懺悔
――十四時八分――
御影、旭、前田の三人は車で前田の出身中学校へと向かう。だが目的地には着くには、片道約四時間という長い道のりだ。車に乗り込んだ三人に緊張が走る。
そして探偵事務所から車を走らせて約一時間が経過した。一時間が過ぎた辺りから、段々と気が抜けてきた御影と旭。
「ねぇ〜……もっと飛ばせない?」
「……法定速度。これでも急いでる方だ」
「う〜ん……遠いな〜……。しかもさ〜……楽しい話も出来る空気じゃないし、寝ようにも眠れないや……」
「さすがのお前でも、そこまで神経図太い訳じゃないんだな……」
「もう〜!みかちゃんは俺を馬鹿にしすぎ!」
御影と旭が緊張感の無い会話をしていると、前田の腹が鳴った。
「す、すみません……!」
「いや、大丈夫です。私もまだご飯を食べていないので、次のパーキングエリアに寄りましょう」
「すみません……ありがとうございます……」
車を走らせ、一番近くにあるパーキングエリアに到着した。そこで三人は弁当や飲み物を買い、一息つくことにした。
「……恋人が殺されそうって時でも、腹は空くんですね……」
皮肉にも腹は減る。前田は俯きながらそう呟いた。
御影はそんな前田の様子を見て、優しく慰める。
「……それが生きているってことです。どんな状況でも、人は生きようとする為に腹が減るんです。……今はしっかり食べて、少し気持ちを落ち着かせて万全な状態で彼女さんを迎えに行きましょう。お腹を空かせた状態で行っても……彼女さんも前田さん自身も守れませんから」
前田は御影の言葉に少し励まされ、初めて笑顔をこぼした。そして前田は御影にお礼を述べる。
「……はい。ありがとうございます。少し元気出ました」
「……それは良かった」
すると旭が買った物を手に車に戻ってくる。
「は〜い、たっだいま〜!はいこれ、前田さんのお弁当とお茶!」
「ありがとうございます……!」
旭が前田にコンビニ弁当と緑茶を手渡した。そして御影にも同じものを渡す。
「ほい、みかちゃんの!」
「あぁ、ありがとう」
「あ、これ見て見て!これ期間限定のやつ!めっちゃ美味そうじゃない?」
旭はいつものように明るい声色で御影に話しかける。旭の手には期間限定と書かれたスナック菓子が握られていた。御影はそれを横目に見た。
「あぁ〜……確かに」
御影はあまり興味がなさそうに、コンビニ弁当の包装をはがす。
「あ〜あんまりこうゆうの、そそられないタイプ〜?」
旭が御影の反応に口を尖らす。
「そうゆう訳じゃない……。時と場合ってのがあるだろ……」
旭のテンションの高さに、ついていけていない御影。
御影の言葉に旭も同じ事を思うが、旭なりに二人の気持ちを落ち着かせようとしているのだ。
「まぁそうだけど〜……じゃあ全部食べちゃお〜」
旭がそういいスナック菓子の包装を開ける。
すると御影がチラッと旭の持っているスナック菓子を見た。それを見た旭は御影を茶化す。
「あ!やっぱ食べたいんじゃん!」
「べ、別に……食べたい訳じゃない」
御影は誤魔化すようにそう言ったが、旭がニコニコしながら御影の方を見ている。
「もう〜!遠慮しなくていいんだよ?……はい、あ〜ん!」
旭が御影の前にスナック菓子を持ってきて食べさせようとしたが、御影が引き攣った顔をしながらスナック菓子だけを奪い取った。
「あ!取られた……」
旭は残念そうな顔をした。そんな旭の様子を怪訝な表情で見つめる。
「……誰がアラサーのおっさんに、あーんしたがる奴がいるか。……ん、美味いな……」
「お二人は、仲がいいんですね……」
するとその光景を見ていた前田は苦笑いしながらそう言った。前田の言葉に御影は不服そうな顔をした。
「……仲良くなんかないですよ。こんな奴……」
旭は御影の言葉に心外と言わんばかりの表情で、御影を見る。
「こんな奴ってどんな奴!?俺たち仲良しでしょ!」
「あ〜はいはい、仲良し〜……」
御影は呆れたように、棒読みでそう言った。
三十分程の休憩を挟む。そのおかげで前田は少し、気持ちを落ち着ける事が出来た。
だが、そんな彼らにKからメッセージが届く。落ち着いた気持ちから一変、再び身体が強ばる。前田はメッセージを開くと、動画とURLが添付されていた。
「やぁKだよ!お馬鹿な彼氏くんは、どこまで謎が解けたかな?ここで大ヒント!URLをクリック!」
陽気なKの声が車内に響く。前田は、添付されていたURLを恐る恐るタップする。どうやらそのURLは、ある事件に関するニュース記事のようだ。その記事を見た前田は青ざめる。
その様子を見た旭は、心配そうに問いかける。
「前田さん、大丈夫ですか?顔、めっちゃ青いですけど……」
「……梶が……これを」
震えた声でそう呟いた前田の手は、小刻みに震えていた。そのニュース記事には矢野 普、甲本 拓人という男二人が、殺害されたことに関してのニュース記事だった。
「これを見てください……送られてきたURLです……」
「……このニュース記事がどうしたんですか?」
旭はスマホを受け取り、ニュース記事を眺めながら問いかける。すると前田は、絞り出すように言う。
「……この殺害された……二人……俺の中学時代の同級生……なんです」
その言葉に御影と旭は目を丸くする。
「つまり……Kとも同級生……でも何故、この記事を前田さんに送ったんだ……」
「う〜ん、何でだ〜?」
頭を悩ませる二人。拳を握り締め、震えている前田を見て、御影は前田に問いかける。
「前田さん……Kとの関係で、隠していることまだありませんか?」
前田は御影の言葉に体を跳ね上げる。前田は、ゆっくりと口を開く。
「……実は、中学時代……その殺された奴らと一緒になって、梶を……虐めていました……」
前田の話を聞いて二人は、何故Kがこんなことをしたのか、少しだけ納得した。これはいじめの復讐。
「なるほど……私達は別に責めたりはしません。ですが、これは貴方が仕出かした結果です。立ち向かわなければならない」
「……はい……分かりました」
前田は弱々しい声でそう言った。
そして車を走らせ二時間が過ぎ、福島県に入った。高速道路を降りてから三十分後、自然溢れる道のりを走っていると坂に差し掛かった。
そこには立ち入り禁止という看板が立てかけられていた。上を見ると少し道が続いていてその先に開けた開けた場所があった。
「……この上を登った先に、学校があります」
「……やっと着いたか……」
御影は約四時間と言う長い道のりで、もう既に疲れが出てきた。そんな御影とは裏腹に旭は、活気が溢れていた。
「やっとか〜!よっしゃ行こう!」
そう言って車を降りようとする旭を御影は、パーカーのフードを引っ張り制止する。
「待て待て、まず警察に連絡を入れてからだ。そして到着するまで少し待機する」
「う〜ん……分かった……」
御影は警察に電話をかける。すぐに警察が出て、御影は今の状況を事細かく伝えた。
数分後、電話を切り御影は準備を始める。
「……とりあえず警察には、犯人に警察が来た事が分からないように、赤色灯やサイレンを鳴らさずに来て欲しいと伝えた」
「だね、ウーウー鳴って来たら、Kが激高して彼女さん殺すってなったら大変だからね」
「あぁ……。だが、ここまで来るのに少し時間がかかるらしい」
「マジか……!」
「……ここで待っていては、中の状況が分からない。……こっそり潜入するぞ」
「OK〜……!でも、この先登ったら校舎から丸見えじゃね?」
「そうだな……。何処から抜け道的なものがあればいいんだが……」
御影と旭が頭を悩ませていると前田が何か思い出し、二人に提案する。
「そういえば、ここを登る途中に右の茂みから校舎に忍び込める所があるので、そこから入るのはどうでしょう……?」
「本当ですか。よし、そこから校舎に入りましょう。この事、警察にも伝えておきます」
「分かりました」
「よっし!気合い入れて行くぞ〜……!」
御影が再度警察に連絡し、裏道から来るように伝えた。
「……これでよし……。あともし、Kが居る場所を見つけたら前田さん、貴方が先に行ってください。私たちが居るというのを相手に悟らせるのを少しでも遅れさせます」
「わ、分かりました……」
「あと……これを」
御影は車に積んでいた、アタッシュケースを前田に手渡す。
「これは……?」
「何も持っていないと、手ぶらで来たと思われて高峯さんが殺されてしまうかもしれない。……けど、五百万なんてすぐに用意出来る訳ない。だから、苦肉の策です。上の方は本物ですが、下は金に見せかけた紙切れです。これで少しは誤魔化せるでしょう」
「……な、なるほど」
「さぁ、行きましょう」
三人は坂の下に車を停め、坂を途中まで登り右手に獣道の様になっている場所を見つけた。その道を進み、校舎の裏口に辿り着いた。
「……ゆっくり開けるぞ」
「OK〜……」
「はい、お願いします……」
――高峯紗良が殺されるまで谿九j繧上★縺――
――次回へ続く――




