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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
2章 タイムリミット

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胸懐

 ――旭が梶に向けて拳を振りかざす。御影は寸前で旭を止めた。その叫びに反応し、旭は梶の顔寸前で拳を止める。旭は我に返り、いつもの表情に戻った――


「……あ……ハハッ……。あっぶねぇ……ナイスみかちゃ〜ん……」


 旭は握った拳をゆっくりと下ろした。それを見た梶は苦笑いを浮かべながら、旭を煽る。


「な……何だ?……ひよったか?(笑)」


「……バーカ。んな訳あるか〜……。よっこいしょっと」


 旭は梶を引っ張り、前のめりになったところを背中に肘打ちした。

  

「……痛だ!」


「ハイ確保〜!」


 梶がうつ伏せに倒れた。旭は上に乗り、梶の両手を片手で押さえつけた。梶の抵抗も虚しく、叫ぶ事しか出来なくなった。


「ク……クソ!離せ!!!」


「もうすぐ警察が来る。観念しろ」


「……ふっ……アハハ!」


 御影のその言葉に梶は、突然吹っ切れた様に笑いだした。


「その爆弾……あと三分で爆発するぞ?」


「……は?」


 御影は梶の発言に驚き、恐る恐る爆弾のカバーを外し、残り時間を見る。


「マジかよ……!」


「これで……みんな終わりだな!」


 梶は勝ち誇った様に言った。

 御影は唇をかみしめる。だが、まだ諦めてはいなかった。

  

「クッ……前田さん、とりあえず高峯さんを解放してすぐに逃げてください!」


「え!?……でも……」


「いいから!早く!」


 御影は前田に叫び、逃げる様促した。

 自分が助からないかもしれない状況でも、御影が優先したものは依頼者とその恋人だった。

 

「わ、分かりました……!紗良!紗良!」


 前田が高峯に呼びかける。するとようやく、高峯が目を覚ました。目覚めた彼女を見て、少し安心した前田。


「良かった……!紗良!大丈夫か!」


「……け、健士……?来てくれた……」


 高峯はそう嬉しそうに微笑みながら、涙を流した。


「うん!ちょっと待ってて、今助けるから!」


 前田と御影は協力し、高峯が縛り付けられていたロープを解くことが出来た。すぐに前田は、爆弾が取り付けられていた椅子から彼女を離した。

 だが、ロープに繋がれていた動線が切れタイマーが高速で動き出す。


「ま……まずい!早く!」


「は、はい!行こう!」


「え……でも!」


「俺達は大丈夫です!行ってください!」


 御影は前田と高峯を先に逃がした。

 御影は何かを思いつき、覚悟を決めた目をしていた。

 

「みかちゃん……」


「お前……死ぬ気か?」


「旭……衝撃に備えろ」


「……OK」


 旭は御影が何をしようとしているのか察しがつき、近くにあった机を盾替わりにした。

 そして爆弾のタイマーは止まる事無く、高速で時を刻む。


 ――30――


 御影は急いで椅子ごと爆弾を持ち出した。

 

 ――20――

 

 教室のベランダに身を乗り出し、ベランダから思いっきり爆弾を投げた。


 ――10――


 御影が投げた爆発がスローモーションの様に宙を舞う。御影はすぐさま頭を手で覆い、しゃがみ込んだ。

 

 ――0――


挿絵(By みてみん)


 空中で爆弾は大きな音を立て爆発した。煙と共に椅子の破片が辺りを覆い尽くした。

  

「みかちゃん!!!」


 旭は御影の安否を心配し、大声で呼びかける。すると、ベランダから煙を切り御影が戻って来た。


「ゲホッ……ゲホッ……危なかった……」 


 旭は御影の無事を確認し、安堵した走って御影に飛びついた。

  

「みかちゃーん!良かった!」


「……苦しい〜……離れろ……。っておい!梶は!?」


「あ、やべ……」


 旭が振り返ると梶が逃げ出していた。すると、廊下の方から声が聞こえる。御影と旭は急いで廊下に出る。


「おい!爆弾は失敗したが……今度こそ……!ここでお前らを殺す!」


 梶は高峯を再度人質にとり、前田を脅している。


「やめろ!!!」


 御影はその光景を見て、大声で梶を制止する。


「やめねぇよ……お前らのせいで俺の計画めちゃくちゃだ……」


「梶……お前は何が目的なんだ」


「目的……目的か……。……復讐……。俺は前田達に復讐したいんだよ。俺の人生めちゃくちゃにしたお前らを許せない!中学ん時からずっとずっと……恨んできた。中学は不登校になって、高校は別になるようにした。それでも、許せなくて前田のSNSを見つけて……同じ大学入って……どう復讐してやろうか考えてたんだよ。そして決めた。一番幸せな時に地獄に叩き落としてやろうってさ。だから、矢野と甲本も殺した……。お前らに……俺の気持ちなんて分かんねぇだろ。俺が何でこんな事してるのか……!」


 梶は語り終わり、悲しみとも怒りともとれる表情を浮かべていた。それを聞いた御影は口を開く。


「俺には分かるぞ……。その気持ち……」


「……あ?」


 梶は振り返り御影の方を見る。そして御影はゆっくりと話し始める。


「お前は復讐の為に相手と自分を殺そうとしてるんだな。……俺もそうだ。俺は復讐の為に探偵をしている。俺もずっとずっとあの時が忘れられない……。犯人を絶対に見つけて……殺したいと思ってる……」

 

「……。お前も俺と同じって訳か……じゃあ、分かるよな?ここでこいつら殺して俺も死ぬ……。お前はそこでただ見ていればいい……」


「……残念だが、それは出来ない。……俺は仕事でここへ来た。依頼主は、前田さんだ。お前の言い分を聞き入れることは出来ない」


 御影のその言葉で、梶は残念そうに御影を見た。

 

「……そうか、それは残念だ」


「……でも……貴方には生きていて欲しい」


「はぁ……?」


 梶は御影の発言に意味が分からず、困惑した表情を見せた。


「……俺は会ってから貴方の様子を見ていた。貴方は前田さんに……何かを求めているんじゃないか?俺はお前の行動からそう思った。旭と戦っている時でさえ、前田さんのことを気にしている様子だった。なぁ、梶……。本当は何が言いたいんだ?」


 御影の言葉を聞き、黙り込んだ梶。

 すると梶はゆっくり前を向き直した後、前田を真っ直ぐに見つめ口を開いた。


「……俺は……お前が変わったのが嫌だったんだ……。幼なじみで優しかったお前が、中学に入ってからいじめっ子グループと一緒になって俺をいじめてた。中二になってから俺は不登校になった……。どこ行ったんだよ……優しかったお前はって……思った……。そして大学に入って会った時、中学の時のことなんか忘れてへらへらしてるお前が怖かった。どれが本当のお前か、俺は分からなかった。だからお前に痛い目を見させて俺の気持ちを分かって欲しかったんだ……。俺がどんな思いをしてたか……」

 

「梶……」


「前田……俺がこんな事して、お前はどう思った?俺の気持ち……分かるか……?」


 梶の思いに気ついた前田はゆっくりとしゃがみ、土下座をした。


「ごめん……梶……!俺は本当に馬鹿なことをした!いじめっ子グループに居たのはそこに居れば、俺がいじめられなくて済むという、安直な考えからいじめに加担してしまった……。お前が標的になった時……俺は止められなかった……。少しでも梶の味方をしてしまったら、俺までも被害が来るって思った……。本当にごめん……。……大学に入って、梶と会った時中学のことが蘇ったけど何とも無さそうに笑顔で話しかけてきてくれたから……許して貰えるてと思ってた。俺が……本当に馬鹿だった……!今日のことで梶がどんなに辛かったか、苦しかったか……助けて貰えなかった辛さが……俺にも身に染みて分かった……!本当に中学の時はごめんなさい!許してとは言わない!本当にごめんなさい!」


 前田は涙ながらに梶に謝った。これは前田の本心からの反省だった。それを聞いた梶はただただ、前田を見つめていた。

 すると梶は人質の高峯をゆっくりと腕から離した。

高峯はその場にへたりこんだ。


「……梶……」


「……あぁ……お前の本当の言葉が聞けて……良かった……。お前が本当のクズ野郎じゃなくて……良かった……。お前が変わってたら……ここで殺してるところだったわ……」


 梶は涙を流しながらに話した。その姿を見た前田も再び涙が溢れ出した。

 すると、階段から複数人の足音が聞こえてくる。


「遅れて大変申し訳ありません!」


 その足音の正体は警察官達だった。御影は、ホッと一息つく。

 そして警察官は刃物を持っている梶を見て、確保する。


「犯人確保。人質監禁及び爆発物取締罰則で梶秋宏、お前を現行犯逮捕する」


 警察官が梶に手錠をかけた。

 そして、解放された高峯が泣きながら前田に駆け寄り抱きついた。前田も彼女を抱き返す。

 梶は警察官に連行され、前田達の横を通り過ぎる瞬間に梶は一言、前田に送る。


「ごめん……前田……」


 梶は小さく呟くように謝った。その言葉を聞き、前田は梶の方を振り返る。梶の背中が小さく縮こまっていた。

 そうして梶と警察官の足音だけが、その空間に鳴り響いていた。辺りはもう真っ暗だ。

 そして前田と高峯も警察官に保護された。これで梶の復讐劇が幕を閉じたのだった。


――次回へ続く――


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