39話 馬鹿と遭遇
絶対魔界領域で仇のデューダに出会ったラストル。
次は巨人に追われて窮地となる。
そこで現れたのは巨大な戦鎚で巨人をなぎ倒した魔物だった。
「…なんだ?人間か?」
巨大な戦鎚を軽々と担ぎ直し、巨人を倒したそれはラストルの方を向いて言った。
「…なんだこいつは…巨人を一撃で…」
ラストルは地面に伏せたまま、ただ呆然と見ていた。
「ふむ…人間にしては若いな。
そして、眼に戦意が無い。
怪我をしている。
巨人に追われていた。
…つまりお前は迷子だな?」
その巨体は閃いたように、指を鳴らして言った。
「…(違うぞ)」
ラストルは突拍子もないことを言われ、言葉を失った。
戦鎚を持った巨体は再び倒れた巨人の方を向く。
「やれやれ。
こっちの方に来るんじゃねぇっていつも言ってんのに、話をちっとも聞きやしねぇ。
遠吠えで来てみたが、なんつー有様だこりゃ…
ギル達も踏み潰しやがったんだな。いい奴らだったのに…
仲間殺しは万死だ。
魔王ザーガン様よくこんな危ねぇもん指揮できたもんだぜ。」
大きな声で独り言を話す巨体をラストルは観察していた。
(ギル…あのワーウルフ達の事なのか…
そして魔王ザーガン。''勇者伝記''に書いてあった第5世代の嵐の魔王。)
「帰れ。人間のガキんちょ。」
巨体は背を向けたまま言った。
「俺は戦鎚の魔将ヴォーラス。
この地を支配する者だ。
俺は弱りきったやつをみだりに殺しはしない。
戦う覚悟のある目をしているやつとは全力で挑むがな?ガハハ」
ヴォーラスは笑いながら言った。
(こいつが…戦鎚の魔将!?)
ラストルは驚いた顔でヴォーラスを見た。
ヴォーラスは本当に何もする気は無いようだった。
「…なんだぁ?
びびって腰でも抜けてんのか?
結界の近くまで運んでやろうか?」
ヴォーラスが歩みよってきた。
ラストルは急いで自力で起き上がった。
「…いや、大丈夫だ。
ありがとうヴォーラス。助かったよ。」
ラストルは頭のから流れた血を拭き、長い布で傷がある部分を縛って圧迫した。
「おいお前。
今なんて言った?」
ヴォーラスは突然質問をする。
ラストルは狼狽た。
「いや…助かった…と。」
ラストルの返答を聞いて、ヴォーラスは腕を組んで考えだす。
「お前…さては良い人間だな!?」
「…?」
ラストルは再び調子を崩された感じがした。
ヴォーラスは大きな声で笑う。
「ガハハ!そうかそうか!良い人間か!
他の戦士どもは会話する事なく、親の仇みてぇに一方的に戦いを挑んでくるが、お前さんは少し違うみてぇだな。」
ヴォーラスは言った。
「命を助けてくれたんだ。
感謝を述べるのは当然だろう?」
ラストルは不思議そうな顔をして答える。
「相手は魔族だ。
それでも分け隔てなく感謝を述べれるって人間は、なかなかいねぇぞ?
良い人間にはこれをやろう。
ほれ、万能リンゴだ。傷が治る。」
ヴォーラスは魔界に生息する万能リンゴをラストルに手渡した。
「あ…ありがとうヴォーラス。」
ラストルは万能リンゴを一噛みする。
満足そうにそれを見るヴォーラス。
「さて、良い人間。
せっかくだから俺の城で飯でも食っていけ!」
ヴォーラスはラストルの背中をそこそこの勢いで叩いた。
「いや…それは…
(魔将の城に!?
いろいろとマズイだろ!?
しかし、無理に断って気分を害されるのも危険だ…)」
ラストルはペースを乱され続けていた。
「遠慮するな!
さ、行くぞ良い人間!!」
ラストルは半ば強制的にヴォーラスに連れて行かれてしまった。




