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「魔王の終活」   作者: クロネコ
32/60

32話 方針と実行 (勇)

教師デューダに命を狙われ、幸運にも一命を取り止めたラストル。

病室で目覚めてから、見舞いに来る様々な相手と対話し、3日が過ぎていた。

〜 首都ユーズ 国立中央病院 〜


「いったいなにをやらかしたんだい!?


たった3日間で骨は元どおりだし、焦げた皮膚は剥がれ落ちて綺麗になってるし、小さな傷も全部治っちゃってるし!


医者泣かせにも程がある回復スピードだよ!」


女医のメイズが叫んでいる。

包帯で誰かわからない程、ラストルの身体は3日で元どおりになっていた。


骨の魔物ヴァンが持ってきたリンゴのせいだとラストルはすぐに思った。


「…まぁいいわ。


治ったのなら、もう来ないように気をつけて生きなさい。


治療費は君が仕事に就いて、住む場所が見つかってからでいいから慌てなくてもいい。


とりあえず我々ができることはここまでだ。

今後の事は国に相談するといい。」


ラストルに手渡された明細は、状況を考慮され額は少ないもの、無一文(むいちもん)の彼には酷く高く思えた。


ラストルは女医のメイズに礼を言い、病院を後にした。


そのまま、郊外にある一本の木が生えた丘へ向かう。

彼は退院した時、とりあえずそこに行く事を決めていた。


いつも通り木の上には、黒フードのついたジャケットを着ている骨の魔物ヴァンがいた。


「よう!意外とはやく治ったな!

待ってたぜ?」


ヴァンは来るのが分かっていたように、ラストルを見ながら木から降りた。


「あのリンゴのせいだろ。

なんだありゃ」


ラストルは大怪我が3日間で治ってしまったことを、ヴァンが食べさせたリンゴのせいだと思い、聞いた。


「へへへ、バレたか。

あれは魔界領域に生息する万能(ばんのう)リンゴさ。


食えばたちまち身体が治っていく超回復薬だ。

これを求めて魔界領域に足を踏み入れる命知らずもいる。」


ヴァンは笑いながら言った。


「そうか、ありがとな。

おかげで入院日数が減ったよ。」


ラストルはヴァンに例を言った。


「それは何よりだ!

さて、これからどうするか決まったか?」


ヴァンは草の生えた地面に座りながらラストルに聞いた。

ラストルもその隣に座る。


「あぁ、3日間どうするか考えてた。


俺のゴールは誰にも負けないくらい強くなることだ。その強さで困ってる人を救いたい。


そこに到達するために出てくる課題はザックリ2つ。


1つ目は俺を殺しにかかったデューダ…あの男を追う。


2つ目は…オリビア。車椅子の女の子の足を治せる復活薬を探す。

…これは、昔からの約束だからな。


この課題をなすためにはまず戦士になって、金を稼ぎながら力をつける必要がある。

だからまずは戦士になる。


こんなところかな?」


ラストルはまとめながら言った。

ヴァンは首を縦に振りながら聞いている。


「だいたい方針が固まったな!


そこで以前言ってた俺からのお願いを一つ聞いてくれないか?


なに、難しいことじゃ無いさ。

お前の課題の1つに加えてくれるだけでいいんだ。」


ヴァンは骨の指を1本立てながら言った。


「お前には世話になったから多少のお願いなら聞くさ。で、なんだ?」


ラストルはヴァンに尋ねた。


「魔王を倒してくれ。」


「いや、無理だろ。」


ヴァンの頼みにラストルは一瞬で否定した。


「流石にできねぇよ…あの魔王だろ?

俺はただの一文無しの一般人だぜ?


魔族の王なんかに勝てる気なんてしねぇよ…

そういうのは、勇者の役目だ。」


ラストルは諦めた様子で言った。


「魔王を倒さずして、誰よりも強くなれると思うか?

だとすればお前の考えは甘いぜ。」


ヴァンはニヤニヤしながら指摘した。


「そんなお前さんに、病室で言ってたいい事を教えてやるぜ。


若いうちの勇者ってのは、''世界の加護''っていう運命を()じ曲げるくらいの結界を生まれながらにして持ってるらしい。


世界が決めた事を成し遂げるまでは、世界が勇者を殺させないんだそうだ。


具体的には致命傷の傷もわずかにズレたり、ナイフで心臓を刺そうとしたりすれば、新品であろうが偶然壊れたり…


どうだ?

お前を何度も殺そうと試みた奴の思考が見えてこないか?」


ヴァンの話にラストルは聞き覚えがあった。


「"傷はつけられるが、殺す事はいかなる方法においても無意味だった''

…確かそんなことを言っていた。


まさか、俺が勇者の持ってる"世界の加護''を受けているかどうかをデューダは試してたっていうのか?

一体なんのために?」


ラストルはヴァンに尋ねたが、ヴァンは両手を上げ首を横に振る。


「さぁね。それは本人に直接聞くべきだ。

しかし、もし仮にお前さんが勇者としての素質があるなら、必ず魔王を倒すことができる。


世界を恐怖に陥れる魔王を倒すことによって、お前さんの目標にした''強くなって人を救う''という目的は達成されるわけだ!」


ヴァンは興奮しながら言った。

しかし、ラストルは気がかりだった。


「俺が勇者?ありえねぇよ…


勇者なら今頃、王様の下でバリバリ働いてて、愛する者の為に戦う、強くて頭のいい…

そう、アイツみたいな人間のことだ…」


ラストルはふと、ケイロンの顔を思い浮かべた。


「それに魔王ってお前らのボスだろ?

なんでそんなに倒されて欲しいんだ?」


ラストルは気がかりな事を聞いた。


「言ったろ?

俺は双眼鏡しか持ってないただの骨だぜ?


人間も、弱い魔物も、みんなうちのボスは蹂躙対象(じゅうりんたいしょう)なのさ。


暴君ってのは身内もキチィのさ。」


ヴァンはため息をつきながら言った。


「ヴァンみたいな魔物も居るんだな。


魔王を倒せるかどうかはともかく、お前の言う通り絶対悪が存在する限り、いくら人を救ってもダメなのはわかった。


デューダを捕まえる課題と合わせて、魔王について調べてみるとするよ。」


ラストルは控えめに言った。


「ああ!むしろ俺みたいな魔物は山ほど居ると思うぜ?

人間と組んで打倒魔王を掲げるやつもいるくらいだからな!


よし、そうと分かれば早速行動に出よう!

まずは、戦士になるんだ。


首都ユーズの戦士登録デスクへ向かえ。

訓練戦士の申請をすれば寮に入れる。

それでとりあえず衣食住の問題は解決だ。


訓練中に現役戦士達とミッションを行い、報酬を得る。

独り立ちできれば、より高いレベルのミッションを受けられる。

金は手に入るし、力もつく。


当面はこんなところか?」


ヴァンはスラスラと戦士について話した。


「なんでそんなに詳しいんだお前…」


ラストルは驚いていた。


「それは秘密。


さぁ、戦士登録デスクは常に開いている、一文無しと嘆く前にさっさと行こうぜ!」


ヴァンは立ち上がり、骨の手をラストルに差し出した。

ラストルはその手を掴み、立ち上がった。


2人は戦士登録デスクへ向かう。


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