脅迫文書
いつも通りの朝5時訓練はなぜか今日はなしだった。
竜輝はいつものように訓練ルームに行けばだれもおらず困惑しながら首をかしげ端末を確認すると「訓練は休みよ」という伝達が柚葉から送られてくる。
どちらにせよ夜中のことがあって顔を合わせづらかった竜輝にしてもよかったというべきか。
何にせよ寝不足気味な眼を強引に持ち上げるようにして朝の登校である。
さすがに眠気との戦いはつらい。
幾人もの女生徒からの挨拶運動が朝の目覚めにはちょうどいい体操となる。
しゃべってればそれなりに眠気も改善されていた。
どしんと重みがのしかかり竜輝はその重みがかかる両脇に注目する。
まるでカップルの登校だと見えなくもない突然の出来上がった状態に動揺をした。
「おい、二人とも」
「うぁあ」
「ごめんなさい、少し寝不足気味でして‥‥してぇ‥‥」
愛華と美香が竜輝の体に再度もたれかかり睡眠に入る。
相当な寝不足だ。
竜輝自身もほとんど寝れず寝ないで登校してるものである。体調を壊しかねない状態であり任務に支障をきたす可能性すらあり得る。
「みなさん、起きてくださいよ」
元の良い美貌がひどいクマで台無しな顔をこちらに向けて起床を促す。
けれど、寝ながら器用にも二人は歩いていた。それも人の肩を借りて。さすがに周りの生徒たちも黄色い声やら噂を広め始める。
ますます注目度が上がってしまいかなりまずい。
「ふ、二人ともさすがに頑張ってくれぇ」
「いやなの」
「いやですよー」
美香までも今日に限ってはわがままを言うのでさすがに竜輝もお手上げの前に驚きだった。
ここまで聞き分けのない人ではないのが竜輝の知ってる美香である。
「私だって甘えたいなの」
「そうです」
「へ?」
「なんでもないなの」
「そうですよー」
なんだか子供のようにひねくれた発言な気がしてならない。
正門に近付くと蓮杖鈴がすごい鬼の形相でこちらを見ていたことに感づいた。
徐々に足取りは重くなる。
「なあ、二人とも。俺は一応ここの教官なんだ。生徒とこういう関係だという噂が立つのは非常にまずいわけで」
「運勢教官!」
手遅れであった。蓮杖鈴は腰に帯銃を変わらずしておりどしどしと勢いのある剣幕で近づいてくる。
さすがに終わったと確信した。生徒の大多数がその蓮杖の姿におびえ切って逃げるように学内へ走ってく姿が覗える。
「あ、いやぁ、そのねぇ」
「教官、こういう生徒との不埒な行為は問題になるとわからないのか! 九条責任者にこの問題は通達させてもらう」
風紀顧問としての威厳を正すべくした発言をし、こちらの行いをすぐに指摘をし上に伝達することで威圧をしてきた。
だけど、それをしたところでこちらには害はないのである。九条責任者にとってこちらはいてもらわなければいけない存在。
「通達したところでどうにもならないなのぉ」
愛華が寝ぼけながら寝言のように言ってはいけないことをいってしまう。
柚葉がすぐに愛華の体を竜輝から引きはがした。
「どういう意味だ?」
「寝言ですよ、寝言よ先輩。あはは」
柚葉が必死に取り繕い愛華に怒りのアイアンクローをくらわしていた。さすがの痛みに愛華も絶叫をあげながら目を覚ました。
「いやぁあああああああああああああ」
この絶叫は愛華からのものではない。
学内のほうからだとすぐに悟り全員が急いで学内に駆け込む。
女子棟の入口付近に人だかりができていた。
「通せ、風紀事業のものだ」
蓮杖鈴が人だかりをかき分けその奥へ奥へ進み、竜輝も美香につき離れてもらい教官であることを利用し彼女たち人だかりを抜けて通る。
入口のちょうどある生徒の靴入れの中だった。その中に悪質思えるように誰かの手が入っていた。
そうまさに手である。
「うぅ‥‥」
被害にあったらしい女生徒は泣き崩れうずくまり呻いていた。それを看病し蓮杖鈴はこちらへ向く。
「教官、この件は任せてもよろしいか?」
「ああ、任せろ」
彼女を保健室まで連れてく蓮杖鈴。それと行き違いで数名の教官も駆けつけ現場を見て顔を渋面化させ口元を押さえる。
靴入れにはハエがたかりウジ虫まで沸いている。切断面はもう腐食が進行してるのだ。
「はーい、みんなはさっさと教室へ行きなさい」
数名の教官が生徒の群れを散らして工藤教官が靴箱の中を調査する。
その時だったいまだに残っていた柚葉が「うそ」とひきつったかのような声をあげたことに全教官が訝しみ注目をした。
「その隣の靴箱私よ」
「なに?」
竜輝はさっそく、となりを確認すれば確かに彼女の上履きが入っている。
明らかにある種の想像ができた。
「おそらく、相手は柚葉ちゃんに恐怖を与え刺激をしようとしたのでしょうけど間違えて別の女生徒の靴箱に入れてしまったと考えるべきかしら?」
同様のことが浮かんでいた竜輝の思考を読み取ったような発言を美香が宣言した。
「どういうことですかい? こりゃあ、あなた方にあてた宣戦布告だとでも?」
工藤教官がこちらへ振り向き説いてくるのに迷わずうなづいた。
「工藤教官もわかるわよね? 明らかに一般生徒でこんな悪質な嫌がらせはしないはずよ。これはそう考えたほうが妥当じゃないかしら」
「うむ、たしかにそうだといえなくもない」
中には「けど、考えすぎでは?」と訴える教官もいた。
「考えすぎ名はずはないっすよ。見てわかる。その手は大人の手だろう。あと、工藤教官、上に張り付けてあるものを取っていただけないっすか」
「え? なんじゃと」
工藤教官が靴入れのうわべをのぞき見るとそこに便箋が張り付けてあった。
「これは?」
「相手さんからの挑戦上ってところだろうな」
工藤教官から便箋を受け取り、中身に買ったなどの仕込みがないかと注意しながらゆっくりと封を切る。仕込みナイフはないが中から一枚の紙が出てくる。
『次はお前だ、世界共存同盟軍柚葉雪少佐。これは本の序章に過ぎないぞ。
byハルツ』
まさに柚葉宛ての脅迫文章だった。
ぞっとするような感覚とはまさにこのことだと実感させられる。
「どういたしたんですか?」
やっと、この施設の管理者が到着し――
「九条責任者、お話をよろしいですか?」
美香がそういってさっそく対応策会議が始まろうとしていた。




