第11話 実在不確かなモンちゃん ~現実世界編~
メモ代わりなのか、穂乃香はスマートフォンを手に持ちながら、「さて、作戦会議を始めましょう」と開始を告げた。
「まず、廃墟のことを知らないゆず兄のために、分かっていることを説明しておくわね」
「うっす、頼んます」
俺はペコリと頭を下げた。
穂乃香はコホンと咳払いをひとつしてから、廃墟の説明を始めた。
「廃墟はね、アタシたちのいる新太区と北側に隣接した、奈古区芽里羅町の林縁をずっと歩いたところにあるの」
「ふむ。して、廃墟と言うが、どういう感じの廃墟なんだ?」
「んー。ツタや枝に覆われた廃墟で、見た感じ洋館のようだったわ」
俺は息を呑んだ。
「へぇ、まるでRPGに出てくるダンジョンみたいだな」
「はあ……あんたってば、ゲーム関連のことしか考えられないの?」
あきれたような穂乃香の言葉に、俺は「面目ない」と言葉とは裏腹に誇らしげに笑ってみせた。
そんな俺をフォローするのは、いつだって飛鳥ちゃんだった。
「でも実際、モンスターちゃんが現れそうな洋館だったよ?」
「まあ……それはそうだけども」
「それにね、わたし、モンスターちゃんの声を聞いたよー」
「はあ」
明らかに鼻白む穂乃香。
「ほんとなんだから! こう、なんて言うんだろう、キシャ―っていう声で、たぶんモンちゃんは四つん這いで移動すると思うんだ。
そんでもって、モンちゃんはホラー映画に出てきそうな返り血を浴びた人型の怪物だと思うな」
穂乃香の反応を見て、飛鳥ちゃんは身振り手振りを交えながら、モンスターが実在すると訴えた。
しかし、穂乃香はそれを鼻で笑った。
「バカバカしい。今のこの世に怪物なんているはずがないじゃないの。ありえないわ」
「むぅ」
「少しは頭を考えなさい、頭を」
むくれる飛鳥ちゃんの頭を、ポンポンと軽く叩く穂乃香。
俺は俺で、別の事を考えていた。
もしこの世に「日影血戦」に出てくる怪物、ゾンビがいるとしたら――果たして、それを打ち倒す者は現れるのか。
バイオハザードが発生したとき、果たしてそれを終息することはできるのか。
この世界はフィクション作品とは違い、ゾンビを倒してくれるようなヒーローもヒロインもいない。
フィクションでよくあるようなご都合展開もない。
いわゆるこの世界はクソゲームだ。よくできたクソゲーだ。
そんな俺たち人類は「日影血戦」の登場人物たちのように、しぶとく生存することができるのだろうか?
否、できないだろう。
結局、ゾンビという存在に怯えた俺は、作戦会議の場で一言も発しないまま、三十分ほどの作戦会議を終えた。




