第10話 愉快なる探検隊結成 ~現実世界編~
歯磨きで心もすっきりした俺は、早速意気揚々とリビングにいる穂乃香と飛鳥ちゃんの元に向かった。
「ほーのかたんっ」
「な~あ~に? ……なんて言うと思った? そのたん付け、二度とするな。やめて。さもないと」
「さもないと……なんでしょうか」
ソファに偉そうに座る穂乃香を上目遣いで見る俺。
その穂乃香の返しは、宇宙一残酷な言葉だった。
「クズ兄たんって呼んでやるんだから」
「ひでぶっ」
そんな俺たちの会話がおかしかったのか、ソファでクスクスと笑う飛鳥ちゃん。
「仲良し兄妹だねぇ」
「やめて、飛鳥。それ、絶交案件」
「いやぁ、それほどでも~」
俺は頬をかき、大いに照れた。
何が気に食わないのか、穂乃香は舌打ちをすると、しっしと手で払う仕草をした。
「あっち行って。さっさとあんたは大好きなブラゲでもやってきなさいよ」
「そこまで邪険に扱わなくてもいいんじゃないでしょうか……?」
涙目になる俺。
と、そのとき飛鳥ちゃんが「ブラゲ?」とその言葉に食いついた。
「ブラゲって、ブラウザゲームのことー? 譲くん、なんのゲームやってるのかな」
よくぞ聞いてくれた、飛鳥ちゃん。
俺は指を鳴らし、口笛を吹く。
「新時代を担うゲームとも言えよう……そうさ、俺がしているブラゲとは、放置系チャット型ゾンビブラウザゲーム『日影血戦』のことだぁ!」
「な、なんだってー!」
俺のノリに合わせ、飛鳥ちゃんは派手に驚いてくれた。
そんな俺たちを白い目で見る穂乃香は、「いわゆるクソゲーね」と肩をすくめてみせた。
「飛鳥、こんなクソゲーマスターと無駄話してないで、アタシの部屋で例の作戦会議をしましょ」
「え~、嫌だよぉ。穂乃香ちゃんの部屋、臭くて汚くて足の踏み場がないんだもん」
「酷い言われようね。……実際、そうだけども」
「そうだ! 穂乃香ちゃん、譲くんにも例の探検のこと話してみない?」
「飛鳥、シャラップ!」
「おいおい。お前ら、さっきから一体なんの話だよ」
このような会話を目の前でされては、興味が湧いてくるのも当然の話。
そしたら、ものすごくバツが悪そうな顔をする穂乃香。
「なあ、なんなんだよ」
「それは……」
「林の中にある廃墟を探検するの~。その作戦会議をしに、わたしはここに来たんだよー」
「この……飛鳥っ」
「林の中の廃墟を探検する、だって?」
ここは年長者として、言っておかなければならないだろう。
「おい、お前ら」
「……何よ」
「うん」
「まろも混ぜてけろ」
穂乃香はずっこけ、飛鳥ちゃんは嬉しそうに破顔した。
「うんっ、いいよ~」
「叱られると思ったわ……そういうことなら、いいわよ」
ガッツポーズ。
「やったぜ」
そんなわけで、晴れて俺は穂乃香と飛鳥ちゃんの探検隊に加わり、作戦会議の場にもいられることとなった。




