38話 逃走と遭遇
ワーウルフの群れを倒したラストル。
負傷した仲間を帰らせ、一人その場に残っていた。
一連の事態はラストルの敵であるデューダの仕業と考え、叫ぶ。
そして、デューダはラストルの目の前に姿をあらわした。
こびりついた砂が風で飛ばされるように、何もない空間からデューダが姿を現した。
「君に正体を見破られて以来かな?
よくあの状況で生き残ったものだ。
どうやら君は本物らしい。」
隠蔽の魔法で姿を隠しているにもかかわらず、デューダはラストルの方を見ていた。
(この男、俺が見えているのか…
さっき使った索敵の魔法でも、確認できなかった。
何か特殊な魔法でも使っているのか…?)
ラストルは岩影から、デューダの様子を観察していた。
「本物だと?
世界の加護がどうとか…って話か!」
ラストルは聞いた。
デューダは不思議そうな顔をしている。
「おや?あの時その話をしていなかったはずだが…どうやら辿り着いたようだね。
誰に聞いたんだい?」
ラストルは自分の口を手で押さえた。
(しまった…!
ヴァンから聞いた事をそのまま言ってしまった…)
「まぁそんなことは、感のいい君なら遅かれ早かれ知る話だろうさ。
僕の中では、君は本物という確かな認識を得ている。
それでいい。君にはそのまま進んでもらわなくては困る。
でなければ、苦労して勇者探しのために若者を殺して回った甲斐が無い。」
デューダはニヤリと笑いながら、ラストルのいる方へ近づいてくる。
ラストルは怒りで持っていた剣を震わせる。
今にもデューダに斬りかかりに走り出しそうだった。
(…落ち着け俺!
訓練戦士時代に身につけた観察眼は節穴か!?
明らかに奴と俺との力の差は大きい。
隠蔽も索敵も効かないのが証拠だ!
それでもアイツが現れたのは、ただの気まぐれだ。
ワーウルフの待ち伏せの図星を突かれて慌てたんじゃない!
少しでも情報を聞き出せ!)
ラストルは怒りを必死で鎮めた。
深く深呼吸する。
「アンタはどうしてそこまで勇者にこだわる!?
何が目的だ!」
ラストルの問にデューダはその場で立ち止まる。
「問題を解かずに答えを先に聞くのはナンセンスだな。
だが、僕がこの辺りで君達をワーウルフに襲わせた事を見破ったご褒美にヒントだけあげよう。
僕は国王ユーザルトのさらに先を見据えている。」
(ユーズ王国の王様の先を見据える?
どういう事だ…?)
ラストルはデューダの与えたヒントについて考えた。
しかし、これといった正解が見当たらない。
「さて、お喋りはここまでだね。
もう少しで彼が来る。
これからの君に期待しているよ。…ブツブツ…」
「彼…誰のことだ…?」
ラストルがデューダを再び見た時にはすでに、姿が見えなくなっていた。
ラストルは周囲を警戒した。
不自然に地面が揺れている感覚がある。
その揺れは次第に大きくなっていく。
ラストルはこの揺れ方を憶えていた。
「…巨人!?ここでの遭遇はマズイ…!」
揺れは、地面を踏みつける大きな音と共に大きくなっていく。
ラストルは岩の間を縫うように走った。
何かが砕ける音がする。
巨人が壁のようにそびえ立つ岩を踏み潰している。
ラストルは蛇行しながら走り、巨人の進行から逃れようとするが、位置を補足されているかのように、ラストルの逃げる方へ向かってくる。
「…クソッ!
なんで逃げる方に向かってくる!?
…デューダか!!
確かアイツ最後に何かつぶやいてたなチクショウ!!」
ラストルは走りながら、自分に何かされたのではないか調べた。
「解除魔法か!|
隠蔽が消えている。
あとなんだ…なんだこの魔法は?」
ラストルは自分にかけられている得体の知れない魔法に気がついた。
ラストルは自分に解除魔法をかけてみるが、解けない。
「…解除できないだと!?
グッ!!」
ラストルは飛んできた岩の破片に頭が当たり、その場に倒れた。
頭から血が流れる。
視界が揺れて、すぐに立てない。
「…ヤバイ…死ぬ…」
巨人の足音がすぐ近くまで迫ってきた。
定まらない視界の先に、何かが走って来る姿が見える。
「なんだぁ?
やっぱり巨人じゃねぇか!」
野太い声と共に声の主は、ラストルの目の前を勢いよく飛び越えていく。
「落ち着け馬鹿野郎がぁ!!」
声の主は長い柄の先に身の丈ほどの鉄塊が付いたハンマーを振りかぶり、軽々と巨人の頭まで跳んだ。
そして、轟音と衝撃と共にハンマーが巨人の頭を叩きつける。
ラストルの視界が元に戻った時には、巨人は地面に大の字に倒れていた。
上空から、ラストルの2倍ほどの巨体が着地した。
その巨体を覆う禍々しい鎧。
手に持つハンマーは片方が丸く、片方が先細りしたトゲのようになっており、戦鎚と呼ぶべき武器であった。
頭には曲がった角がついており、明らかに人間ではない。
そして、その巨体は倒れているラストルの方へ振り返った。
「…なんだ?人間か?」




