第12話 発見された変異種ゾンビ ~ゲーム世界編~
巨躯のゾンビの襲撃に遭った、元渾栄死守ギルドマスター――「呪縛接吻」の呪人、浜野莉愛さん。
彼女の日影防衛への亡命は、こうして多数決により受け入れられた。
コホン、と咳払いをしたのは、我らが日影防衛ギルドマスター、「指血砲」の呪人――伊東静香さんだった。
彼女は私たち五人を順に見遣ってから、よく通る声で話し出した。
「〈伊東静香〉莉愛には悪いが、早速定例会議を始めさせてもらう。――終里、あとは頼む」
日影防衛サブマスター「発熱炎剣」の呪人――神崎終里さん。
彼はアンティークチェアからスクッと立ち上がる。
「〈神崎終里〉皆も噂で知っていることだろうが、近頃『タワー』から出てくるゾンビどもの中に、いわゆる変異種がいることが確定した」
神崎さんの衝撃的な言葉に、日影防衛の幹部が集う会議場全体がざわめいた。
「〈獅子舞海輝〉……噂は噂であってほしかったものだ。致し方あるまい」
私は変異種が出現したという恐ろしい事実に、ただただ絶望することだけしかできなかった。
と、そのとき、浜野さんがソロソロと手を挙げた。
「〈浜野莉愛〉あの、どうして変異種が存在することが分かったんですか。
そもそも変異種の噂になったきっかけは、七尾地区を管轄していたエリートギルド……「七尾固守」の食糧探索チームの行方が分からなくなったことから出回った噂ですよね。
噂だったはずの情報が確定したのは、なぜなんですか」
うむ、と重々しくうなずく神崎さんは、机にあったノートパソコンを操作すると、みんながパソコンの画面を見られるようにしてくれた。
どうやらそれはハンディカメラで撮影した動画のようだった。
「〈神崎終里〉この映像を見てくれ。今朝、塔楼戦線からハンディカメラごと届いたもので、これは編集バージョンだ」
「〈獅子舞海輝〉こいつは……食料探索チームの最期の姿を映した映像、か」
獅子舞さんの言葉通り、それは惨たらしい最期の時を迎える「七尾固守」の食料探索チームの映像だった。
場所はショッピングセンターの駐車場で、そこには彼らを惨殺した存在――“赤黒い翼が生えた首のない巨体をした怪物”も映像の中に映り込んでいた。
映像の中で、食料探索チームは為す術もなく、一瞬で怪物の持つ巨大な十文字槍で何度も何度も刺し殺されていた。
最後、映像は動画を回していた人物が仰向けにお陀仏したことで、ハンディカメラは空を向いたまま、翼の生えた首なし怪物がどこかに飛んで去っていくまでを映していた。
映像が終わってもなお、私たちは一人残らず沈黙していた。
皆、恐怖と絶望のあまり、言葉が発することができないのだろう。
最初に言葉を発したのは、日影防衛衛生兵長「心傷式治療」の呪人――宮野眠美さんだった。
「〈宮野眠美〉えっとぉ、怪物さんのお名前はなんて言うんですかぁ」
「〈神崎終里〉こいつはな、通称〈首なし堕天使〉と呼ばれている」
「〈宮野眠美〉なんでしょう、堕天使ちゃんとは仲良くなれる気がしませんねぇ」
宮野さんの発言がおかしく感じた私は、思わず噴き出した。
案の定、宮野さん以外のメンバーから白い目で見られ、すぐさま私は「笑う場ではなかったわ、ごめんなさい」と冷や汗をかきながら謝った。
伊東さんはそんな私や宮野さんをねめつけると、こう叱った。
「〈伊東静香〉眠美、少しはこの場にふさわしい発言をしろ」
「〈宮野眠美〉はぁい」
「〈伊東静香〉……それから令奈、お前は夕食抜きだ」
「〈安室令奈〉そんなの酷いわ酷いわ、横暴よ」
「〈伊東静香〉まだ定例会議は終わっていないぞ。お口にチャックだ、令奈」
私は言い返したいのをなんとかこらえ、代わりに宮野さんを恨みがこもったまなざしでにらみつけた。
再び神崎さんが会議の進行をする。
「〈神崎終里〉『タワー』から出てくる変異種は、何も「首なし堕天使」だけではないだろうと推測される。……そこで、だ。
ほかのギルドマスター同士で何度も慎重に話し合った結果、他ギルド混合の変異種討伐隊を結成することにした」
「〈伊東静香〉うちから変異種討伐隊に参加するメンバーは、私と怜奈と眠美の三名となる」
息つく暇もなく、伊東さんは討伐隊に参加するメンバーの発表を行った。
私は手を挙げる。
「〈安室令奈〉私で良いの? まだ私の眠爆は本来の力を引き出せていないのだけれど」
「〈伊東静香〉安心しろ。討伐隊の顔合わせは近々するつもりだが、実際に討伐隊が活動するのは、まだ先になる。
それに討伐を始める頃には、お前のその眠爆の力も大きくなっていることだろうからな」
「〈安室令奈〉そう、分かったわ」
それからいくつかの連絡事項のあと、定例会議は終了した。




