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真実と旅をしよう。  作者: 暁狐うきょう
2章 タイムリミット

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 銃弾を回避した旭と前田。旭は梶の暴走を止めに、御影と前田は椅子に縛り付けられている高峯を解放しに向かった。すると梶は再び旭に銃口を向け、発砲した。旭は寸前で躱す。弾丸は旭の髪の毛を掠めた。


「躊躇ないね〜……これが恨みの力?」


 旭は撃たれたにも関わらず、いつもと変わらぬ表情で余裕を見せていた。梶は旭の舐めた態度に少しずつ、苛立ち始める。

  

「そんな余裕でいられるのも……今のうちだ」


「ほ〜ん……強気じゃん」


 旭がそう呟いて、梶にゆっくりと近く。梶はまたしても銃口を向けた。狙いを定め集中する。

 だが旭は、間合いを詰め一瞬にして梶の手から銃を奪い取った。


「はっ!?」


 梶はあまりの速さに、驚きを隠せない。

 旭は奪い取った銃を遠くへ投げ、梶の届かない場所に投げ捨てた。


「こんな物使わないでさ〜……己の拳で恨みぶつけてみね?」


「……クソ……舐めやがって……!まぁいい……ぶっ飛ばす……!」


 梶は鋭い目付きで拳を握り、旭に襲いかかる。

 勢いよく振り下ろされた拳を旭は素手で受け止める。その拳を片手で受け止めた旭は、梶に微笑みかける。


「お!いいパンチ〜……。何か格闘技やってた?」


 梶は旭のまだ余裕そうな態度が気に食わず、舌打ちをする。そして再びパンチを繰り出す。だが、それも旭に流され梶は前によろける。その隙を見て旭は足をかけ、梶は転倒した。


「……イッ……テェ……」


「ほらほら〜……本気で来てよ。そのままじゃ、ここに居る全員殺すなんて出来ないよ?……俺がここでお前を制圧するから」


 旭は不敵な笑みを浮かべながら、梶を見下ろして煽った。夕暮れの光が旭の顔を不気味に照らした。

 梶はその光景に圧倒されるが、歯を食いしばり再び立ち上がった。

 

 ――その一方、御影と前田は高峯の救出に尽力していた――


「おい!紗良!紗良!」


 前田は高峯の頬を軽く叩きながら、呼びかける。だが、全く反応がない。


「……ちょっと失礼」


 御影は高峯の首に手を当て、脈を確認している。少し弱っている様子だが、脈はあることが分かった。

 

「……大丈夫です。多分、気絶しているだけだと思います」 

 

「よ、良かった……」


 前田は少し安心した様子。だが、御影はある物を見つける。

  

「……これ……もしやこのロープと動線は……繋がってるのか……?」


 それに気づいた瞬間、一気に緊張が走る。

  

「え……ほ、本当ですか……」


「……無理矢理外そうとしたら……爆発する……」


「ど、どうしますか……?」


「……素人が手を出したら危ない。最悪、ここにいる全員が死ぬ……。爆弾処理班を呼びます……」


 御影が電話をしようとしているのに気がついた梶は、御影の方を向き怒鳴る。


「おい!余計な事はするな!警察は呼ばせない!」


 そう言い御影の方に向かおうとする梶の前に、旭は立ちはだかる。


「おっと……行かせねぇよ?お前の相手は俺だ。みかちゃん、今のうちだよ」


「……助かる」


 御影が警察に電話をする為に、ベランダへ急いだ。その間、梶は先程より勢いが増して旭に攻撃する。


「クソ!どけ!!!」


「どかないよ。どいたら、三人に危険が及ぶからね」


 梶は旭に何度も攻撃しているが、旭はその攻撃を全てかわす。梶はだんだんと息切れを起こしている。

  

「……ハァハァ……クソ……何なんだお前……。俺の攻撃、全部かわしやがって……。あれか?かわす事しか出来ないのか?人を殴ったことねぇのか?」


 梶は旭を煽るように言った。その言葉に旭は呆れた様子で話す。


「お前馬鹿だね〜……。俺が素人相手にやり合ったら、大変なことになるから手加減してるんだよ?」


「はぁ?……何だお前本当……。俺の事舐め腐りすぎだろ……俺はな……いじめられてから、あいつを見返そうと努力して……ボクシングやってきてんだよ……!」


「ほぉ〜やっぱり!通りで、攻撃が的確だと思った!でも……残念。俺はそれを全部見切れるよ?」


「……お前は何でそんな余裕なんだよ。おかしいだろ!」


 梶の言葉に旭は一瞬、動きを止めた。

  

「……うん……そうだね。……俺はおかしい……。……俺の手は……」


 旭がゆっくりと自分の手を見て、小さな声でそう言った。

 

「ねぇ……お前の拳は何の為の拳?」


 顔を上げた旭は、突然意味不明な事を言った。


「……は?……意味分かんねぇ……。」


「じゃあ今、何の為に俺と戦ってんの?」


「……邪魔だから……」


「……そっか。そんなちっぽけな理由で拳を振るうんだね」


 旭の言葉に梶は腸が煮えくり返る。そして拳を握りしめた。

 

「……ちっぽけだと?……お前には分かんねぇよ!俺のこの気持ちが!!!どんなに俺が苦しかったか、辛かったか……」


 梶は旭に感情をぶつけた。怒りと悲しみに顔を歪めながら。それをただ旭は黙って見つめていた。

 

 すると御影が警察に連絡をし終わり、教室のベランダから現れる。だが、御影は暗い表情をしていた。それに気がついた前田は御影に問いかける。


「……馬酔木さん……ど、どうされました……?」


「……警察はすぐに来れるが……爆弾処理班が来れるのは最低でも一時間後……」


「そ、そんな……!」


「どう足掻いても……この爆弾が爆発することを回避出来ない……」


「じ、じゃあ……どうすれは……!」


「……俺達で何とかするしか……ない……」


 そう言った御影だが、手は震えていた。

 御影は()()()を思い出す。

爆弾によって愛する人が目の前から消えるあの光景を。   動悸が止まらない。その様子を前田は不安気に見つめる。

 椅子に絡まるロープを上手く外せない。視界が歪む。もうあの時のようにはさせないと、強く思いながら必死でロープを引き剥がそうとする。だが、上手く剥がせない。

 すると、その様子を見た旭が咄嗟に声をかける。


「みかちゃん!」


 御影はその声に反応し、旭の方を見る。


「大丈夫!俺達ならやれるよ!」


 御影はその言葉に何故だが、少し安心した。深呼吸をして呼吸を整える。


「……よし……。前田さん……そこ持っていて下さい」


「は、はい……!ここですね」


 御影は前田と協力し、椅子に巻き付けられているロープを慎重に引き剥がす。

 旭が視線を御影の方に移しているその瞬間、正面から刃物が向かって来る。それをギリギリでかわした旭。


「不意打ち〜……」


「チッ……今のはやったと思ったんだけどな……」

 

「……良いね〜……来いよ」


 旭は手を前に出し合図をした。

 その挑発に梶は苛立ち、刃物を旭に向けて振りかざす。旭はそれを巧みに避けつつ、タイミングをうかがう。そして梶が旭の腹部を狙い腕を前に突き出した瞬間、旭はその腕を掴み、そのまま背を向け背負い投げを食らわす。梶は地面に叩きつけられた。


「グッ……!」


 梶は歯を食いしばり、痛みに耐え反撃する。持っていた刃物を旭の顔面に向けて刺そうとした。その反撃に旭は少し反応が遅れ、刃物が頬をかすめる。旭はその腕を掴み、思いっきり握る。

 刃物が旭の頬をかすめた傷は軽い切り傷程度だが、頬からは血が流れた。旭は自分の頬を撫で、手に付いた血を見る。すると旭は何かのスイッチが入ったかのように、目つきが変わった。

 

「い、痛た……!痛だだ!!」


 旭の握る力が強すぎるあまり、梶の手から刃物が落ちた。旭は掴んだその腕を引っ張り、梶を無理矢理起こした。そして旭は拳を握る。

 すると遠目から見ていた御影は、旭の違和感に気がつく。今まで見たことのない旭のその目つきは、深い闇に呑まれた。その目は人を殺しかねない目。

 旭はその握った拳を梶の顔面に向け、振り下ろそうした瞬間、御影は叫ぶ。


「やめろ旭!殺すな!!!」  

 

――次回へ続く――

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