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第四十六話 希望

 切り立った崖の上、眼下には数えられない程の巨兵の群れ。背後には破壊された施設の残骸。

 マザー1への距離はさほどないが、敵の数が圧倒的過ぎた。

 宗二はその現状に膝をついていた。


「ソージくん。私たちには後がない。先に進もう」

「行くぞ、宗二」


 2人にも宗二の無念もわかっている。だが、それを許すわけにはいかない。彼らがここにいる理由があるからだ。


「はい。大丈夫です」


 膝をついていたアディバイス・アイギスを立ち上がらせる。足を踏ん張り前方を見やる。


「ここで手を拱いている訳にはいかない。最も効果的に敵を倒す。その方法はもうわかるだろう?」

「荷電粒子砲を撃ち込むんですよね。巨兵を吹き飛ばして突破するしかない」

「その大砲を本拠地に叩き込んだところで無理だろうし、しょうがねぇよなぁ」


 覚悟は決まった。

 3人は行動を開始する。

 サー・リタットディスターは荷電粒子砲を敵中枢へ向ける。残りの2機はすぐに動けるように姿勢を前方に倒す。


「発射!」


 背後のジェネレータから供給される膨大なエネルギーを砲身から発射する。

 撃った瞬間に目標は爆発。激しい衝撃と熱風が全てを破壊する。

 爆発がまだ残っているにも関わらず、アディバイス・アイギスとゲッセン・カイは着弾点へ全力で向かっていく。

 爆発の余熱で装甲が溶けるほどだが、構わず前進を止めない。


「宗二! このまま突っ切るぞ! キシリエは自分で何とかするだろ!」


 着弾点を抜けて活路を開くべく巨兵へ襲い掛かる。

 ゲッセン・カイによる斬撃が容赦なく巨兵を葬っていく。

 秒単位で減っていく巨兵を乗り越え突撃の勢いを殺さない。

 横からの攻撃はアディバイス・アイギスのバリアで防ぐ。


「宗二! きやがったぞ! クイーン型だ!」

「わかりました! 空間断裂フィールド、展開!」


 アディバイス。アイギスは前方へ腕を伸ばすと小手を展開、フィールドを発生させる。

 空間操作さえ封じてしまえばクイーン型はポーン型と変わらない。

 2機は勢いをそのままにマザー1へと進んでいく。

 少しずつ巨兵の包囲網が狭まってくる。側面からの攻撃をバリアで防ぐ事が難しくなってくる。

 バリアを抜けてミサイルが迫ってきた。


「まだまだ、脇が甘いですね」


 サー・リタットディスターによるボウガン射撃がミサイルを打ち抜いていく。


「遅いぞ! 何やってんだよ」

「ははは、思ったより重くなっていてね、遅れてしまった」


 軽口を叩けるほど余裕のあるキシリエはようやく合流する事ができた。

 サー・リタットディスターはホバー機能を活かし後尾を槍で守りつつ、前進していく。

 ゲッセン・カイで前面の敵を斬り、側面の防御はアディバイス・アイギスが、後ろの後始末はサー・リタットディスターが担当する。

 役割をこなし前進していく一行だったが、その限界はすぐに訪れる。

 数が違いすぎた。


「おい、後ろ近すぎだろ!」

「何を、前進ができていないようですが?」

「そんなことより、このままでは不味いですよ」


 3機の守護者は巨兵に包囲されていた。前後、左右、上空までも巨兵によって囲まれている。逃げることも、進むこともできずにこのままでは全滅を待つだけだった。


「ソージ殿、これから私が道を開く。後は任せた」

「ここは拙者等に任せろ」


 宗二は2人の意図に対して、頷いた。

 サー・リタットディスターは初撃以外使っていなかった荷電粒子砲を前方に向ける。今までジェネレータによるチャージを行っていたのはこのことを予想してのこと。後は放つだけ。


「後は任せてください」


 砲身から白色の閃光が放たれた。

 その閃光は前方に展開する巨兵たちを溶かしていく。その作られた道を宗二は走っていった。

 あの数を相手にしたら、2人とはいえ無事には済まないだろう。宗二はそれを頭で理解しつつ、前に進むことを決めていた。

 背後のスラスターも余剰エネルギーではなく、最適化され直接エネルギーによって稼動するように改修されている。ビームの後を追うように、アディバイス・アイギスは敵陣と突破していく。


(託されました。必ずマザー1を破壊し、巨兵を止めて見せます)


 スラスターを全力で稼動させて溶ける巨兵を横目に突っ切っていく。

 そして、着弾。激しいエネルギーの本流が全てを溶かし、無へ返していく。その中をアディバイス・アイギスが突破していった。バリアを前面に展開、側面、背面が溶けていくのを無視して進む。

 その熱は宗二も焼いていた。

 老人によってフィードバックされる痛覚が減ったとは言え、それは地獄の責めにも劣らない。全身は焼け爛れ、激しい発熱が宗二を襲う。それでも止まることは許されない。

 やがて着弾点を抜け、無傷な巨兵が行く手を阻む。ここで立ち止まることは出来ない。

 最大出力のバリアを前方へ展開、スラスターを全開し前方へ突進していく。荷電粒子の爆発の勢いを受けたアディバイス・アイギスを止める事は何人たりともできない。

 そして、やがて宗二はマザー1へとたどり着く。


(ようやくここまで来れた。だけど、キシリエさんとレンさんは……)


 宗二はキッと表情を固めると正面にあるマザー1の壁面を睨みつける。


(この壁は空間による制御で守られているはずだ。だが、アディバイスの力なら!)


 壁に左手を押し付ける。そして、小手を展開させる。小手の隙間からピンク色のエネルギーが溢れると、空間断裂フィールドを発生させた。

 そこに拳を叩きつけた。すると、壁面にひびが入る。


(思ったとおりだ。これなら、壁を壊せる)


 宗二は何度も拳を振るい、マザー1を壊していく。壊した壁の穴に手を差し込み、次はバリアを展開する。全神経をバリアに集中し、広げていった。

 背後から迫ってくる巨兵を感じながら、その作業を急ぐ。

 宗二の思惑通り、体一つ入れる程度の穴を開ける事ができた。背後に迫る巨兵から逃げるように体を滑り込ませた。

 その穴から巨兵は入ってくることはできない。宗二の予想通り空間制御のバリアがあったようだ。


(ようやくここまでこれました。ディーグアさん、キシリエさん、レンさん、キッドさん、ファル、ドッド。みんなが切り開いてくれた道、必ず破壊してみせます)


 マザー1の内部は機械の固まり。そのスケールは違えど車の量産工場を思わせた。

 異変はすぐにやってきた。

 アディバイス・アイギスのディスプレイに赤と黄色の表示が出てくる。そこに書かれた文字は「警告」、何が起こっているか宗二はすぐに理解した。

 鋭い痛みが全身を貫いた。

 あの文字は侵入者に対するもので、この攻撃はその刑罰。


(何が起こった? この痛みは? 攻撃された?)


 わからないうちに宗二はバリアを張り、身を守る。だが、それは無駄だった。バリアを貫通して攻撃が宗二に届いていた。

 宗二は何もわからないうちに膝をついた。

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