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見習い騎士だって大変なんです。  作者: MAQ


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第一話 晴れて見習い騎士になりまして。 

挿絵(By みてみん)

私の名前は“マナ=カトレア”性別女。


士官学校を卒業したばかりの18歳。


最終学歴はウェストン女子士官学校卒業。


そして今、私が所属しているのは、ワグナー伯爵直属騎士団の『黒羊騎士団』


騎士団のランクとしては、ニ流と三流の間くらいの所。


私の本望としては『中央王都騎士団』とまではいか無くても。


世にいう三大騎士団や憧れの人がいる銀獅子騎士団などの世にいう一流騎士団と呼ばれている所に行って両親を安心させたかった。


しかし、三流の士官学校出身で女ともなればそれは中々厳しい話だった。


でも、騎士大国と言われるほど騎士が溢れかえっているここ“デュランディア王国”では女騎士も少なくは無い。


さらに、騎士全員の憧れ“六門騎士”の中に女流騎士が居るのもまた事実である。


ちなみに私もその人に憧れて騎士を目指した一人なのだ。


まぁ、その話は置いといて。


ともかく私は理想とは違えど、昔からの夢だった騎士になれたのだ。


だが、その実態はこれまた理想とはかけ離れていた。


そして、私が牛の乳を搾っていた話に戻る。



***



「うげぇ。べちゃべちゃじゃん。」


私は飛びちったミルクをタオルで拭く。


軽装ながらもしっかり『黒羊騎士団』の紋章が入った鎧。

立派な剣も帯刀している。


昔から思い馳せていた騎士の姿だ


しかし、今の私は騎士の姿をしながら、牛の乳しぼりの不始末で鎧に飛びちったミルクを拭いている。


昔の私が今の滑稽で不格好な私の姿を見たらどんな反応をするだろう。


きっと、ショックで卒転してしまうと結論が着いた。



「もっー!嫌っ!」


色々な感情が入り混じって、気付けば声を荒げていた。


「モーッ。」


「うるさいっ!真似すんなし!」



「うるさいのはお前だよ。」


私が牛を罵っていると宥める様な声が聞こえて来た。


「あによ、アレン。なんか文句ある?」


横槍を入れて来た優男風の騎士は私の先輩騎士にあたる。



名前は“アレン=ロートレック”年は23才。


何処と無く、ふわふわしてる感じがありあまり先輩っぽくないが

見習い騎士の私とは違い立派な『正騎士』であり

私の教育係でもある。


「先輩には敬語な。

後、牛くせーから早くしろよ。」


アレンがだるそうに言う。

先輩っぽくないくせにやたら先輩をアピールしてくるのはいつもの事だ。

口癖は先輩を敬えである。


「アレンこそ突っ立てないで手伝ってよー

あとそこのバケツで終わりなんだから。」


私は駄々を捏ねる様に言ってみる。

別に私はアレンをなめてる訳ではないのだが、アレンと喋るといつもこんな感じになってしまう。

アレンがふにゃふにゃしていて親しみやすいからかもしれない。


「はぁー?やだよ。

お前の仕事だろ?んなんじゃ出世できねーぞ。正騎士なれねーぞ。」


語尾にやーいやーいとまるでいじめっ子の少年Bみたいな喋り方でやじってくる。

私には全くノーダメージだが。


「うるさいなー

アレンになれたかんだから私もなれるもん」


「じゃあ、先輩の仕事取るくらいの勢いでこいよ。」


「先輩の仕事って草刈りの事?」


私は皮肉を込めて言う。

アレンの担当は庭の草刈りだった。


「そーだよ。

でも、俺はお前より仕事早いからな。

正騎士だからな。

もー終わったんだよ。」


アレンは私の皮肉を軽く受け流すと

木陰に座り紙を広げる。


「けーっきょく手伝ってくんないのね。」


「あぁ。俺が先に報告書書いとくから

さっさと終わらせてくれよな。」


そう言うとアレンはスラスラと報告書にペンをはしらせる。


アレンが手伝ってくれないのを察した私は作業に戻る事にした。


まぁ、アレンが早く上がれる様に報告関係をやってくれてるのはありがたい事だし。


私もその思いを無駄にする程人の思いが汲めない人間ではない。


やりますよ。

牛の乳搾りくらい。

騎士の誇りにかけてねー


「もーちょいだからね。

頑張ってね牛さん」


「モー」


私が語りかけると牛が勢いよくミルクを出す。


この調子だと思ってたより早く終わりそうだ。


でも、早く帰れる希望が湧けば

後一人のパーティーが何をしてるのか気になってくる所だ。


「ねぇ、アレン。

シド何してるの?」


「あぁ?知らねぇ。」


アレンは報告書から目を離す事なく答える。


「知らない!?じゃあ

シドがちゃんとやって無かったら意味ないじゃない!」


私は声を荒げる。

それと同時に搾乳に力が入り過ぎて勢い良くミルクがバケツに注がれる。


バケツが一杯になる

ミッションコンプリート。


「あぁー!

疲れたー。」


私は自分の役割を終えて

その場に横になるどっと疲れが来た。


帯刀した剣を使う事もない。

鎧は牛のミルクでべちゃべちゃ。

私が思っていた騎士らしい事は何もしてない。


なのに

私の体は疲労感に包まれていた。


私………何やってんだろ。

晴れ渡った青い空は何も答えてはくれない。


気持ちの良い風が頬を撫でる。

瞼が重くなってくる。

私も抵抗する事なくそれに従う。


「ハハハー!待てよーツンツンの兄ちゃんー!」


無邪気な子供の声に私の意識が少し戻る。

それより気になるワードが私の頭を反響する。


“ツンツン”


「待たねーよ!

お前ら本気で叩くから嫌だもんねー!」


それより無邪気な聞き覚えのある声に私の意識は覚醒する。


「こらっ!シド

あんた何遊んでんのよ!」


私は立ち上がって目の前で子供達とチャンバラに興じるシドに声を荒げる。


「よぉ、マナ

お前ドロドロだな。てか、牛臭せーな。」


シドは子供達の木刀の連打を軽く捌きながら答える。


シド=ハーグリープス

アレンと同じ正騎士でもう一人の私の教育係。

ツンツンの黒髪にライトブルーの瞳。


性格ははっきり言ってバカ。

でも、それに全然自分で気付いてない。


はっきり言ってアレン以上に先輩扱いしてない。

でも、シドは全然気にしてない。

いつも自然な態度は私にとっては好印象だ。


でも、だからって

こいつの天然を全て許していいわけではない。


「シド!

あんた薬草取りが仕事でしょ?終わったの?」


「んあ

まだやってない。こいつらと遊んでたからな。後で一緒に取りに行こうぜ」


ニカッと白い歯を見せる。


「丘サーファーみたいに笑ってんじゃないわよ!」


ドカッ!


シドの頭を鷲巣かみにして地面に叩きつける。


「うわぁ、ねぇちゃんすげー」


「ツンツンの兄ちゃんより強いんだー」


子供達から熱い眼差しを一心に受ける。


「ちょっとアレン!

シドがまだ薬草取り終わってないのよ!」


私は地面に頭がめり込んでいるシドを指差し抗議する。


「はぁ、これだから仕事がおせぇ奴は」


頭をポリポリかきながら答えるアレン。


「あぁ!

さっきの騎士のお兄ちゃんだ!」


子供達の視線がアレンの方に向く。


「よぉ、ちゃんとミッションはこなせたか?


「うん!ちゃんと俺達兄ちゃんに言われた通り草刈りやってきたよ!

だから、俺達騎士になれるんだよね?」


「あぁ、勿論だ。

草刈りは立派な騎士の仕事だ。

あのねーちゃんより有望だぞお前ら。」


「ちょっとアレン。

まさかこの子達に草刈りやらせの?」


「あぁ、こいつらが騎士の仕事手伝いたいって言うからな。

草刈りは立派な騎士の仕事だからな」


アレンは口が上手い。

きっと騎士に憧れる子供達にの純情を弄んだのだろう。


でも、ヘヘッと得意気に笑う子供達の前でこれ以上の追求は出来なかった。


「うん?

そー言えば一人足りなくないかお前ら」


アレンが顎で子供達の人数を数えながら言う。


「サニャがいない。」


一人の子供がそう言うと、他の子供達も騒ぎ出す。


「最後サニャをどこで見たの?」

妙な胸騒ぎがして私が子供に詰め寄るが子供達は首を横に振るだけだった。


「サニャなんか言ってなかったか?」

シドが優しい声色で子供達に尋ねる。


「そう言えば騎士は勇気がなきゃなれないって話してたら、俺も勇気あるって言ってた。」


「勇気…」


「肝試しか。」

アレンが座りながら呟く。


「この村の怖い場所は?」

シドが尋ねる。


「東の森だよ。魔物が出るから近づくなって。」


魔物。その言葉に緊張が走る。


「あなた達はお家に帰ってお母さん達にこのことを知らせて、村の中を一緒に探して。」

私の言葉に子供達は分かったと言って小走りで家路についた。


「魔物との実戦経験は?」

アレンが立ち上がりながら聞いてくる。


「アカデミーでインプの討伐くらいは。」

アカデミーでの数少ない実戦経験を思い出しながら答えた。


「じゃあ、まぁ、でっかいのが出ないように祈りな。」

アレンが私を追い抜かして歩き始めた。


インプの討伐は集団での実戦で教官の方帯同での実戦だった。

これが本当の実戦になるかもしれない。


私は剣を強く握り二人の後を追った。


***


「サニャー!居たら返事して!」


私と帯同の二人に呼びかけに未だ反応がない。

森に入ってから数十分。陽の光はすっかり遮断され辺りは薄暗い。

道の整備もろくにされておらず、かなり深い森だ

この森に子供が入ったなら魔物がいないとしても安否が危ぶまられる。


「かなり深いな。」

アレンが私の感じていたことを口にする。


「早く見つけてあげないと。」

誰にいうでもない心の声が小声ででた。


「シド、どうだ?」

アレンの問いにシドは少し考える。


「これだけ自然があって、野生動物の数がかなり少ない。魔物の住処になっているな。」

そのままシドが近くの木に触れる。


「ここに少し焦げた跡がある、放電の痕跡だな。

ここの森の主はおそらくライガだな。」


ライガ。雷を司る魔物

個体差があるが強個体のライガは騎士が討伐隊を組む程危険な魔物だ。


「そもそも、魔物は人の居ないところでしか生息出来ない。となると人の気配がしないこの森は

どんな魔物がいてもおかしくない。」

シドそう言ってがまた先頭を歩き出す。


騎士になると決めた日から剣技については寝る間も惜しんで鍛錬を続けた。

その努力の日々に私は自信を持っている。


ただ、自身の実戦経験のなさが

自分の命、そして守らなければいけない命を失ってしまうのではないかという不安が襲う。


「おっ。」

先頭を歩いていたシドが声を上げて歩みを止める。


その視線の先には


「サニャ!」

私が声をかけると子供が不安そうな顔をして立ちすくんでいた。


「どうして森に入ったの?この森には入るなって言われてるでしょ?」


「ごめんなさい。」


「魔物がいるかもしれないんだよ?」

私の言葉に子供は泣きそうな顔で何も言えなくなっていた


「もういいじゃん。どうせ家で母ちゃんにしこたま怒られんだから。」

シドが頭をかきながら子供を庇う。


「そうだな引き上げよう。」

アレンがそう号令をかけ踵を返したとき。


背後からただなる気配。


「アレン、マナ!」

シドがいち早く気づく。


ライガの群れが後方に迫っていた。

7匹。8匹か。


「人の気配に吸い寄せられたか。」


「隊列を組むぞ。マナ後衛だ。サシャを守って

襲ってくるライガだけ対応しろ。」

アレンが剣を抜き私も剣を抜く


私も剣を抜いて周囲を見回す


「サニャそこの木の影に!」

サニャは急いで影に隠れる、これで防衛線は貼った突破されるわけにはいかない。


ライガ達が放電しながら距離を詰めてくる

薄暗い森がライガの放電で点滅する。


おぞましい声を上げてライガが襲いかかってくる。


前衛のシドとアレンが瞬時に斬りかかり無効化する。


またライガの放電で周囲が眩しくなる


「眩しっっ。おい、マナ!一体いったぞ!」

シドの声に私は前を見据える。


ライガがスピードをつけて迫って来ていた。


見える。

私は剣を前に踏み出し剣を振るう。


手応えがありライガが怯む。私はそのまま動きを止めず三太刀連続で浴びせる。


ライガはそのまま目の前で動かなくなった。

来る日も来る日磨いてきた得意な剣技をなんとか出すことができた。


私が一匹のライガを片付ける間に

前衛の二人は残りのライガを切り伏せていた。


強い。アカデミーを出たばっかりの私とこんなに差があるなんて


「主のお出ましだな。」

アレンがそう言うと視線の先には一際大きなライガがいた。


「…グランドライガ」

ライガの強個体をそう言う。周囲の森を覆い隠してしまう程の巨体が目の前に現れた。


ライガが咆哮をするとその放電量に視界を奪われて思わず体を伏せる。


周囲の木が先ほどの放電の衝撃で何本か折れていた。

とても敵わない。化物だ。


「アレン!撤退して応援を!」

私は思わず叫んだ。


「マナ、なんであんな馬鹿でかくて魔力も持ってる魔物達がこんな森でコソコソと生きて

人は堂々と生きていられると思う。」


えっ?アレンの問いかけに私は声が出なかった。


「それは人が魔物より強いからだ。だから魔物たちを追い出して人がそこに住んでる。」


アレンから視線を移すとシドがグランドライガに向かっていく。


「アイゼン・メイデン」

シドがそう呟くとシドの剣が青白く発光してるように見えた。


「ミスリル…」

蒼霊鋼。青白い光を纏い魔力を増加させる鉱石。


「そう。人はミスリルと騎士を手に入れた。

だから、魔物より強くなってしまったんだよ。」


「お前も雷の魔力を使うんだな。俺と一緒だな。」

シドは剣を鞘にしまって間合いに入っていく。


そして、その剣を抜刀する。

瞬間。


グランドライガの巨体は二つに切断されて絶命していた。


……え?


思考が追いつかない。


さっきまで、あれほど恐れていた相手が、

まるで最初から存在していなかったみたいに――消えている。


その威力。とても人間が出せるものではなかった。


「さて、帰るか。」

シドが振り返っていつもと変わらぬ顔でそう言った。


***


帰り道。


サシャはすっかり元気になって色々とお喋りしてきた。


「そーいえば、お前。騎士になりたいんだってなー。だから肝試ししたんだろー。」

シドが手を繋いでいるサニャに質問する。


「うん!騎士になりたい! 僕もお兄ちゃんみたいな騎士になれる?」

サニャの質問にシドがどう答えるか興味があった。


「おー、なれるぞ!

アカデミー行って、騎士採用試験合格したらなー。」


いや、討伐隊組んで大人数で討伐するグランドライガを一瞬で真っ二つにするやつには

普通の人はなれないぞ。


「ほんと!頑張る!」

サニャは無邪気に喜んでいた。シドも一緒に楽しそうに笑っていた。

アレクは何か書類を無表情で書いていた。


騎士って。

私が思ってるより大変な存在かもしれません。












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