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「魔王の終活」   作者: クロネコ
49/60

49話 二手と連携

山中の街サバランへ向け、絶対魔界領域に足を踏み入れたラストル一行。

道中予期していた巨人と遭遇する。


「さぁ!気合い入れろよ?

ボサッとしてたら死ぬぜ?」


ヴァンが叫ぶ。


ラストル、ムンナは剣を構え、ペティは水晶のついた杖を構える。


闇夜に青い巨体が姿を現す。

遠くにいたはずだが、その踏み締める一歩は彼らとの距離を一瞬で縮めた。


ヴァンは自分の頭上の空に、素早く指で何かを描き始めた。

描き終えた瞬間上空に魔法陣が浮かぶ。


「強化の魔法陣!?」


ラストルは小さい頃、盗賊に襲われた時使用した魔法陣と同じものが、ヴァンの上空に現れたのに気がついた。


「お前の親父は魔法陣の作成が得意だったろ?俺も習って得意なんだぜ?


いやぁ、しかしこの刻呪印手袋(こくじゅいんてぶくろ)高いだけあってバッチリ描けるな!


これなら面白いほど威力でそうだ!

いくぜ、黒縄縛(ブラックシール)ッ!」


ヴァンが指を巨人に向けた瞬間、巨人の片足に暗黒の影が出現し、黒い縄の呪術が絡みつき引きずり込む。


巨人はバランスを崩し、轟音をたてながらその場に転倒した。


「ペティ!頼んだぜ!」


ヴァンの掛け声に応えて、後方で杖をかまえる。


「光よ!()らえよ!


閃鎖(フラッシュチェーン)ッ!」


倒れた巨人を縛り上げるように、光の鎖が両手両足を地面に固定する。


「急所は頭だ!

たたみかけろッ!」


ヴァンの次の掛け声で、ラストルとムンナは飛び上がり、巨人の頭を十字に切り裂く。


巨人は動かなくなった。

ムンナとラストルは着地し、お互いにハイタッチをした。


「な?意外と倒せるだろ?

巨人は集団で暴れなけりゃなんとかなる。」


ヴァンが得意そうに3人に話す。


「確かに思った以上にすんなり倒せたね。」


ムンナは驚いている。


「あと、すまん。

まだ2体いるわ。


今の音で気付かれたみたいだな。

戦いが長引けば長引くほど、他の巨人が集まってきて厄介な事になる。


とっとと倒して、逃げるのが吉だ。


倒し方はさっきと同じで、二手に別れた方がいいな。」


ヴァンが遠くを眺めながら言った。


「なら俺とペティ、ヴァンとムンナで別れよう。

力のバランスが取れているのはこのペアだと思う。」


ラストルは提案した。


「んじゃ、早く行きましょ。

ヴァンみたいに詠唱無しだと、威力のない魔法しか出せないから時間が欲しい。」


ペティはラストルに言った。

ラストルも頷き、ヴァンの指示する方へ向かう。


〜 ヴァン・ムンナ陣営 〜


「んじゃ、心許(こころもと)ない若手を早く手助けする為にちょっと本気だしますかねぇ。」


ヴァンはムンナと巨人を迎え撃つ為に、迎撃ポイントに到着した。


「何言ってんの?ヴァンも若いだろう?」


ムンナは笑っている。


「笑う余裕があるんなら安心だ。

さぁ、来るぜ!」


地鳴りが大きくなる。

巨人が近づいているようだ。

ムンナは大剣を構えだ。


ヴァンは片方の手で、再び魔法陣を前方の空中に描いた。もう片方の手は巨人が来るであろう方向を指差している。


「両手で違う魔法を同時に使うの!?

そんなの魔力消耗に身体が耐えられないんじゃ…」


ムンナは心配そうにヴァンに聞く。


「ん〜俺にとっちゃあんまり問題じゃないなぁ


魔法陣はもともと言葉を話せない者用に作られた低燃費な魔法だ。

器用なヤツなら片手で魔法陣を描きながら、片手で魔法を打ち出すなんて朝飯前なのさ。」


ヴァンは余裕そうに答える。


「んじゃ、手筈通りな。


黒縄縛(ブラックシール)ッ!」


青い身体の巨人は再び暗黒空間から現れた縄に足を取られ転倒した。


その後黒い巨大な黒い(くさび)が巨人の四肢に突き刺さる。


「上級魔法、冥王四楔(デーモンウェッジ)の魔法陣だ。

そう簡単には出られねぇぜ?


トドメは任せた。」


ヴァンがポケットに手を突っ込み空を見上げる。


「魔法の同時使用だけじゃなく上級魔法まで簡単に!

一体何者なんだいアンタ!」


ムンナは地面に描いた魔法陣の力で高くジャンプしていた。

大きく剣を振りかざす。


「ぶった斬る!

一刀一殺(いっとういっさつ)


兜割(かぶとわり)ッ」


雷が落ちるような音と共に、ムンナの大剣が巨人の頭を両断する。

巨人は動かなくなった。


「ヒュー、やるね!

力こそパワーみたいな感じだ!


さぁ、ラストルとペティの加勢に行くぞ?」


「ええ!」


ムンナとヴァンはラストルとペティの元へ向かった。


〜 ラストル・ペティ陣営 〜


「言っとくけど、あんまり期待しないでね?

ヴァンみたいな魔法をポンポン出せるような人間じゃないから私…」


ペティが少し心配そうに言う。


「まぁ…人間じゃな…


いやいや、大丈夫だペティ。

君は強い。

前回魔界領域に入って善逸生き残れたのはペティの魔法のおかげだしな。」


ラストルは剣を構えながら後ろにいるペティに言った。


「…まぁ、やるだけやってみるけど。

失敗しても恨まないでね?」


そう言うとペティは魔法の詠唱を唱え始めた。

地鳴りと共に青い巨体が前方に現れる。


「安心してくれ、何回も言ってるけどそん時は俺がカバーするさ!」


ラストルはそう言うと、岩の壁を縫うように巨人に走って行く。


「行くわ!白縄縄(ホワイトシール)ッ!」


ペティの杖の水晶が光を放つ。

光の巨大な縄が巨人の足元に絡みつく。


ラストルはそのタイミングと同時に自分に跳躍(ジャンプ)の魔法をかけて足を踏み込み、高くジャンプした。


「…ダメだわッ!

ラストル!危ないッ!!」


しかし、巨人は巨大な光の縄を引きちぎり、拳を振りかぶってラストルにパンチを繰り出した。


ラストルは空中で身長ほどの拳が猛スピードで飛んでくるのを刹那に見ていた。


「グッ!!…オラァッ!!」


ラストルは間一髪で巨人の腕の上に飛び上がっていた。


飛んでくる巨人の拳に、身体を回転させ振りかぶった剣を突き刺し、その力を推進力にさらに上へ飛び上がった。


(危ッぶねぇ!

少しでもタイミングがミスったら死んでた!)


ラストルは空中の崩れた体勢の中、巨人の腕を見下ろす。


そして、身をひねりながらうまく巨人の腕の上に着地をすると、巨人を目掛けて一気に腕の上を駆ける。


(…やっぱまだ少し怖ぇな。どうしてもあの時の記憶が勝手に…)


ラストルは巨人の腕を走りながら、幼少期に友達が巨人の破壊した瓦礫に潰されている光景がフラッシュバックした。


おそらく、死地(しち)(かす)めたからであろう。


下にいるペティを守るプレッシャーと相まって、ムンナと戦っている時は気にならなかった予想される悪い結末が次々とラストルを襲う。


それは紛れもなく恐怖であった。

足を踏み締めている感覚が一時無くなっていた。


「…二星強化(ダブルスペル)ッ!」


ラストルは自分に魔法を強化する魔法を唱える。


停滞光(セットフラッシュ)高速(クイック)!」


ラストルは装備強化と身体強化の魔法を重ねて唱える。


「大丈夫だ!今の俺ならッ…!

もう、死なせないんだ!誰もッ!」


ラストルの姿が光のように変わる。

超高速の光は一瞬で巨人の頭へ向かっていく。


光を纏った剣は巨人の首を横一線に切り裂いた。


「や…やった…!」


ペティは一部始終を見ていた。

ラストルはワーウルフとの戦いと同じく一瞬で力を使い切り、体が動かせなくなっていた。


「…やべぇ…落ちる!」


ラストルは巨人を切り裂いたあと、そのまま落下していた。


「キャッチッ!!」


ラストルは高く飛び上がったムンナの腕の中に落ちた。

そのまま岩の上に着地した。


「ふぃ〜ギリギリセーフって感じだな!


さすが身体能力が高い戦士だぜ!

魔法陣の力とはいえ、俺じゃあとてもあんな高く飛べないや。」


力が抜けて地面に座り込むペティの横にヴァンが歩いてきた。


「大丈夫かいラストル?」


ムンナはフラフラのラストルを座らせて言った。


「あぁ…おかげで助かったよムンナ!

あのままだと死んでた。」


ラストルは疲れた表情で笑ってみせた。


「なかなかギリギリだったみたいだね。

少し休んだらこの場から少し移動しよう。」


ムンナは魔力欠乏症を治すポーションをラストルに飲ませる。


一方、ペティは自責(じせき)の念に(さいな)まれていた。


「…ダメだわ…このままだと私のせいで誰か死んじゃう…」


ペティは泣き出しそうな顔をしていた。

ヴァンはそれを見て言った。


「そう気にするな。

誰かがミスった時は誰かがそれを補う。

パーティを組むって事はそういう事だ。


今はまだダメでもちゃんと誰かを助ける事ができるようになる。。

今回は試運転だと思えばいい。最初からうまく立ち回れればそれは才能なんだ。


凡才(ぼんさい)は磨いて磨いて、死なないように、強くなるように、努力すれば才能だけのやつよりもさらに上に行ける。


だから、そんなに落ち込むな。

不可欠な治癒回復者(ヒーラ)さんよ。」


ヴァンはフードの中で歯を見せて笑た。

ペティは黙って頷いた。


「よし、まだ他の巨人には気付かれていない!

最初の戦いとしては上々だろう。


巨人の仲間が来る前にずらかろう!」


ヴァンの呼びかけにラストルとムンナは岩の上から降りてきた。


魔界領域に沈む山中の街サバランまではあと少しのところまで迫っていた。

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