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百人転生~彼の者たちは異世界でそれぞれの道を往く~  作者: 猫宮いたな


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近接戦と魔法(3)


「ミリヤは、魔法紙で何をしようと思っているの?」


 母さんと共に庭で魔法紙を広げる。

 一枚の大きさはA4サイズぐらい。

 よく見れば、ほんのりと魔力を発しているのが見える。


「魔法紙を使って、父さんを驚かせてみようかなって。だから魔法紙と魔法陣について教えて欲しいの」


 ボクが首を傾げて可愛らしく答えたら、母さんが指先に魔力を込めて魔法紙に紋様を描いていく。

 魔法紙に描かれたそれは、さっきより強い光を放っている。


「ミリヤ、ここに魔力を込めてみて」


 言われるがまま、魔力を流す。

 すると、バチバチと音を立てて雷が作り出された。

 

「この雷を他の魔法と同じ要領で動かしてみな」


「分かった……【魔術:雷の槍】」


 母さんのアドバイス通り、魔法を動かす。

 風と水は渦を描くように物体を維持する。


 それぞれの魔法には維持にコツがいる。

 雷のコツは何だろう。

 すべての魔法は自然の摂理、その延長線上にあるものだ。

 

 科学苦手、と言うか勉強自体得意じゃないんだよなぁ……。


 雷は確か大量の静電気の発散によって生まれた火花。

 静電気を大量に作り出すことで雷を作れるなら、静電気を操れば雷も操れるんじゃないか?


 でも、どうやって無から静電気を作るんだ?

 魔力から静電気を作ってみる? 魔力は無から水も炎も生み出せる。

 なら原理は分からなくても静電気ぐらい生み出せるだろう。


 なんとなく、魔力を槍の形に形成して、魔力を雷にぶつけてみる。

 そしたら、バリバリと音を立てて雷が魔力を通る。


「……できた」


 雷魔法の適正は無い、しかし今ボクは雷の魔術を使えている。

 これが魔法陣の力っていうことなのか?


「魔法陣に使われている紙は特別で、魔力を溜めることが出来る。そして紙に描かれた魔法陣の紋様をもとに魔法を構築する。構築された魔法は適正が無い人でも魔法操作さえ使えれば誰でもできる」


 母さんの話から推測するに、魔法紙と魔法陣は生成AIとかに似てるのかな。紋様は生成に必要な情報、その情報からイラストとか音楽……魔法を生成する。


 つまりだ、その情報さえわかれば無理に魔法陣を描く必要はないんではないか?

 その憶測を確かめてみたい。


「じゃあ、約束だったし。はい、魔法紙」


 母さんから魔法紙を受け取って、早速魔法紙に文字を書いてみる。


【花火】


 日本語で書かれた文字に母さんは首を傾げていたけど無視してそのままもう一度魔力を込める。

 小さな火の玉はらせん状に打ちあがり空で弾けた。


 色彩の華は、青空で本来の美しさではなかったけれど、それでも十分綺麗に見えた。


「これって、サクラギの火術だね」


 ほんっとサクラギってところはいつもボクの興味を引いてくる。

 桜に日本料理と旅館に温泉。そして花火。

 旅を始めたらまず初めにサクラギに行こう、そうしよう。


 とはいえ、成功しちゃった。

 これは使える……とはいえまだわからないことが幾つかあるし実験を続けてみようかな。


 魔法紙はまだ焼き切れていない、もう何回か使えそうだ。


「あれ、これはまだ使えそうだけどどうして? この紙は一回きりなんだよね」


「あぁ、これは簡単な話。お店で売ってる魔法陣はとても強力な魔法が込められているの。さっき見せた雷よりももっともっと強い魔法がね、強い魔法はその分魔法紙に負荷をかけているの。今のは込められた魔力がそこまで多くないからね、これはあと、三回ぐらい使えるかな」


「そっか、ならこの紙で母さんも試してみてよ。ボクと同じように使えるか知りたいんだ」


「ええ、いいわよ」


 母さんが魔力を込める。しかし、何も起きない。


「あれ? どうして何も起きないの?」


「フフッ、魔法陣ってどうして適正の無い魔法も使えるのかな」


「魔法陣を作った人が使える魔法が刻まれているから?」


「それならどうして今あなたは火術を使えたのかしら? それに母さんは魔力操作はできるけど、魔法適性は無いわよ?」


 言われてみればそうだ。

 推測の範囲は出ないが、魔法はイメージによって成功率は変わる。

 それと同じで、魔法陣もイメージによって変わるのではないか?


 この世界の人が持っている魔法陣へのイメージが適正の無い人でも操れるカラクリなのか。

 今回書いた、花火の文字は漢字でボクしか知らない。母さんはこの文字を見ても花火をイメージすることはできないから、発動しなかった。


 推測が正しいのなら、魔法陣=どんな魔法でも使えるという風に錯覚していて、魔法陣に描かれた紋様から無意識的に適性の無い魔法もできるイメージが湧くんだろうな。


 とはいえ、ならなんて魔法陣にしたのだろうか。

 普通の文字でもいいように思えるけどな。


 それに、どうして適正外の魔法も使えるのだろうか。


「これって小さく切っても使えたりするの?」


「使えるけど、その分威力が下がったりすぐ消えちゃったりするわよ」


「別に大丈夫だよ、ボクがやりたいことはそんな魔術とかじゃないからさ」


「そう? ならいいんだけど。母さんはこれから家の事やらないといけないから、十分気をつけて使うのよ、分かった?」


「うん、わかってるよ」


 母さんは家の中に入っていった。

 また一人静かになった。

 ボクは一人で魔法紙をいじっていた。



「父さん! 今日も稽古つけてください!」


 夕方、仕事帰りの父さんに木刀を渡す。

 茜色の空、男二人の決闘だ。


「昨日より強くなっているんだよな?」


 これは父さんの口癖だ。

 小さなころから、毎日のように聞かされた言葉だ。


「当然です」


 その言葉通り、ボクは毎日努力を続けていた。


「そうか、なら。試してみようか」


 父さんの目の色が変わった。

 戦う者の、戦いの中で見せる目。


 腰を落とし、姿勢は低く、膝を曲げ肩幅よりも少し広く足を広げる。

 肩と水平に腕を伸ばして剣を構える。


 ボクも同じように、戦いの姿勢を作る。


 風が吹く。低い草花を揺らす。

 一匹の赤とんぼが目の前を過ぎ去った時にボクは一歩踏み出した。


 そのスピードはあの時の数倍。

 体の使い方と筋力を得たからこそのボクのパワー。

 それでも父さんには届かない。


 スピードだけじゃない、パワーも技術も父さんには遠く及ばない。

 ボクが父さんに勝てるのは、魔法、魔術の力だけ。


 剣を振り上げ父さんの剣とぶつかる。


 カコン、と高い音が響く。

 鍔迫り合いが続いた時、小さな火が足元に出来ていた。

 小さな火は、草花に燃え広がり次第に大きくなっていく。


「おっと……」


 父さんはバックステップで距離を取った。いつもよりほんの少しのオーバーリアクション。

 父さんの意識の中に炎なんて無かったから。

 距離を潰して、今度は父さんの目の前で光を放った。


「ッチ」


 一瞬の目くらましじゃ、父さんは止まらない。

 音と感覚、そしてボクの行動を想定する予知能力から、的確にボクに木刀をぶつける。

 そのまま木刀を振りぬく。そこにあったのは違和感。

 何かを斬った感覚はあれど、それはボクではない。

 何を斬ったのか。それはボクの幻。


 本物のボクは後ろにいる。

 そして刃はもう振るわれている。


 取ったと思った、けれど予想外が起こる。

 父さんが回転切りで後ろにいたボクの剣を弾いてみせたのだ。


 ただ、まだ片手は空いている。

 魔法を撃つ準備をする。


 風魔法で父さんを吹き飛ばし、その間に木刀を拾う。

 はずだったのに……。


 父さんは振りぬいた木刀を切り返し、三打目をくりだしたのだ。


「父さんの勝ち、だな」


 父さんとの勝負はボクの負けで幕を下ろした。


「それにしても、面白い戦い方するなミリヤ」


「うん、母さんから魔法紙を一枚もらって、いろんなことをやってみたんだ」


「そうか、いいじゃないか。ただ、今は基礎固めをしっかりしないと……父さんに一撃でも食らわせたらその戦い方の特訓にも付き合ってやるよ」


 父さんはボクの頭をなでて家の中に入っていった。

 最近、父さんは家族に対して無関心というか、関る時間が明らかに減っていた。

 朝はいつもより早く家を出て、仕事を終えてからも夜に家を出ることが何度かあった。

 

 ボクの特訓には必ず付き合ってくれるが、前とは明らかに雰囲気も何も変わっているのは一目瞭然だった。


「父さん、最近忙しそうだよね……」


「まぁ、そうだな。けどこれは大人である父さんたちの仕事だ、気にするな」


 そうは言っているが、よく見るとふくらはぎのあたりに幾つかの傷ができているのをボクは見逃していない。

 ただ、父さんはこれ以上ボクの介入を良しとしていない以上、踏み込んで聞くのもあまり良くないしな……。


 ここはいい息子になってやるかね。


「そっか……じゃあ明日の仕事の為にも晩御飯ちゃんと食べないとね!」


 ボクは父さんの背中を押して家の中に入る。

 家に入れば、晩御飯のいい匂いが満たしていて、ボクも父さんもお腹を鳴らしてしまった。


「ただいま、母さん」


「えぇ、おかえり。二人とも」

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