
御影は異様に梶が爆弾や銃を入手した経緯が知りたがる。それは、三年前の事件の手がかりを少しでも見つけるためだった。御影は警察官に頭を下げた。
「……確認します。少々お待ち下さい」
御影の勢いに押され、警察官は渋々席を立った。部屋を出て行った警察官を見送ると、御影の必死な様子に旭は不思議に思い、問いかける。
「何で、そんなこと聞くの?」
「……ほんの少しでも手がかりがあるかも知れないだろ。爆弾の入手経路が分かれば、俺が追ってる犯人に辿り着くかもしれない……」
「……なるほどね」
その十分後扉が開き、先程の警察官が部屋に入って来た。
「お待たせしました。……やはり、詳しいことはお話出来ません。ですが、馬酔木さんが元警部の方とのことだったので、一部ならと許可が出ましたのでお話致します」
「ありがとうございます……!」
「犯人が銃や爆弾をどの様にして入手したかですが……犯人は掲示板で出会った人物達とやり取りし、入手した様です」
「その掲示板とは?犯人と話していた人物の特定は?」
御影は早口で警察官に質問を投げかける。
「すみません……お話出来るのはここまでです。こちらも捜査中ですので」
「そうですか……」
――そして一時間程の事情聴取を受け、御影と旭は解放された。部屋を出て、廊下かを歩いていると御影が立ち止まり、警察官の方を向いた――
「最後に一ついいですか?」
「えぇ……なんでしょうか?」
「犯人……梶の様子はどうですか?」
「しっかりと罪を認め、反省している様子でした。ですが、他にも殺人事件の犯人なので重い罪科せられると思います……」
「そう……ですか……」
「では、本日はありがとうございました。お気を付けてお帰り下さい」
「はい、ご迷惑をおかけしました。失礼します」
「失礼しまーす」
御影と旭は警察署を出て空を見ると、雲から月が顔を覗かせている。夜空に浮かぶ星々は事件を無事解決した二人を祝福しているように、キラキラと輝いていた。
車に戻り、御影は座席に座った。そしてホッと一息つく。
「……疲れたな……」
「……だね〜。この後どうする?今から帰るのは、さすがに大変だよね〜……」
「さすがにこっから、四時間の運転は体力的に無理だ……どっかの宿空いてないか見てみる」
「俺が調べとくよ。みかちゃんは少し休んでて?」
御影は旭の方を見て、少し驚いている。
「……なんだ、今日は気が利くな」
「今日はって何〜?俺はいつも気が利く良い奴っしょ〜!」
「あ〜はいはい、お前は良い奴だな〜」
御影はさっきの発言を撤回したいと思いつつ、適当に返事をした。
「テキトーすぎ(笑)……あ!こことかどう?空きがあれば当日宿泊OKだって!」
「ふ〜ん……それじゃあ、電話するか」
「じゃあさ、せっかく福島来たんだし明日ちょっと観光しながら帰ろうよ〜!」
「……おっさんをこき使うな……。体力が回復したらな〜……」
「いやいや〜みかちゃんはまだまだ若いっしょ?爆弾ぶん投げるくらいだし〜!」
「はいはい……(笑)……ほら、早く宿に連絡しろ」
「アイアイサー!」
――次回へ続く――




