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「魔王の終活」   作者: クロネコ
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48話 回顧と遭遇

ラストルは女剣士ムンナ、魔術師ペティ、骨の魔物のヴァンと共にS難度任務。絶対魔界領域探索へ出発した。

絶対魔界領域出発の数週間前。


「まてまて。

お前がパーティメンバーってどういう事だよ?お前魔物だぞ!?


それにお前双眼鏡しかなくて弱いって…」


ラストルは慌てていた。

その様子を面白がるようにヴァンはニヤニヤしている。


「順番に説明してやろう。


まず、魔将や魔王を倒すという俺たちの目的は一致している。


俺は魔界のあらゆる知識を持っている。だが単体で乗り込むと、弱い魔物を一掃しにかかってくる今の魔王軍に秒殺されるだろう。


対してお前は強い。一人で魔物とやり合える力がある。ただ外の状況や魔界領域についての知識はゼロに等しい。


であれば、より効率よく魔界を攻略するにはチームを組んだ方が良いって事だ!


すなわち俺が頭でお前は筋肉だ!」


ラストルは筋肉については納得できなかったが、黙って頷きながら聞いていた。



「次に、俺が弱いって話だが。

肉弾戦にでもなったら俺はお前さんに勝てんよ。って意味だぜ?


魔術師としては俺はそこそこ戦える。


おっと。じゃあ友達であるお前の父親を救えたんじゃないか?ってハナシは無しな?

下手すりゃ術を唱えてる間に俺も殺されちまうって状況だったからな。」


ラストルも最初ヴァンと出会った時の会話を思い出した。


「ザックリ理解したが、大丈夫なんだろうか…」


ラストルは頷きながら、今後のパーティーメンバーとしてヴァンを採用するにあたっての問題点を考えていた。


ヴァンは一度咳払いをいれた。


「コホンッ。

まぁ、細かい事は心配すんな。俺に任せてくれりゃ、いい具合にちょちょいとなんとかするさ。


さて、再度魔界に入るにあたって、俺からアドバイス兼提案だ。


まずは簡単に解散しないような固いパーティを組み、魔界領域で生き残れるように連携に慣れる。

付け焼き刃のパーティでかつ初見の状態でヴォーラスに挑むのは自殺行為だ。


そして実際のヴォーラス戦は必ず苦戦するだろうから、ひとまず装備を整えとかなきゃならん。

こんなジリ貧の国の武具では話にならない。

魔に挑むなら、魔に適した装備を作る。


お前さんが前に住んでいたトローク村の付近にサバランって街があっただろ?

そこが山中なのに栄えていたのは、耐魔鉱石(たいまこうせき)って、高価な石ころが取れるからなんだ。

今は魔界領域になっちまって石自体、全く見なくなっちまったけどな。


これは闇属性への耐性を付与する魔石だ。

その石ころを集めて装備を仕立て上げれば、ある程度の闇属性の攻撃にも耐えられるようになる。


それに魔王の権能の''夜''で弱体化しているお前の得意な光属性の攻撃が100%の威力で出せるようになる。


ヴォーラスに挑む前にまずはこの石ころを集めた方がいい。


あとは余談だ。

お前さんには称号なんてどうでも良いだろうが、S難度依頼(クエスト)に失敗したら、失敗した数だけ成功して巻き返さないとSクラスの称号は貰えない。


今回の石ころ集めの任務でついでに、前回の失敗分をチャラにしてしまおうってハナシだが、どうだ?」


ヴァンは流れるように話した。


「だからさぁ、なんでそんなこと知ってんだよ。」


ラストルは呆れた様子で聞いた。


「長く生きてるとな、それなりに知識はつくもんだ。

ましてや俺は魔族。


人間以上に人間の事を知ってなければ、すぐに捕まって死ぬのがオチってもんだ。」


ヴァンは頭の後ろで腕を組みながら言った。


「案自体は賛成だ。

巨人相手に今の装備じゃ心許ないし、急場しのぎのパーティ構成では連携もあったもんじゃない。ワーウルフみたいな連携に長けた相手に太刀打ちできない。」


ラストルは同意した。


「んじゃ、決まりだな!」



〜 絶対魔界領域 南部 〜


円形王国都市ユーズの南門から出発したラストル一行は、常闇(とこやみ)の続く絶対魔界領域を南へ進み、山中の街サバランを目指していた。


複転移(テレポート)の魔法によってラストルはサバランの街から移動したため、王国都市ユーズから出発するのは初めてであった。


ワーウルフと遭遇した時と同じような高い岩の壁が多く存在している。


道中ラストルは数週間前のヴァンとのやり取りを思い出していた。

ヴァンはフードを被り前方を歩いている。

迷いの無い足取りだ。


「そういえば、ラストルはなんで戦士になったの?」


褐色の肌と銀の髪の女戦士、ムンナが質問した。


「俺は…倒さなきゃいけない相手がいるんだ。

今もそいつはどこかで俺を殺そうと狙ってる。


今戦っても勝ち目が無い。強くならねばと思って戦士になったんだ。」


ラストルは詳しくは話さなかった。

ムンナはその様子を見てただならぬものを感じた。


「…そうか、強さを求めているのね。

私も同じよ。


私にはとてつもなく強い姉がいるの。

今はSクラスの地位に就いていて、なかなか会う事はないけれど、そんな強いあねに憧れて戦士になったの。

早く姉さんに追いつきたくて、戦ってきた。


この大剣は初めて姉さんと合同任務で戦った時倒した魔獣の牙を鍛えて作成してもらった私の宝物。


この任務を終えれば、また一歩近づける!」


ムンナは背中に担いでいた身の丈ほどもある大剣を見ながら言った。

相当鍛えたのだろう。

軽々と振れるほど腕には筋肉が付いていた。


その時、突然全員が異変に気がついた…

微かに聞こえる地鳴り。

地面の小石がカタカタと震える。


「全員構えな!巨人だ。


数は1体。距離は約100m。あちらさんはこっちを捕捉してるみたいだな。


いくらルートをずらしてもまっすぐこっちに向かって来やがる。」


ヴァンが叫びながら、術印が刻まれた手袋を深くはめ直す。


ペティは水晶玉のついた杖、ムンナは大剣、ラストルは両手で細身の剣を構えた。


「全員準備はいいな?

大丈夫だ、手筈通りやれば倒せる。」


ヴァンの掛け声に全員が頷いた。

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