暗号
――Kと名乗る人物が送ってきた動画で、Kはある提案をしてきた――
「そういえば、まだ居場所を伝えていなかったね。あ!でも、普通に居場所を伝えるのは面白くない。う〜ん……じゃあゲームをしよう!ゲームの内容は、今から24時間以内に私の居場所を見つけ出し、彼氏くんが一人でここに来れたら彼女を無事に解放しよう!動画はあと二回送るよ!さぁ!ゲームスタート!」
Kの口調は、まるで楽しんでいるの様な口振りだ。
そこで動画が終わり、少しの沈黙の後、御影は静かに苛立つ。
「……ゲーム感覚で楽しんでるな……」
「こいつ……やべぇな〜……」
「許せない……!必ず見つけ出す!」
前田は拳を強く握りしめ、御影の方を真剣に見つめ言う。
「馬酔木さん……お願いです!Kの居場所を見つけてください!」
「……分かりました。とりあえず、Kの居場所を見つけ次第警察に通報する……」
そう言った御影だが、あまり気分が良くない様子。
その様子が旭は気になり横目で御影を見つめていた。
「それじゃあ、始めましょうか……。前田さん、この動画を私のPCに送ってもいいですか?」
「はい、分かりました……!」
早速、誘拐された高峯の捜索に取り掛かる。
御影は前田のスマホを受け取り、デスクのPCに動画を転送した。転送した動画開き、手がかりを探る。前田と旭もデスクに移動し、動画を再度確認する。
送られてきた動画の背景、暗くハッキリとは分からないが廃墟に見えた。
「……ここは廃墟か……。何の建物だ……?どこの廃墟か分かればすぐ分かりそうだな……」
「……う〜ん……なんか廃墟分かるサイトみたいなのないの?」
「馬鹿か……そんなものある訳ないだろ……」
御影は呆れたようにそう言った。
するとスマホで動画を見ていた前田が口を開く。
「……なんか見た事ある様な……?」
「本当ですか……!思い出せますか?」
「いや……気のせいかも知れません……」
「そうですか……。何か思い出したら、すぐに言ってください」
「分かりました……」
「……ん?」
御影は動画を再生して、その動画に何か違和感がある様に思えた。
「……どうしたの?」
「いや……何でもない」
御影はこの動画に確かに違和感があったが、それをどう言葉にしていいか分からず、旭には伝えなかった。
――その後、一時間ほど経ったがあまり収穫はなかった。分かったことといえば、Kはある廃墟で高峯を拉致監禁しているということだけだ――
「……これだけじゃあ、手がかりが少なすぎる……」
「……動画は残り二回か……。どのタイミングで送ってくるんだ……」
「……う〜ん……ねぇ、この廃墟さ……学校じゃない?」
動画を見ていた旭がそう呟いた。それに驚いた御影は旭に問いかける。
「……学校?」
「暗くてよく見えないけど、動画の一部を加工して明るさを変えると……ほら、カーテンが閉まってるけど窓の形とか……学校に見えない?」
旭が御影に加工した写真を見せる。それを見た御影は旭の意見に納得した。
「確かに……これは学校だな……!」
「……学校……」
すると突然、また前田のスマホが鳴った。スマホを見ると新しい動画が添付されていた。その動画を御影のPCに転送し三人は動画を確認する。
「やぁ、Kだよ!俺がどこに居るか分かったかな?分かんないか!馬鹿だもんね!そんな頭の悪い彼氏くんにヒントをあげる!ここ書かれている暗号がヒントだよ!さぁ、早く見つけてあげないと彼女さん死んじゃうよ〜!それじゃあ、またね〜!」
Kは前田を挑発する様な言い方で特定を急かした。Kから送られてきた動画の背景にはこう書かれていた。
「一-五 七-一 一-四 十-三 八-三 九-三 三-一 五-一 一-二 七-三 二-三 一-二 十-三 一-三 二-四 九-五」
これがKからのヒントだ。
「なんだ……このヒント……。この暗号を解けば、Kの居場所が分かるのか……?」
御影は増々頭を悩ませた。すると旭が何かに気がついた。
「……ねぇねぇ!やっぱりここ学校だよ!ヒントが書かれてるやつ、黒板じゃん!」
旭の言葉に御影は驚き、動画を凝視する。
「え……?……本当だ……!……暗号を気にしすぎて、そこに気がつかなかった……」
いつもは鋭い洞察力を持つ御影だが、今日はいつもと違う。視野が狭いように思えた。そのことが気になっていた旭は御影に問いかける。
「……ねぇ、みかちゃん……」
「……あ?なんだ……?」
「いつものみかちゃんなら、これくらいすぐに気づきそうなのになんか……今日はちょっと違うね。本当に大丈夫?」
「……気のせいだろ……。俺はいつも通りだ」
旭はやはり、いつもとは違う御影の雰囲気から、まだ今朝の夢を引きずっているんだと察した。
「俺の事はどうでもいい。……まずKがいる場所が、学校だと確定した。とりあえず、廃墟となっている学校を調べる。それは旭にお願いする。俺は暗号を解く事に集中する」
「分かった……」
前田は学校と言う言葉を聞いてから、落ち着かない様子で俯き黙っていた。
そして、御影は暗号を。旭は場所の特定に取り掛かる。
「う〜ん……この辺で廃墟になった学校ってあったかな?」
「……もしかしたら東京じゃないかもな……」
「うわ……マジか……だったらタチ悪いな〜……」
旭はKのいる場所が、どの学校なのか特定するのに苦戦していた。
御影はホワイトボードを引っ張り出してきて、暗号を
書き写す。暗号、場所の特定、動画の謎の違和感。考えることが多く、あっという間に一時間が過ぎた。
「不味いな……早く解かなければ……時間が惜しい……」
御影は焦りからか、少々手こずっている様だった。
「だぁー!……これだけじゃ、どこの学校かなんてわっかんねぇよ!」
旭も中々場所の特定が出来ない様だ。ソファで座りながら、体を伸ばした。すると御影に体を向ける。
「ねぇ〜みかちゃん!」
「……何だよ……?」
「役割交代しない?」
そう言うと旭はホワイトボードの前に立ち、マーカーペンを握った。
「いいけど……お前解けるのかよ……」
「やってみなきゃ、分かんないだろ〜……う〜ん……」
旭はペンを顎に当て、頭を悩ます。この数字の羅列は、何を表しているのか。それさえ分かれば、謎は解けそうだ。
「何かの表?かと思ったんだが、それが何なのかがまだ分からなくて」
「なるほど……確かに表の配列の数字かもね……」
「あぁ……これがKの居場所を示してるなら、早く解かなければ……」
「う〜ん……」
旭はホワイトボードの数字を見ながら、考え込んだ。
「これさ……文章っぽくね?」
「はぁ?文章?」
「だって、座標とか表すならこんな書き方しなくない?同じ数字の所あるし」
「……それもそうだな……じゃあ、これはKからのメッセージ……」
「多分そうじゃないかな。よし!あいうえお表に当てはめてみよう!」
旭の言葉を信じ、御影はホワイトボードの文字列にあいうえお表を当てはめてみる。
そして全て当てはめ終えると、旭の言う通りになった。二人はホワイトボードの文字を読み上げる。
「お前を許さない。報いを受けろ」
御影と旭は声を合わせて言う。その文章の異質さに、二人は黙って前田の方を見た。
前田は暗い表情で小刻みに震えていた。それに気がついた御影はすかさず、前田の横に行きフォローを入れる。
「す、すみません……この暗号は単なるイタズラだと思いますし、あまりお気になさらずに」
「は、はい……そうですよね……イタズラ……ですよね」
御影の慰めも虚しく、前田は暗い表情のままだ。
――高峯紗良が殺されるまで残り22時間――
――次回へ続く――




