表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王の終活」   作者: クロネコ
20/60

20話 八年と卒業 (勇)

最後の魔王と名乗る者の戦線布告から8年の月日が流れた。

世界の様子はガラリと変わる

最後の魔王の戦線布告から8年が経過した。


状況は大きく変わった。


魔王は宣言通り侵攻を開始し、人間の戦士達は魔族の圧倒的な強さの前に、退却を余儀(よぎ)なくされた。


世界の4分の3は絶対魔界領域に成り果て、難民は堅固な国へ大挙して押し寄せる事態となる。


〜 円形王国都市 首都ユーズ 国立ユーズハイスクール 〜


円形王国都市の中は、外部の荒れた状況に対し、比較的に平和だった。

都市の一角に建つ荘厳な建物がある。


国立ユーズハイスクールは名門である。

一度卒業すれば、将来が約束されるとまで言われる学校であった。


多くの学生がハイスクール内にある卒業式場で綺麗に整列し、着席している。


「…なぁ、卒業生の答辞を読むのって学校成績のトップだよな?


なんで2人いるんだ?」


学生の1人が隣の学生に小さな声で尋ねる。


「お前…

学業成績の主席と、戦業成績(せんぎょうせいせき)の首席くらい覚えとけよ…


金髪のイケメン野郎はケイロン・ヴィスカーズ。

超絶金持ちのヴィスカーズ家の跡取りだ。

学業主席の頭脳派。

英才教育に英才教育を重ねたんだろうぜ?

いけすかねぇやつだ。


もう1人の黒髪のフツメン野郎はラストル・リーベルト。

こいつの家はよく知らねぇな。噂だと両親が亡くなってて別の家に引き取られてるとか。

戦業に関しては主席の魔物絶対殺すマンだ。

俺も見たことあるけど、マジで強い。」


もう1人の生徒は呆れた顔で説明した。


「すげぇな…俺ラストルを応援しちゃうな!

ザ・平民の星!みたいな感じでさ!


でもよ?

この学校って総合評価だろ?

どれかが抜きん出て凄くても、あそこに立てなくね??」


尋ねた生徒は更に不思議な顔をして話す。


「はぁ…マジかお前…


学業主席がケイロン、2位がラストル。

戦業主席がラストル。2位がケイロンだからだよ!」


「お前たち。うるさいぞ。

厳正な卒業式なんだぞ。」


会話していた声を聞かれたのか、背後からやってきた教師に叱られた。

周りの生徒はクスクスと笑っている。


程なくして、卒業式が終わり教室で教師からの最後の挨拶を終えたあと、教室は緊張の糸が切れたようにお祭り騒ぎとなった。

そんな中ラストルは荷物をまとめ、1人教室を後にした。


身長は伸び、体躯はややたくましく、黒髪はくせ毛がつき、口数の少ない男になっていた。


ラストルは各教室が卒業生のお祭り騒ぎの中、1人で廊下を歩く。

目の前から女子生徒を引き連れた金髪の男子生徒が歩いてきた。ケイロンだった。


「やあ、ラストルくん。


結局僕は最後まで君に戦業成績はかなわなかったなぁ。」


ケイロンは長い金髪の髪の毛をかき上げながら言った。


「ケイロン。


俺も学業成績は最後までお前に勝てなかった。」


ラストルも気だるそうな顔で答える。


「君はこの先どうするんだい?


僕はヴィスカーズ家の代々の習わしに従って、王族の代わりに統治を代行する執政官になる予定なんだけど。」


ケイロンは自慢げに今後の方針を語った。


「俺はこのハイスクールに入る前からやる事は決まっている。


俺は戦士になる。」


ラストルは淡々と答える。

その回答にケイロンは驚く。


「戦士!?

君みたいな成績優秀な人間が戦士になるのはもったいないよ!


あれはね、生活困窮者や社会不適合者が一攫千金(いっかくせんきん)を目指すために簡単に命をかけて就く職業だよ。


国を守るという大義名分(たいぎめいぶん)で綺麗に隠された出来損ないの集団だ。

だから魔王の軍勢なんかに押されて退却を余儀(よぎ)なくされたんだ。


君はそんなところで危険でキツイ仕事をするより、王様の近くで安心して良い暮らしをした方が絶対にいい!


なぁに、僕らが生きてる時代には魔王が本気で攻めてくることは…」


ケイロンが最後の言葉を言い切る前にラストルは、鋭い眼光でケイロンに近づき、目の前で立ち止まる。


「なぁ、ケイロン。

お前、大事な人間や友達が目の前で殺された事あるか…?」


あまりにも恐ろしい形相(ぎょうそう)なので、ケイロンは息を飲んだ。


「な…無いけど?」


ケイロンは圧倒されながら回答する。

2人の様子を見た教室の生徒達が、廊下に出て集まりだした。


「なんだなんだぁ?

本校主席の御二方が一触即発(いっしょくそくはつ)みたいじゃん?」


「やっちまえラストル!

その男の敵みたいな奴を叩きのめせ!

平民の底力を見せてやれ!」


「はぁ?何言ってんの?

そんな、脳筋根暗なイモみたいな奴にケイロン様は負けないわ!」


廊下が(けな)し合い、(ののし)り合いの大騒ぎになった。


ラストルとケイロンは2人とも呆れた顔になっていた。


「何を騒いどるんだお前達!

卒業したんだからさっさと学校を出て行かんか!」


騒ぎを聞きつけた教師が怒っている。

ここでケイロンが手をあげる。

場にいた全員が何をするのか気になり静まり返る。


「先生!

卒業する前の最後のお願いがあります!」


突然のお願いに、教師は驚く。


「な…何かね?ケイロン。」


「最後にラストル君と、卒業最後の記念に模擬戦をさせてください!学生用修練場で!」


その場にいた生徒達から歓声が上がった。


「すげぇ!

主席2名によるガチンコバトルじゃん!

こんなの滅多に見れるもんじゃねぇよ!」


「ケイロン様!頑張って!」


勢いに押され、教師も渋々了承する。

生徒達はそれを見るや否や、猛烈な勢いで修練場の席取りに走る。


「やれやれ…

ああでも言わないと場が収まらなかったんだ。

君の用事も聞かなくてすまないね。

あと、気に触る事を口走ったようだね。

謝るよラストル君。」


ため息をつきながらケイロンはラストルに謝った。

ラストルは再び気だるそうな顔に戻った。


「ああ、構わないさ。

俺も高圧的な態度だったと反省している。


さぁ最後だ。

やるからには全力だからな?」


ラストルは廊下を歩きだし、修練場へ向かった。


「もちろん!

今日のこそは君に勝つよ!」


ケイロンは爽やかに笑いながら、ラストルに続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ