45話 葛藤と参戦
一緒に魔界領域の探索をしたダガーとジャックは戦士として戦う道から外れた。
魔道士として活躍できるペティがラストルとパーティを組む事となる。
3人と別れたあと、ラストルはあの丘に向かう事にした。
〜 首都ユーズ 郊外の丘 〜
日が沈み出した頃。
ラストルは街を見渡せる小高い丘の上にやってきた。
「出てこいよ覗き見のヴァン。」
ラストルは冗談半分に丘の上に立つ大きな木に向かって言った。
「俺がやってるのは観察だ。間違えるなよ?」
木の物陰から長いコートにフードを被った骨の魔物のヴァンが現れた。
「ラストル。お前って結構やさぐれた感じの女がタイプなのかい?
ま、ちょっとツンツンしててやる気無い感じがグッとくるのは分からんでもないが…」
ヴァンは白い歯を見せながら笑っている。
「本当にお前どこから見てんだよ…
ただ単にパーティを組むだけだ。
腕が立つしな。
それより、魔界領域で魔将ヴォーラスに会ってきた。」
ラストルはペティの事だと悟り、話を逸らすように本題に入った。
「ほう…よく生きて帰って来れたな!
もしかして…倒したのか!?」
ヴァンは感嘆の声を上げながら、ラストルに聞いた。
「いや、違う…
何というか…悪い奴らに見えねぇんだ…全然。
全体的に敵意が無いというか、友好的というか…
なぁ、ヴァン。
魔物ってみんなお前みたいに話がわかる奴らなんじゃ無いのか?」
ラストルはヴァンに質問した。
ヴァンはフードを深く被った。
「お前さんにはそう見えるかい?
相手は天下の魔王軍の将軍だぜ?
弱い魔物も人間達も皆殺しにしようとしてんだ。
ラストル。お前は魔界領域で誰か人間を見たか?」
ラストルは首を振った。
ヴァンのフードで隠れた顔は、笑った歯だけが見えていた。
「そうだろ?
今現在、魔界領域になっている部分は元々人間の領域だったはずだ。
この首都ユーズに来る前に、そこに居たお前さんならわかるだろ?
もちろんその場には人間もいたはずだ。
その人達はどうなった?
人間の姿を見なかったというなら…
まぁ、言うまでもないだろうさ。
お前さんはただ運が良かっただけだ。
奇跡的に相手が友好的だっただけだ。
相手が馬鹿だから良かったが、虫のいどころが悪ければ即座に殺されていただろう。」
ヴァンは淡々と答えた。
ラストルは再び悩んだ。
本当にそうだろうか…
確かに、魔将の城の城下町は閑散としていた。
広さにしては魔物が少なすぎる。
これは弱い魔物を排除したがためなのか…
しかし、あの酒場で語らいあった時間を過ごした限り、そんな事をするような魔物には到底見えない。
ラストルは黙ってしまった。
ヴァンはため息をついた。
「揺らぐな!ラストル。
お前は戦わなきゃならないんだ!
やらなきゃいけない事も、乗り越えなきゃいけない目標も、魔界領域にあるんだろう?」
ラストルは、オリビアの足を治す万能薬や宿敵デューダの事を思い出す。
「だったら、魔将を倒さなければ先に進めない。何より敵のボスである魔王は人間を滅ぼす気満々な事を忘れるな。
奴らがあの領域を牛耳る限り俺達に未来は無い!」
ヴァンは畳み掛けるように言った。
そう。もし仮に魔将ヴォーラスが良い魔物だったとしても、魔王による全世界への宣戦布告を聞いてしまっている。
であれば…やはり倒すしかない。
放っておけば人間を滅ぼすために、いずれやってくる。
そして、ヴォーラスに言われた最後の言葉。
『次会った時はお互い敵同士。』
自分は敵の仲間を殺している。
敵からすれば、弔合戦そのもの。
最初からわかり合うことなどできるはずもない。
ラストルは黙ったまま頷いた。
「よし。
安心しろお前は強い!俺が保証する。
魔界領域から無傷で帰って来れるなら、ヴォーラスとも十分戦えるはずだ!
魔界領域に出発するには最低4人必要だったな。
一人はお前のパーティメンバーの人間の女。
あと一人は誰か見繕ってもらって、
もう一人は俺が着いて行ってやろう!」
「…は?」
ラストルは耳を疑った。




