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「魔王の終活」   作者: クロネコ
19/60

19話 乱世と開幕(魔)

魔将ルーナに関して思い出話をする魔王ルシフェウスと魔導師グーシオン。

もともと人間の彼女に四苦八苦した過去を思い出しながら、彼女を認め、守り、支えようとと考えるルシフェウス。


そして、啓示を受けて動かなかった運命は動き出す。


〜 魔王城 玉座の間 〜


「魔王様!昨日は大変失礼致しました!!」


元気よく玉座の間の扉を開けるなり、頭が膝に着くほど下げ、魔剣士ルーナは魔王ルシフェウスに謝った。


「…いきなりなんじゃ!?

大声で入ってくるでないわ!たわけ!」


玉座の間に一緒にいた魔導師グーシオンは声に驚き、ルーナを(いさ)める。


「構わぬぞルーナよ。

余もお前の納得のゆく回答を出せずに、すまなかった。


お前の気持ちは余にはわかる。

魔将であるのに1人特別なことに悩んでいるのだろう?」


(…そうか、魔王様は先代の魔王ベイリアル様の力を引き継いで心が読めるんだっけ。)


ルーナは自分の心が読まれたことに驚いたが、すぐに思い出し返事をした。


「ふむ…余はな。

お前に死んでもらいたくはないのだ。


お前には余と勇者の争いが全て終わったあと、路頭(ろとう)に迷った魔族達を先導(せんどう)してほしいのだ。


お前は強い。

すでに1人で一つの軍を制圧できるほどの力を持っている。

そして、柔軟かつ繊細な行動もできる。


であるからこそ、これはお前だけにしかできない仕事として与えようと思っている。


いつか、余が言ったな。

滅びから(あらが)い、生き延びよと。

それを実行してみせよ。」


ルシフェウスは笑みを浮かべながらにルーナへ言った。


「魔王様…ありがたきお言葉!!


この魔将ルーナ。

そのご命令を必ずや実現してみせます!!」


ルーナは片膝を床につき、頭を下げた。

グーシオンも笑みを浮かべて頷く。


「さて、ルーナよ。

早速だが、バアン砂漠地帯で魔の者が何体か捕まっているようだ。


救いに行く。

同行せよ。」


ルシフェウスは玉座を立ち上がり、階段をおりる。

ルーナは驚き聞き返す。


「え…?


魔王様に同行してもよろしいのですか…??」


「たまには良かろう。何か不満か?」


ルシフェウスは驚いているルーナに対して、質問した。


「いいえ!是非お願いします!」


ルーナとルシフェウスは複転移(テレポート)の魔法でバアン砂漠地帯へと向かう。




転移先のバアン砂漠では、ルシフェウスが人間に圧倒的な力を見せつけ、ルーナは捕らえられた魔物を救い出した。


その後も事あるごとに、ルシフェウスとルーナは世界各地へと(おもむ)き、魔物の救出と破壊活動を行った。


やがて、人間世界では魔王の存在と恐ろしさが再び認知され始める。



数年の時は数年流れた。

自体は突然動き出す事となる。



〜 魔王城 玉座の間 〜


魔王ルシフェウスはいつものように玉座へ座っていた。

時を重ねる毎に、自分の身体を剣で貫かれるビジョンが鮮明になってくる。


「どうやら…私は、

この玉座の間で果てるらしいな…」


寂しい目で虚空(こくう)を見つめる。


「魔王様。グーシオンでございます。

お話がございまして…」


玉座の間の扉の向こうで、グーシオンの声が聞こえてくる。


「入るが良い。」


グーシオンは小さな身体を丸めるようにお辞儀をしながら入ってきた。


「失礼いたします…


予知水晶(よちすいしょう)で見たことを報告しようと思いますが、もしや魔王様の超直感の権能で内容はわかられますか?」


ルシフェウスは頷く。

グーシオンは再び頭を下げる。


「失礼いたしました。

それでは別件を。

実は、奇妙な事が起こっておりまして…


5代目の魔王ザーガン様が使役なさっていた巨人達ですが、全て厳重に封印されていたにもかかわらず、以前から数体目覚めたという報告が隠密諜報部隊おんみつちょうほうぶたいから届いておりました。


その都度彼らが鎮圧し、再び封印しておったのですが、ここ最近絶対魔界領域のみならず人間世界でも眠りに付いていた巨人達が一気に目覚めております。


他にも、3代目魔王のバラン様が使役なさっていた海竜リヴァイアサンまで、今ほど眠りから目覚めているようです。」


グーシオンは報告した。


「ふむ…ヴォーラスはなんと?」


巨人の管理は魔将のヴォーラスが引き受けていたため、ルシフェウスは尋ねた。


「ヴォーラス殿はこの件には全く関わっていないとおっしゃっております。


''なんか知らんが、朝起きたら巨人どもが目覚めてやがった!

どうすっかな!ガハハッ!''


と。

今はとにかく魔界領域で目覚めた巨人を沈めて回っているところでございます。」


グーシオンは少し、呆れた顔をしながら報告した。

ルシフェウスも呆れた顔をしながら、少し考えた。


「なるほど、ヴォーラスには隠し事のできる器用さは無い。

知らないと言うのなら、本当に知らないのだろう。


ましてや海洋の竜まで目覚めるなど、偶然にしてはできすぎている。

何者かの手引きがあったとして、間違いはないだろう。


…ふむ、どうやら今が頃合いのようだな。

この機会を利用しない手はあるまい。


グーシオンよ。

玉座の間に全世界に余の姿を投影できる魔法を展開してくれぬか?


準備に時がかかるであろうから、

余は蛮声の角笛(ばんせいのつのぶえ)で魔の者達に前もって周知をさせておく。」


「かしこまりました。魔王様。」


ルシフェウスは司令塔へ向かった。



〜 魔王城 司令塔 〜


司令塔に入ったルシフェウスは蛮声の角笛(ばんせいのつのぶえ)をいともたやすく起動した。


紫の禍々しいオーラを(まとも)った角笛の吹き口の前にルシフェウスは立つ。


「全世界の魔の者に告ぐ。


余は魔王ルシフェウスである。」


ルシフェウスの声が、全ての魔の者達の頭へ直接響いていく。


「幾たびか、余は諸君らに啓示(けいじ)により勇者に討たれる話をしてきた。


それに対する策に関して余は何度か語ったと思うが、その最初の段階に入る。


余はこれより先は暴君として振る舞わねばならぬ。

諸君らには多少の気苦労はかけると思うが、どうか許してほしい。


現在太古の巨人が目覚め、無差別な破壊行動を行っている。

被害に合わぬよう、しばし身を隠せる場所に避難をしてほしい。


然るのち、余が人間達へ戦線布告を行う。


その後こそが、人間達と協力できるチャンスとなろう。

何、心配する事は無い。

全ての悪評を、余に集めよ。


手順は毎度余が伝えたようにするが良い。


以上である。」


ルシフェウスは角笛の起動を終了した。

その場で大きく深呼吸をし、再び玉座の間へ戻った。



〜 魔王城 玉座の間 〜


ルシフェウスは玉座の間の扉を開けた。

グーシオンが汗をかき、息切れをしている。


「ハァ…ハァ…魔王様。


全世界への投影魔法。起動準備完了いたしました。フゥ…


いつでも…全世界への放映ができます。」


グーシオンは魔力の枯渇(こかつ)を引き起こしていた。

ルシフェウスは、グーシオンに歩み寄り労った。


「よくやってくれたグーシオン。

禁忌(きんき)までとは行かぬが、複雑に魔法を組み合わせて全世界への放映など、並大抵ではできぬ。


しばし休むと良い。」


グーシオンは辛そうに頷くと、その場へ座り込んだ。


ルシフェウスは玉座へ向かい、腰を下ろした。

玉座の間全体が自然と暗くなる。

ルシフェウスは目を瞑り、一呼吸置く。


「人間諸君。聞こえているか?


余は最後の魔王である。」


ルシフェウスによる、人間、魔族を恐怖に陥れる戦線布告が始まる。

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