表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百人転生~彼の者たちは異世界でそれぞれの道を往く~  作者: 猫宮いたな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/13

重要な章に入る前のサブストーリーを消費する自由時間


「あんた、確か水魔法の適正あるんだっけ」


 ある日、日課の魔法訓練をしていたら二階から身を乗り出して姉さんが話しかけてきた。


「水魔法?」


「そう言ってるでしょ」


「適正あるよ」


「そ……」


 そう言うと窓から飛び降り、地面に降り立つ瞬間に水魔法を足元に展開した。水魔法で作り出した水に入ることで落下の衝撃を逃したのだ。


「私も水魔法の適正あるし、たまには教えてあげるよ」


 姉さんは水、火、雷の魔法を扱え、魔法の練度は十歳にも満たない歳で王都から魔法師としての招集が来るほどだ。

 異例中の異例、過去類を見ないほどの天才、それがアレティナという少女なのだ。


「いつも見てたけど、あんた魔法の維持が苦手でしょ」


「うん、どうしてもすぐに形が崩れちゃうんだ」


 あの日から魔法の訓練を続け、各属性の【弾丸】ぐらいなら発動できるようになってきたがそれ以上の槍や剣の形成はまだできない。

 原因は魔法の形成と維持ができないから。


 原因は分かっていても解決策がわからない。

 

「ふーん、ひとまず魔法使ってみな」


 姉さんに言われるまま魔法を発動してみる。

 手のひらから水が生まれ、球体に形成する。


 しかし、数秒もすれば形が崩れ地面にバチャンと落ちる。


「じゃ、次私の魔法みてて」


 姉さんは指先から今ボクが発動したのと同じくらいの水の球を作り出した。

 水が流れる音が聞こえる。それだけじゃない、水が外から内へ渦を巻いている。水が乱反射して光を放ち真っ白の水球を作り出している。


「川の水は上流から下流へ、下流から海へ、海から雨となりまた上流へ。水は常に動き続けているんだよ。魔法も同じだよ、水魔法は流れ【渦】を意識しな」


 姉さんは説明を続ける。


「水の球でもそれ以外の魔術でもそれは同じ。まずは魔法を発動して水を作ってみる、その後水を操作する。魔法の維持はその後だ、ミリヤは段階を飛ばしているんだよ。……ま、教えてくれる存在がいないとこうなるのも仕方ないか」


「姉さんは教えてくれないの?」


「私は教えるのに向いていないしそもそも人に魔法を教えることが出来るのは限られてるの、私にできるのは私の先生にあんたを見てやってって頼むことぐらいだよ」


 そう言って、ボクの頭をなでて姉さんは自分の練習に入った。

 姉さんは右手で水魔法を、左手で雷魔法を放ち、空中にある水の球に電撃を放ち放電させたりしている。

 二つの魔法の同時使用による遠距離攻撃。


 水魔法の攻撃を避けても、雷と水の融合による放電攻撃が襲い掛かる。

 まだ実戦経験はないが分かる、姉さんの魔法や魔術はかなり強力であると。姉さんに負けないようにボクも頑張らないと。


「魔法の生成はもうできる。じゃあ次は操作だ……姉さんまではまだ全然遠いな」


 バケツに魔法で作り出した水をためて、操作の練習を始める。

 まずはバケツの中で渦を作ってみる……渦はできるがまだまだだ。

 次に水を持ち上げてみる……拳一つ分ぐらいしか浮かない。

 

 同じ動きを何度も何度も繰り返して少しづつ、ほんの少しづつできる事を増やしていく。姉さんみたいに魔法が使えるのはどれだけ先か分からないけれど今は我慢だ。

 塵も積もれば山となるだ。小さな成果の積み重ねで大きな成果を残すんだ。


 太陽が昇って、沈んで今度は月が昇る。

 魔力が無くなるまで、キリがいいところまで、と決めていたのにやめるタイミングを完全になくし、すこし困り始めた頃だ。


【雷の弾丸】


 背中に姉さんの雷魔法が直撃した。

 バリバリと背中を裂かれるような痛みが走った。


「あれ、威力大分下げたのに……」


 全身が痺れ、体の自由が効かない。そのままボクは気を失った。

 夜ご飯の時間だよと教えようとしてイタズラ感覚で軽く放った魔法は、ボクの疲労しきった体にクリーンヒットしたらしい。


***


 六歳になった。一年の魔法の特訓のおかげでボクは三つの基礎魔法をほぼ完璧に扱えるようになり、最近では魔術への応用の練習をしている。


 弾丸、剣、槍、矢の四つの魔術は今じゃもう詠唱をなくても発動ができる。この一年で分かったのが、この世界の魔術に置いて詠唱は必須の要素ではないらしい。


 魔法の操作がある程度こなせる人なら詠唱によるサポートが無くても魔術の発動は行え、詠唱は火力の底上げ用として使うぐらいだ。

 いつかに推察した、「詠唱は目に見えない魔法をイメージしやすくする」と言うのはあながち間違いじゃないんだろう。


 つまり、詠唱を変えれば他の魔法も発動できるんじゃないだろうか。例えば、弾丸を機関銃のように連発したり、拡散弾のように広範囲攻撃を発動したり、大砲のように巨大な一発をぶつけたり。

 ものは試しだ。やってみるか。


「水の弾丸……絶えない流水のように……【水流連弾】」


 あ……やっべ。 


 やらかしてしまった……試しに発動してみた魔法が想像以上の威力で、想定以上の成果を残してしまった。

 家を囲う石壁を魔術によって砂に変えてしまった。


 現代の工事現場でも聞かないぐらいの超轟音が響き、石を粉々に砕いてしまったせいで、父さんと母さん、姉さんまで何事かと家から飛び出してきた。


「これ、ミリヤがやったの?」


「え、あ……うん」


 何も言わず、父さんが近づいてくる。

 怒られる、叩かれるなんて思って思わず目を閉じる。


 ただ、それは杞憂に終わった。

 大きく温かい手のひらでボクの頭をワシワシと撫でくれた。


「すごいじゃないか! いつの間にそんなことできることになったんだ⁉」


 大袈裟なぐらいに自分事のように喜んで、ハッスルしている。


「ミリヤ、あんたは魔法の練習をして何になりたいの」


 姉さんに聞かれた。

 この世界において魔法を使う場面なんて限られている。

 国の兵士かギルド加入している魔法使いか、日常生活じゃ魔石を使えばいい訳だし、わざわざ魔力を消費してまで魔法を使う必要はない。


 魔法の適正がある者は魔法の暴発を防ぐために、魔法の訓練をすることは義務となっているが、魔法制御ができるようになればあとは魔法の訓練は任意になる。兵士や魔法使いになりたいなら勝手に練習してください。というスタンス。


 つまり、姉さんからしてみればボクは義務を終えたのに魔法の訓練を続ける兵士か魔法使い希望者に見える訳だ。


「ボクは、いつか旅に出たい。あの山の向こう王都の向こうに何があるのかこの目で見てみたいです!」


「そ、なら私の師匠の元に行きなさい、いいよね父さん、母さん」


「ミリヤがそれを求めているのならオレ達はミリヤの考えを尊重しよう」


 ボクの夢を家族のみんなは尊重し、応援してくれるといった。

 それが本当にうれしくて、ポカポカと心が温かくなる。


「ボクにその師匠さんを紹介してください!」


「分かった。ただ一度師匠の元に行けばしばらくはここには戻れない。やり残したことがあるのなら今の内に終わらせておきなさい。準備ができたら教えて」


「うん、わかった」


 やり残したことか……ユフィとの約束もまだだし、他にも色々あるだろうなよく考えておこう。

 ゲームのストーリー進行前の自由時間みたいな事なんだろうな。

 サブストーリーを消化したりレベリングするための時間か。


***

 

 自分の部屋の壁に文字の敷き詰められた紙を張り付ける。

 そこに書かれていたのはやりたい事リスト。


 一つ、ユフィと沢山のマカロンを食べに行く。

 一つ、母さんに料理を教えてもらう。

 一つ、姉さんに魔法の訓練をつけてもらう。

 一つ、父さんと戦闘訓練をする。


 父さんは聞いた話によれば元王国騎士団の団員だったらしい。

 とはいっても最初の数年で怪我で引退したらしいが。

 実力だけでいえば父さんもちゃんと強い。


 これから先、旅に出るとなったら魔法だけじゃこの先壁にぶつかるだろうな。近接戦闘と言う壁に……。


 魔法の強みは近接戦闘じゃ出せない爆発的な火力の高さ。

 逆に魔法の弱点は、近接戦闘においての使いにくさ。


 戦闘で魔法は基本的に使えない。威力が全く足りないから。

 ただ、魔術を使うためにはほんの一瞬の隙が生まれる。

 一秒一コンマが命取りの近接戦においてその隙は生死を分ける。


 ボク一人でも戦えるように、近接戦闘はできるようになっておきたい。姉さんの師匠の元に行くまでにせめて基礎は学びたい、そう思った。


「まずは、ユフィとマカロンを食べに行こうかな」


 これを終えた後は姉さんの師匠の元で修行して、放火後のみんなとまた再会を喜んで、その後……最後はオレ達をこの世界に引き込んだ野郎を……


 ――殺す

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ