第二話 見習い騎士帰還。
ワグナー伯爵領ジョストン
領内で一番栄えた街であり
私達が所属している黒羊騎士団の本部がある。
つまり私たちの本拠地だ。
私たちは先ほどの件を本部に報告しに帰還していた。
「グランドライガを討伐した!?」
アレクの報告書を読んだグアルダ隊長が大声をあげる。
「はい。なので、事後処理班の派遣を宜しくお願いします。」
アレクは対照的に冷静に事務的に喋る。
「あのなー!そんな化け物斬ってどうすんの!逃げなさいよ!事後処理大変なのよ!」
上司の大声に私は身をすくめる。シドとアレクは慣れっこなのか平然としてる。
「いえ!全然逃げれませんでした!」
シドが負けない大声で言い返す。
「嘘つくな!お前はグリフォン討伐した時も戦闘で村を半壊させたり、盗賊団とやり合った時も街の真ん中で大立ち回りしたり、派手にやり過ぎなんだよ!だいたいお前はなー!」
「おっ、また若いのがなんかやらかしたか。」
隊長の大声を制する様に聞こえた声に私は思わず身構える。
「お疲れ様です。ハウザー団長。」
「おう。お疲れ。」
色黒のがっしりした体躯に威圧感を纏う男。
黒羊騎士団団長 ハウザー・クロード
私たちのボスだ。
「状況は?」
隊長から受け取った報告書に目をやりながら団長が聞いてくる。
「セー二ャ村にて開拓任務に当たってる際に子供が魔物生息地区に迷い込んだと報告があり探索。
そこでライガの群れに遭遇。これを殲滅いたしました。以上です。」
アレクが報告書の通りに報告する。
「そして、グランドライガをぶった斬ったってわけか。」
三人共団長の言葉に沈黙する。
「そうなんです!グランドライガクラスの魔物は本来討伐の是非を協議し討伐隊を組んで討伐するものです。団長からもご注意を!」
隊長が矢継ぎ早に続ける。
「構いやしないよ。こいつが化け物を狩る化け物ってことだけの話だ。」
隊長の言葉に薄ら笑いを浮かべながら団長が反論する。
「しかし、シド。お前みたいなやつがなんでこんな辺境の騎士団にいるんだ?」
「採用試験に合格したからです!」
そりゃそうだろ。
「そりゃそうだが。」
団長が私と同じことを言っている。
「お前みたいな化け物。
品位も求める中央からはお声が掛からないのも分からなくもないが黒狼あたりはほっとかなそうだが。」
黒狼騎士団。三大騎士団の一つ
西の都リビッドシュタインを守護し圧倒的実力主義を敷いていると聞いている。
「俺は黒羊ですよ。」
シドの返答に団長はそうかと笑って追求をやめた。
「三人共ご苦労様。次の任務があるまでゆっくり休んでくれ。
あと配給係に行って報奨金の手続きも忘れずにな。」
団長は報告書を隊長に返すとそう告げた。
踵を返す団長に私たちは頭を下げる。
***
「よし飲みに行くぞ!」
騎士団本部を出た直後にシドが言う。
「嫌よ!任務から帰ってきて疲れてんのよ。」
どこにそんな元気があるのか。私はもうヘトヘトだ。
「なんだよ!マナ、先輩の誘い断んのかよ!」
ブーブー言ってる。
「先輩の癖に毎回誘うな!アルハラで訴えるぞ!」
「だって、寂しんじゃん!お前がいないと!」
うっ、シドが真っ直ぐな目で言ってくる。
この裏のない言葉に私は断れず結局毎回飲みに行ってる。
「マナ、今日は飲みに行くぞ。」
珍しい。いっつも何も言ってこないアレンが誘ってきた
どういう風の吹き回しだ。
「今日は、お前の記念日だからな。」
記念日?
「マナがその剣で初めて守った。騎士として。その記念日。」
あっ、そっか。
私、今日守ったんだ。
この剣で。騎士として。
胸にある黒羊の紋章に触り少し目を閉じた。
目を開いた先には不器用な笑みを浮かべいる
先輩騎士が二人いた。
私は観念したように歩き出す。
今日はとことん飲んでやる。
「記念日っていうくらいなんだから奢りなさいよ。前みたいに割り勘お断りだからね!」
「それはお前が高い酒ばっか飲んで俺の手持ちが無くなったんだよ!」
「飲め飲め言ってたじゃない!お金ないなら止めなさいよ!」
「早く行こうぜー。いい店埋まるぞー。」
ジョストンの街が夕暮れに染まっている。
気づけば体にあった疲労が少し軽くなっていた。




