星の告白
夜中の2時。
いろいろなことが起こって疲れた体を休めて就寝をしていたがふと、目が覚めた。
寝室で眠ることはせず今日は他3人も竜輝の部屋にいるためにリビングで眠っていた。
窓を開け、リビングに出て夜空を見上げる。
どうにも寝付けなかった。
あの恐怖の惨劇と記憶が鮮明に蘇る。
数十年間の恐怖の連続の悲劇。
愛する者や信じるものをすべて失ってきたのがフィリアスの生活。
地球ではあの秋葉原の襲撃事件が最後の記憶であったことにメンタルは壊れた。
けど、今はどうだろうか。自分の寝室で眠る3人とここ数日だけ過ごしたにすぎないのだが変わってきてる自分がいる。
おかしな話だなぁと月明かりに照らされるように輝く自分がいる。
「眠れないの?」
少しばかり体がビクッと震え、後ろを振り返る。夜闇の中でもそのきれいさが際立つ美貌をもった柚葉の姿。
その彼女の金髪は月光で輝きさらさらと光のしずくが舞う幻覚を見る。
まるで、夜闇の妖精。
彼女の姿にその時違和感を感じる。
耳が長く見えた。まるでエルフのように。
「ん?」
目元をこすってみてもそれはかわらない。
「どうしたのよ?」
「いや、その耳」
「え?」
彼女は顔を真っ赤に染め、耳に触れ何やら動揺した。
数瞬後にはいつもの人間と同じ形をした耳である。
気のせいだろうかと小首をかしげた。
「耳がどうかしたの? なに耳ふぇち?」
「あ、いや、気のせいみたいだ」
「へ、変態ね」
声は裏返り何かを必死で隠そうとしてるようにも見えた。
(気のせいだろう)
彼女がエルフなはずはない。
ここ最近の彼女はずっと人間であり、フィリアスが人間の姿に疑似的魔法をかけるのにも継続時間はある。その時間ももって2,3時間と竜輝の記憶にある書物ではなっている。
彼女が傍らに立ち、同じように夜闇のまばゆく星の空を一緒になって眺め「きれいね」とささやいた。
「任務のことなんか忘れるくらいに」
「だな」
「ねえ、フィリアスってどんなところだったの? 私はあの時はつかまってほん2日しかいなかったしまともに観光なんてできなかったわ。長い時期いたあなたなりの主観的感想を聞きたいわ」
突然、質問の言葉に戸惑い動揺し、言葉に詰まる。
主観的感想など「最悪」の一言で片づけられるがそうとは言い切れない部分もあった。場所によってはしっかりと竜輝に優しくする場所もあり人もいた。
「善悪、愛と憎しみ、絶望と歓喜、いろんな感情が混とんとして混じり合っていた世界かな」
「は? なにそれ。中二臭い」
「う、うっさいわ」
顔中赤面で手で覆い隠し、なれないようなことを考えてその記憶が言葉になって流れる。
「だけど、俺にはそうとしか言えない。俺だってあの世界でまともな生活をしていたわけじゃない。そりゃあ、いろんな国を見て回って任務をしていた。この手でいろんな奴を切って殺した。善悪関係なく。俺はさんざんイグサに操られてきた。イグサもまた操られていたにすぎなかったんだけどないま思えば」
「あなたがつらい目に逢ってきたことは知ってる。いえ、それもすべて私の――」
「あ? なんでお前が」
「いいえ、なんでもないわ」
「よく分かんねえな」
彼女が言いかけた言葉は気にかかるがそれ以上言わせようとはしなかった。本人を無理やり吐かせようとするのはどれだけいやなことは竜輝はあちらの世界で十分に経験している。
一種の拷問なのである。
「そういえば、爆破の時ありがとう。私たちを助けてくれて。感謝してる」
彼女は胸を抑えながらそっと息を吐き笑顔浮かべながら答えた。
一瞬どきりとし鼓動が早まるが頭を振って「当たり前のことしたんだよ。感謝はいらない」とすこしキザったいセリフを吐いてしまう。
自分でもそのことばはやけにはずかしかった。
けど、彼女は笑うことはせず首をことんと肩に額を預けた。
「おい」
「うぅ‥‥ひぐっ‥‥ぅっ」
地面に涙がキラキラと落ちていく。月のしずくのように。
ひたひたとぬれていく床を見ないように竜輝は彼女の鳴き声も聞かないとばかりにそっぽを向いた。
彼女の言葉の端々から漏れるは「どうして‥‥戦争しなくちゃ」などとか恐怖におびえるような愚痴が漏れ出ていた。
爆破のことがやはり怖かったのだろうことは明白だった。
それは竜輝もである。
寝付けなかったのも恐怖であろう。
次第に落ち着いたのか彼女は泣きやんだ。
「ごめんなさい。みっともないわねあんたみたいなやつの肩借りて泣くなんて」
「いや、いいさ。俺だって怖い。いくら戦争を体験してもいつだって命の取り合いというのは怖いもんだ。それに目の前で人が死んでいくさまを見るのはもっと怖い」
「あなたみたいな強く優しい人間がいれば世の中平和的に行くのかしらね」
「優しい? おれはフィリアス人を憎んでたんだぞ。やしいはずはない。柚葉や愛華に美香姉さんに諭されて考えを変えたにすぎないんだ。地球という世界を愛することや共存という世界を愛することができ始めている。優しいっていうなら柚葉や愛華に美香姉さんたちのほうだよ」
実に自分でも驚くような言葉を先ほどからいってるなぁと心の奥底で確信しながら竜輝は眼を伏せた。今の自分はどこかおかしいと熱意に言える。
「ねえ、こっちを向いて」
「ん? ――っ」
口元に柔らかな感触が伝う。
初めて感じるその感触に竜輝はわが目を疑う。
「お礼よ。馬鹿。私は自分の部屋に戻るから。おやすみ」
彼女はそういってベランダからいなくなり玄関扉のしまる音が響く。
竜輝はしばらくぼうっとしながらその背を見ていた。
そして、またそれを見ていた愛華や美香もいた。




