第35話:コミュ障、世界にバレる
朝。
目が覚めてもしばらく頭が働かず、私は布団の中から枕元のスマートフォンへ手を伸ばした。
時間を確認する。
いつも通り。
その下に並んでいる通知は、いつも通りではなかった。
「……多い」
昨日は豊臣さんの歌枠があったから、その関係だろう。
まだ半分眠ったままSNSを開き、何となくトレンドへ目を向ける。
1位。
VSPのツバサ歌枠。
「…………」
すごい。
やっぱり、豊臣さんはすごい。
昨日の最後の曲も、私なんかが一緒に歌うことになってしまった。
けれど、豊臣さんは最後までとても気持ちよさそうに歌っていた。
姫野さんからも、ちゃんと歌えていたと言ってもらえた。
そのうえでトレンド一位になったのなら、少なくとも私のせいで最後の曲を台無しにしたわけではなかったらしい。
少しだけ安心して、スマートフォンを閉じかけた。
「…………?」
指が止まる。
何かがおかしい。
もう一度、トレンドを見る。
1位。
VSPのツバサ歌枠。
2位。
スパチャ史上最高額。
3位。
VSP運営スタッフ。
4位。
神の歌声。
5位。
昨日の同接数。
6位。
伝説のデュエット。
「…………」
寝ぼけているのかもしれない。
目をこすってから見直した。
何も変わらない。
嫌な予感がして、そのまま下へスクロールしていく。
9位。
10位。
11位。
20位。
ほとんど全部、昨日の歌枠に関係している。
さすがにおかしい。
トレンド1位だけなら、豊臣さんすごい、で終われた。
けれど、1位から20位付近までを一つの配信が埋め尽くすのは、寝起きの私でも普通ではないと分かる。
しかも。
よく見ると。
「……これ、もしかして私?」
豊臣さん個人の名前よりも、運営スタッフについての話題の方が多い。
3位。
6位。
7位。
11位。
13位。
16位。
背中に嫌な汗が流れた。
恐る恐る一つを開く。
昨日の歌枠の切り抜きだった。
再生数を見る。
「…………わぁ」
閉じた。
別の話題を開く。
『最初から上手いのに、一回目のサビ後半から明らかに何かがおかしくなるVSPスタッフ』
閉じる。
次。
『同接が増えてるのにコメントだけ止まっていく瞬間』
閉じる。
次。
『なぜこの歌唱力で運営スタッフをしているのか』
閉じる。
次。
『VSP、説明しろ』
「…………っ」
怒られている。
と思った。
怖々と投稿を開く。
『VSPいい加減にしろ。こんなの隠してたら分からんだろ。ありがとう』
「…………?」
怒ってはいなかった。
でも怖い。
私はスマートフォンを伏せ、見なかったことにしようとした。
五秒後。
もう一度見る。
何も変わっていなかった。
むしろ一つ順位が上がっている。
私に関係するものが。
「…………」
今度こそ伏せた瞬間、スマートフォンが震えた。
心臓まで一緒に跳ねる。
姫野さんからだった。
『起きてる?』
「…………」
既読をつけてしまった。
『はい』
すぐに返事が来る。
『今日なんだけど、いつもよりちょい早めに出社してくれん?』
終わった。
やっぱり昨日、何かやったんだ。
そう思った直後、続けてメッセージが届いた。
『別に急がなくていいからな』
さらに。
『炎上でもねぇから』
「…………」
完全に先回りされていた。
『電車一本早いくらいでいい』
少し迷ってから、『分かりました』と返す。
すると今度は。
『あとSNS見た?』
「…………」
どう答えればいいのか分からない。
『少し』
嘘ではない。
精神的には十分すぎるほど見た。
『ならまあ話早いわ。詳しい話は会社で』
「…………」
詳しい話。
嫌な響きだった。
いつもより一本早い電車に乗り、その間は一度もSNSを開かなかった。
会社へ着き、受付を通り、いつものフロアへ向かう。
ここまではよかった。
扉が開く。
「遠藤さん来た!」
「…………え」
帰りたい。
「昨日の歌、遠藤さんだったの!?」
「えっ、歌やってたの?」
「どこで習ったの?」
「何で今まで黙ってたの!?」
「めちゃくちゃ上手かった!」
「最後すごくなかった!?」
「豊臣さんとの相性ヤバかったよ!」
右にも人。
左にも人。
前にも人。
逃げ道がない。
「あ、あの……」
口が動かない。
「声って元々あんな感じなの?」
「途中から明らかに変わったよね?」
「歌枠とかやらないの?」
「いや、遠藤さん運営だから」
「でももう一回聞きたいだろ!」
「…………ぁ」
視界が遠くなる。
悪口ではない。
誰も怒っていない。
むしろ、全員がものすごく好意的だった。
だからこそ逃げる理由がなくて、余計に逃げられない。
「遠藤さん?」
「大丈夫?」
「顔真っ赤だけど」
「あ、あ、あ……」
無理。
人数が多い。
みんな私を見ている。
「ぷしゅー……ブクブク……ガフッ」
「ヤバイ、泡吹いてる」
「姫野さん呼んで!」
「褒めたら壊れた!」
その時、人混みの向こうから聞き慣れた声が飛んできた。
「お前ら散れ!朝から遠藤を殺すな!」
「いや、褒めてただけですって!」
「人数考えろ!一人ずつでも死ぬのに何人いんだ!」
一人ずつでも死ぬ。
そこは否定してほしかった。
姫野さんが人混みを割って私の腕をつかむ。
「ほら、こっち来い」
「……はい」
助かった。
そこへ、柔らかな声が加わった。
「皆さん、アオちゃんが困ってますよ~。聞きたいことがあるのは分かりますけど、一度に来たら答えられないでしょう?」
清白さんだった。
まともだ。
清白さんがまともなことを言っている。
「す、清白さん……」
「大丈夫だよ~。今日はもう朝から大変でしたねぇ」
にこにこと笑っている。
そのまま私を庇うように一歩前へ出て。
「まあ、それくらいアオちゃんが”スゴかった”ということですけどねぇ。むふーん」
清白さんは胸を張った。
”スゴかった”を強調して。
…………なぜ?
「……何でスズちゃんが誇らしげなんだよ」
姫野さんが眉を寄せる。
「だってぇ、アオちゃんを見つけたのは私ですから」
「結局それ言うのかよ」
「事実ですのでぇ」
いつもの清白さんだった。
午前中、社内はずっと浮ついていた。
昨日の歌枠の話、トレンドの話、切り抜きの話。私が席を立つたびに誰かから見られているような気がしたけれど、おそらく気のせいではない。
ただ、騒ぎといってもまだ社内のお祭りだった。
「遠藤、これ確認頼む」
「は、はい」
姫野さんから資料を渡される。
いつもの仕事。
ありがたい。
文字と数字なら、私を見てこない。
少し離れたところでは、九さんがスマートフォンを眺めていた。
「まだトレンドの順位上がってんじゃん」
「やめてください……」
「ウチ何もしてないんだけど」
「言わないでください……」
「遠藤、今日はSNS見るな。もう十分だ」
姫野さんが割って入る。
「……はい」
即答した。
一方、清白さんは朝からずっと機嫌がよかった。
いつも笑っている人だけれど、今日は明らかに輪をかけている。
「アオちゃん」
「はい……」
「昨日の歌、とっても素敵だったよぉ」
「……ありがとうございます」
「ふふ。やっぱり、私の目に狂いはありませんでしたね~」
「…………」
「スズちゃん、もういいって」
姫野さんが呆れたように聞く。
清白さんは少し考えて。
「まだそんなに言ってませんよぉ」
「数えきれねぇ時点でアウトだよ」
「でも、嬉しいものは嬉しいじゃな~い」
清白さんは本当に嬉しそうだった。
それ以上は何も言えなかった。
昼休みを過ぎたころ。
最初の一本が入った。
「九さん、外線です」
「どこ?」
「音楽事務所ですね。昨日の歌枠について話を聞きたいそうです」
「あー、もう来た?」
その時は、その程度だった。
珍しくはある。
でも、昨日の反響を考えれば問い合わせの一つや二つくらい来てもおかしくない。
九さんが電話を取る。
「はい、VSP権利管理の九ですー」
私は少し離れた席で資料を確認していた。
内容までは聞かない。
聞く必要もない。
そう思っていた。
一時間後。
「九さん、またです」
「今度どこ?」
「レーベルです」
「用件は?」
「昨日歌唱されたスタッフの所属状況と、今後の活動予定について」
「活動予定ないんだけどなぁ」
九さんが椅子を回した。
さらに三十分後。
「清白さん、お問い合わせです」
「はい、どちらからですか~?」
「音楽制作会社です。昨日のスタッフさんへ楽曲提供を検討したいと」
「……アオちゃんにですか?」
一瞬。
清白さんの表情がぱっと明るくなった。
嬉しいのだろう。
とても。
それでも、次に出た声は落ち着いていた。
「では、内容だけお預かりしておいてください。本人にはまだ何も話してませんし、こちらからお約束できることもありませんので」
「分かりました」
対応した社員が離れていく。
清白さんは、その背中を見送ってから小さく息を吐いた。
そして、私と目が合う。
「…………」
「…………」
ものすごく言いたそう。
「スズちゃん」
姫野さんが低い声で呼んだ。
「分かってるってばぁ」
清白さんは苦笑して、私には何も言わなかった。
その顔だけは。
ものすごく嬉しそうだった。
午後三時を過ぎるころには、電話もメールも問い合わせフォームも明らかに増えていた。
最初は、昨日の歌唱者について確認したい。それだけだった。
そこから所属はどうなっているのか、タレント契約はあるのか、歌手活動を予定しているのか、面談は可能か。
楽曲提供、コラボレーション、ゲストボーカル、取材。
時間が経つほど話が具体的になる。
「ナルミ、また電話!」
「今無理!内容聞いといて!」
「清白さん、メール確認お願いします!」
「はい、今見ますねぇ」
「姫野さん、これどこ回します?」
「キューちゃんに――」
「ウチもう三本抱えてんだけど!」
「じゃあ一旦保留!」
午前中とは明らかに違う。
私は自分の席で固まっていた。
誰も私には話を振ってこない。むしろ、意図的にこちらへ情報を入れないようにしているようだった。
それが余計に怖い。
姫野さんがこちらを見る。
目が合った。
「遠藤」
「はいっ」
「ちょっと来い」
やっぱり。
何かある。
恐る恐る後についていった。
廊下へ出ると、姫野さんは端的に言った。
「避難」
「……はい?」
「お前、夕方まで動画編集部行ってろ」
「動画編集部……ですか?」
「ここにいる必要ねぇから。今回、お前本人にやらせられる仕事はほぼない。外から来てる連絡に本人が返事するわけにもいかねぇし、ここにいたら余計な情報まで全部耳に入る」
「でも、何か手伝えることが……」
「ない」
即答だった。
姫野さんは少し間を置いてから、こちらを見る。
「あと、今日はもう十分注目浴びただろ」
「…………はい」
よく分かっている。
「蓮見んとこで当たり障りない仕事してろ。こっちはウチらでやる」
「でも……」
「遠藤」
「はい」
「こういうのまで自分で抱えようとすんな」
止まった。
前にも似たようなことを言われた気がする。
私は小さく頷いた。
「……分かりました」
「よし」
姫野さんはスマートフォンを取り出し、誰かへメッセージを送る。
たぶん蓮見さん。
すぐに返事が届いた。
姫野さんの眉が少し寄る。
もう一度何かを打つ。
「……念押ししとくか」
何を念押しするんだろう?
動画編集部は静かだった。
キーボードとマウスの音がして、時々小さな会話が交わされる。それだけ。
電話が鳴り続けることも、人が走り回ることもない。
私を見て一斉に囲んでくる人もいない。
天国。
「遠藤さん」
蓮見さんがいた。
「お疲れさまです」
「お、お疲れさまです」
いつも通り、淡々としている。
安心した。
姫野さん。
ありがとう。
「姫野さんから聞いています。今日は、こちらの作業をお願いします」
渡されたのは動画素材の整理と簡単なチェック作業。
本当に当たり障りがない。
「分かりました」
席へ座って作業を始める。
静か。
平和。
誰も私の歌の話をしない。
ようやく落ち着ける。
五分くらいは。
「遠藤さん」
「はい」
「一つ質問があります」
「……はい」
あっ、何か嫌な予感。
「昨日の一回目のサビですが、後半から発声を変えていますか?」
「…………」
終わったかもしれん。
ゆっくり蓮見さんを見る。
モニターには。
昨日の歌枠。
私と豊臣さんが歌っていた場面。
「い、いえ……」
「では無意識ですか」
「たぶん……」
「やはり」
やはり?
蓮見さんがタイムラインを少し戻して再生する。
私の声が流れた。
「ここです」
「…………」
一度止める。
「正確には、この少し前から響き方が変わっています」
また再生。
「ここからは完全に違います」
「…………」
何回見たのだろう。
「蓮見さん」
「はい」
「昨日の配信……何回見ました?」
「回数では数えていません」
「…………」
聞かなければよかった。
「時間なら分かります」
「聞きたくないです」
「そうですか」
少し残念そうだった。
十分後。
「遠藤さん」
「はい……」
「ここ、好きです」
「…………」
モニターを見る。
二番の途中。
「そうですか……」
「はい」
五分後。
「遠藤さん」
「……はい」
「ここも好きです」
「……ありがとうございます」
さらに数分後。
「ここから最後までは全部好きです」
「…………」
いつも通りとは何だったのか。
姫野さんから、たぶん何度も言われている。
絶対に。
一方その頃。
元いたフロアでは。
「また来た!」
「今度何!?」
「音楽制作会社!」
「内容!」
「面談希望!」
「はい保留!」
姫野が叫ぶ。
九は電話を肩と頬で挟みながら、別のメールを確認していた。
「だから、新人タレントじゃないんよ!普通にウチの運営スタッフ!」
電話の向こうから何か聞かれる。
「いや、何であのレベルで運営やってるのかって――」
九は一瞬、天井を見上げた。
「こっちが知りたいわ!」
その横では清白も別の電話に出ていた。
「はい、お問い合わせありがとうございますぅ」
いつもの柔らかな声ではあるが、話している内容は明快だった。
「申し訳ありませんが、現時点で本人に歌手活動やタレント活動の予定はありません。まずはご提案の内容をお預かりする形でお願いできますか?」
相手が何か話す。
「はい。もちろん、ありがたいお話だとは思っています。ただ、本人の意思を確認する前にこちらだけで進めることはできませんので」
通話を終える。
その瞬間。
清白の頬が緩んだ。
「海外も視野に入れたいそうですよぉ。むふふ」
「スズちゃん、楽しそうだな!」
姫野が吠えた。
「そりゃあ嬉しいよ~。アオちゃんのことを、こんなにたくさんの人が評価してくれてるんですから」
「顔が完全に保護者だぞ」
「ワシが育てた」
「嘘つけェ!」
九が通話を切りながら振り返る。
「スズちゃんさぁ、そのテンションで判断だけ妙に冷静なの何なん?」
「それとこれとは別でしょう?」
清白は少し不思議そうに首を傾げた。
「アオちゃんが評価されるのは嬉しいです。でも、本人がどうしたいかも分からないのに、こちらだけで勝手に決めるわけにはいきませんよぉ」
「……まあ、それはそう」
「それに、今のアオちゃんに一気にこれ全部見せたら大変でしょうし」
「朝の時点で死にかけてたからな」
「なので、今日は私たちのお仕事ですねぇ」
そう言って、清白は次のメールを開いた。
口元にはまだ、嬉しさを隠しきれていない笑みが残っている。
「……やっぱ楽しそうなんよな」
九がぼやく。
「嬉しいですからぁ」
「そこは否定しないんだ」
その直後。
また電話が鳴った。
三人が同時にそちらを見る。
「…………」
九が小さく息を吐く。
「百人組手じゃん、これ」
「まだ夕方前だぞ……」
姫野は頭を抱えた。
動画編集部は平和だった。
少なくとも。
部屋そのものは。
「遠藤さん」
「…………はい」
「今度はこちらです」
また昨日の歌。
「最後のロングトーンですが、豊臣さんに合わせて長さを変えました?」
「覚えてないです……」
「では無意識」
「たぶん……」
「なるほど」
何がなるほどなのか。
蓮見さんは真剣だった。
ふざけているわけでも、私を困らせようとしているわけでもない。
ただ純粋に興味が強すぎる。
「蓮見さん」
「はい」
「仕事……大丈夫ですか?」
「終わらせています」
「…………」
逃げ道を塞がれた。
「業務中に繰り返し見ていたわけではありません」
「じゃあ、いつ……」
「帰宅後です」
「……寝ました?」
「必要量は」
……必要量?
睡眠時間としてあんまり聞かないタイプの返答だ。
「今日は早く寝てください……」
「分かりました」
素直。
本当に分かっているのだろうか。
私のスマートフォンが震えた。
姫野さん。
『そっち大丈夫か?』
「…………」
目の前では、蓮見さんがまた昨日の歌唱映像を止めている。
『ここの声なんですが』
今度はモニターをこちらへ向けてきた。
私はスマートフォンへ文字を打つ。
『外よりは』
止まる。
消す。
『大丈夫です』
送信。
すぐ既読がつく。
『ならよし』
「…………」
ごめんなさい。
姫野さん。
少しだけ。
嘘をつきました。
夕方。
問い合わせの数は、さらに増えていた。
音楽事務所、レーベル、制作会社、イベント関係、メディア、作曲家。
そして。
海外からのメールまで。
最初は珍しい問い合わせだった。
今は、一つ処理する間に次が来る。
「姫野さん!」
「今度は何!」
「海外です!」
「キューちゃん!」
「英語だからって全部ウチに振るな!」
「権利関係だ!」
「じゃあウチ!」
「清白さん、別件です!」
「はい、今行きますよぉ~」
電話。
メール。
問い合わせフォーム。
また電話。
もう何人目なのか分からない。
姫野は、ほんの一瞬だけ手を止めた。
朝までは。
世界中が歌に驚いている。
そのくらいに考えていた。
社内も祭りだった。
みんなが遠藤の歌を褒めて。
本人が泡を吹いて。
それで済んでいた。
でも。
今は違う。
外が動き始めている。
本人すら自分が何をしたのか理解していない遠藤アオへ向かって、音楽業界が次々と手を伸ばし始めていた。
姫野はスマートフォンを取った。
動画編集部。
「遠藤さん」
「……はい」
「ここも――」
スマートフォンが震えた。
姫野さん。
『遠藤』
『もう少ししたら迎え行く』
「…………」
助かる。
そう思った。
直後。
次のメッセージ。
『そのあとちょっと話ある』
「…………」
あ、やっぱダメみたい。
「どうしました?」
蓮見さんが聞く。
「……いえ」
スマートフォンを伏せる。
朝。
トレンドを見て。
会社へ来れば何とかなると思った。
会社へ来たら、人に囲まれた。
人混みから逃げたら、外から問い合わせが来た。
問い合わせから避難したら。
蓮見さんがいた。
どうやら今日の私には。
安住の地というものが存在しないらしい。




