21話 魑魅と魍魎 (魔)
魔王による人間達への戦線布告が行われた。
人間達は混乱した状況の中、魔王城には戦線布告を皮切りに、多くの魔物が集結する。
魔王ルシフェウスによる戦線布告から数日後。
魔王城の前には魑魅魍魎と呼ぶに相応しい数々の魔物達が勢揃いしていた。
その各々が鎧や武器を装備し、魔王城を見つめている。
「魔王様。
なかなかの数が揃っております。
全国各地の戦いに飢えた心強い有志達です。」
魔王城の渡り廊下のガラス窓から、魔導師グーシオンは外の光景を見ながら言った。
「すっごい数ですね〜
これならすぐに人間達を制圧できそうな気がしますけど…」
魔剣士のルーナは数に驚きながら呟く。
「全国の魔の者はこんなものではない。
ここに集まったのはほんの一部に過ぎぬよ。
だが、彼らは目的はどうあれ余と共に戦い、命を燃やす事を選んだ愛すべき者達だ。
…さて、行くとしよう。」
魔王ルシフェウスは渡り廊下を歩き、外を一望できるテラスへ向かう。
ルシフェウスの姿が見えるや否や、外の魔物の群勢は一気に静かになる。
ルシフェウスは静かにその光景を見渡した。
「魔王様、拡声の魔法はすでに発動済みでございます。
いつでもどうぞ!」
グーシオンは促した。
ルシフェウスは頷き、深呼吸をした。
「余の呼び声に答えてくれた、勇敢なる同志達よ!
よくぞ集まってくれた!
再度名乗ろう!余は魔王ルシフェウスである!!」
ルシフェウスの語りかけに、群勢からは大歓声があがる。
獣の姿の魔物は吠え、声の出ぬものは身体を振るい、話ができる魔物は叫んだ。
「今!
余は正式に最期の人魔大戦の戦線布告を人間達へ行った!
しかし、この戦いはまごう事なき負け戦!!
お前たちは死に、余も勇者に倒される結末を辿るであろう!!
…それでもなお、余と共に戦ってくれるというのならば!
貴殿らの歓声によってこれに答えよ!」
再び、魔物の群勢からの歓声が上がる。
その音圧は魔王城の窓を揺らし、立っている者は身体が揺らぐほどの圧だった。
「…貴殿らの勇気に心から感謝する!
我らが魔族の種を根絶から守るため、余と共に命を捧げてくれ!
この地へ到達できなかった者も、各魔将の城にて余の言葉を聞いている事と信じている。
さて、準備は良いか!
これより、絶対魔界領域と人間界の境界線へと進軍する!
魔将の城にいる者も、人間界との境界線へ魔将と共に進軍せよ!
こちらの先陣は余が行く!
…なに、案ずることはない。
余は啓示により勇者の手にかかり、我が魔王城の玉座の間にて果てる。
つまり逆を言えば、それ以外の戦いで死ぬ事は無い!!
余の後ろから続け!!」
3度目の歓声が上がる。
ルシフェウスは片膝を地につけ、身体を伏せた。
折りたたまれた巨大な6枚の蝙蝠の羽は開かれた。
「魔王ルシフェウス様…
何卒、ご無事で!」
グーシオンは跪く。
「魔王様!
私が行けないのは非常に心苦しいですが、この城は絶対に死守しますので、ご安心ください!
行ってらっしゃいませ!」
ルーナも元気な声でルシフェウスに言った。
「うむ。この城の守りは任せた!
行ってくる!」
ルシフェウスは羽ばたき、空を飛んだ。
持っていた黒い剣を引き抜き、前方の空間を切る。
そして上空で魔方陣を形成した。
魔方陣はそのまま淡い光を発しながら巨大化し大きな穴となった。
「軍団転移!!
無詠唱であれだけ巨大な転移門を作れるとは!
さすがは魔王様!!」
グーシオンは興奮している。
群勢の真後ろにあたる場所に形成された転移門の前にルシフェウスは降り立ち、剣を高く上げた。
「さあ!猛者達よ!進軍せよ!!
続けッ!!」
ルシフェウスはそのまま転移門へ向かって勢いよく飛び、穴の中へ消えた。
魔物の群勢は雄叫びをあげながら、次々と後へ続いた。
行く先は、絶対魔界領域と人間界の境界線。
〜 コンフリクト ライン 〜




