日記
――望月一護の母親を探すべく、御影と旭は手がかりを求め、一護の自宅へと向かう。こじんまりとしたアパートの階段を上がり、一護は家の鍵を取り出す――
「……どうぞ」
「ここか……お邪魔します」
「おっ邪魔しまーす!」
扉を開けると、薄暗く少し散らかった部屋が広がっていた。
「ご、ごめんなさい……汚くて」
「そんな事ないよ!俺の家だってめっちゃ汚いもん」
旭は一護に笑いかけ、部屋に踏み入れようとした瞬間……
「おい待て。私が先に行きます、犬飼さんと一護君はそこに居てください。私が呼んだら来てください」
御影は、すかさず二人を静止した。
「あ、うん……」
「えぇ〜なんで〜?」
「調査の邪魔になります。物を動かされたり、無くされては、たまったもんじゃありません」
「ちぇっ……」
旭は調査に参加出来ず不貞腐れている様子だが、御影は気にせず部屋へと入り、調査を始めた。黙々と部屋の様子を写真に収める。
一通り見た後、御影は少し埃を被った木製のタンスが気になり、足を止める。
「一護君、ちょっと来てくれ」
御影は一護を呼んだ。一護は不思議そうに御影の隣にやってきた。
御影はタンスを指さしながら、問いかける。
「このタンスの中見てもいいかい?」
「うん……いいよ」
御影がタンスを開けるとノートや写真など一護の母親の物が出てきた。
「……これはノートと写真か?」
御影は最初に写真に目をやる。その写真には一護とその両親が写っていた。
「これは君の両親?」
「うん、そうだよ……」
「そういえば……父親はどうしたんだ?」
「お父さんは前に出張に行ったっきり、戻って来なくて……お母さんに聞いても、何も話してくれないんだ……」
「そうか……すまない、辛い事を聞いて……」
御影は一護その言葉を聞き、気まずそうに謝った。
「大丈夫……僕、お父さんの事そんなに好きじゃなかったから……」
「そうなのか……お父さんはどんな人だった?」
「家にいる時、ずっとイライラしてた……ちょっとでも気に入らない事があったらお母さんや僕に怒ってきて……」
「なるほど……父親も何か関係があるのかも……」
御影は一護の話を聞き終え、次にノートに目を通す。
最初の方は普通の日記の様だった。だが、日にちが飛んである日の日記にはこう書かれていた。
三月十三日
興信所で調べたらやっぱり浮気してた。しかも、キャバ嬢と。もう私ダメみたい。あの人、私達の貯金も持ってっちゃった。弁護士を雇うお金もない。これから一護とどうやって暮らしていけばいいの?
三月二十六日
ある人からキャバクラの仕事をしてみないかと誘われた。キャバ嬢なんてあの事思い出すから嫌だな。でも、お金もないしやってみるようかな。すごく怖いな。それに一護を一人にさせてしまう。
四月三十日
キャバクラで働いて一ヶ月、だんだん慣れてきた。けど、まだ全然稼げない。これじゃあ、一護に辛い思いさせてしまう。もっと頑張らないと。
五月二十七日
もっと稼げる仕事があるみたい。同じオーナーの店でホステスをしてみないかと言われた。お金が稼げるなら何でもする。
――ここで日記は途切れていた――
「なるほど。一護君のお母さん、望月 綾華さんはキャバクラで働きながら掛け持ちで、別店舗のホステスもしていた……有力な情報だな」
御影は日記をテーブルに置き、外を眺めながら写真やメモを見みて情報の整理をしている。
「ほぉ〜ん。にしても一護のお父さん言っちゃ悪ぃけど、とんでもないゲスだな〜ゲスの極みだわ〜……」
背後から声がし、御影が驚き振り向く。
すると、いつの間にか部屋に上がり込んでいた旭が、日記を見てそう言った。
「あ、おい!……勝手に上がり込まれると困ります」
「え?でも、もう大体は見終わったんすよね?」
御影は慌てて旭を追い返そうとするが、あらかた調べ終えた為、仕方なく旭をそのままにすることにした。
「はぁ……そうですね。……それに、これ以上居座っては一護君の迷惑になる」
御影は一護の方に向き、これからの事を説明し始める。
「一護君、今日はお邪魔しました。お陰でお母さんの手がかりを掴めた。これから本格的にお母さんを捜索していく。一護君は、これから来る児童養護施設の職員さんと共に施設に行き、一時的に保護してもらう形になる。……急で申し訳ないが、身支度を整えてくれるかい」
「うん、分かった……」
「お母さんは俺が必ず見つける、約束する。それまで慣れない環境での生活になってしまう。もし、何かあればすぐにここに連絡してくれ」
御影は、不安そうに俯く一護の肩にそっと手を置き、微笑んだ。そして、紙に書いた連絡先を一護に渡した。
「あ!じゃあじゃあ一護、俺の連絡先も渡すね!気軽に連絡ちょーだいね!」
そう言い旭も一護に連絡先を渡した。一護は安心し、笑みを零した。
「あ、ありがとう……!」
「よし!じゃあ、一護!俺も身支度の手伝いするよ〜!あと、部屋綺麗にしていった方が帰ってきたお母さん、喜ぶんじゃね〜?」
「……たしかに!……じゃあ旭にぃちゃん、手伝ってくれる?」
「おう!旭にぃちゃんに任せなさーい!……っと言うことで馬酔木さんも手伝って?」
旭は御影の方を向き、ニコッと笑いかける。
「……なんで私まで手伝うんです?手伝うと言ったのは、犬飼さんでしょう?それに私はこの件をまとめて、すぐにでも調査を始めたいんですが……」
御影は少し早口でそう言った。
その顔をじっと見つめ、旭は口を尖らせる。
「そっすけど〜、一緒にやった方が早く事が進むでしょ?……ね?お願いしますよ〜!」
旭は御影の肩に両手を置きながら、お願いをする。
「はぁ……分かりました」
御影は根負けし、掃除を手伝うことにした。
その言葉を聞いた旭は嬉しそうに肩を回し、気合いを入れた。
「うっし!やるぞ〜!えいえいおー!」
「おー!」
――そうして一時間後、三人は身支度と部屋の掃除をやり遂げた。一護はその後、施設の職員と共に施設へと向かった。 一護を送り出した後、御影と旭は探偵事務所へと戻って来た。辺りはもう薄暗くなっていた――
「……よし、じゃあ手がかりをまとめるか……」
御影は一護の話と自宅から得られた手がかりを、PCにまとめていった。
「……名前は望月綾華。日記によると、ある男からキャバクラで働かないかと誘われた。その男は黒の服にサングラスをかけていた……?そして綾華さんはキャバクラだけでなく、別店舗でホステスもしていた……」
その様子を横から観察している旭。
「う〜ん?……まぁ、とりあえずここら辺のキャバクラのホームページで、この写真と同じ顔の人探します?」
「……そうですね……じゃあそれは犬飼さんに任せます。私は別に気になる事があるので……」
「気になる事……?ってなんすか?」
「終わってから話します。おしゃべりの前に手を動かしてください」
「は〜い……厳しい〜……」
旭はソファに座り、スマホでここら一帯のキャバクラの情報を調べていく。
十分後、旭は気になるものを発見した。
「あぁ!ビンゴ!ほらほらこれ見て!」
旭は御影にスマホの画面を見せた。
その画面には、一護の家で見つけた写真と似た顔の女性が写っている。濃い化粧をしていて雰囲気は違うが、望月綾華だ。
「これは……綾華さんに似ているな」
「でっしょ〜!じゃあ、早速ここのキャバクラに行きましょう!」
旭はソファから勢いよく立ち上がる。
その様子を睨みつける御影は、旭に問いかける。
「……まさか普通に店に行く訳じゃないですよね?」
「え?それじゃなかったらどうすんの?」
「はぁ……」
御影は思わずため息をついてしまう。
そして御影は旭の方に向かうと、ぐわっと旭の顔に近き、指をさしながら勢いよく話す。
「まずは、張り込みからです。本当にそのキャバクラに綾華は居るのか、居るなら綾華さんの動きを把握するそのために張り込みをします!ある程度、綾華さんについて分かってから店に潜入します」
「な、なるほど……」
御影のその気迫に少し動揺する旭。
「まぁ……とりあえず今日は、張り込みの準備して明日に備えましょうか」
「わっかりました〜!」
――次回へ続く――




