第15話 僕と嫌な気配
「リヒト、この後は会議だったかしら」
「はい。近いうちに大きな争いが起こる予兆があるため、警戒を強める予定です」
リヒトはエレナと共に馬に乗り、オルレアン家へと戻っていた。
その後方には、無言のまま続くサグラモールの姿。
「そうだ、サグラモール」
「ん? なんだ?」
「クラウド家には、ヴァロワ家の情報は入っていないか?」
肩越しに問いかけると、サグラモールは手綱を握ったまま空を見上げる。
「……いや、特には入ってきていないな」
「そうか」
やはり、というようにリヒトはそれ以上追及しなかった。
「そもそもヴァロワ家の怒りはオルレアン家に向いてるだろ。……いや、お前個人か?」
「あの時は、たまたま私の情報が漏れていなかっただけだ。それで恨まれても困る」
かつてヴァロワ家は、ツェダリア国内で最も権力を持つオルレアン家を制圧しようと襲撃した。
内部情報は抜かれ、騎士団は後手に回り、状況は危機的だった。
だが――唯一、情報を掴まれていなかったリヒトの参戦により、ヴァロワ家を退けることに成功した。
それ以来、大きな動きはなかった。
だが今、再び不穏な空気が国に流れ始めている。
「クラウド家も動くか?」
「いや、まだだ。まずはオルレアン家で様子を見る」
リヒトの言葉に、サグラモールは素直に頷いた。
「分かった。だが、何かあれば必ず言え。この国を守りたいのは、お前らだけじゃない」
サグラモールはびしっと指を差す。
リヒトは小さく頷き、前を向き直った。
「では、私はここで。ご令嬢、リヒトを頼みますよ」
「ええ。あなたの姫にもよろしくね」
「はい、では――」
サグラモールは馬を加速させ、風のように走り去った。
その際に吹いた風で、リヒトの白銀の髪が揺れる。
「――リヒト」
「いかがいたしましたか、エレナ様」
前に座るエレナが静かに問いかける。
「ヴァロワ家が動いているのは、確かなのかしら」
「確証はまだありません。現在、他の騎士が情報を集めています。今日はその確認です」
エレナは少し考え、言った。
「もし動いているのだとしたら……狙いはオルレアン家ではないかもしれないわよ」
「それは、直感ですか?」
「ええ。確証はないけれど、そんな気がするの」
真っ直ぐな空色の瞳。
リヒトは顎に手を当て、静かに頷いた。
「エレナ様の直感はよく当たります。念のため、その可能性も共有しておきましょう」
「過信はしないでね」
「承知しております」
青空の下、二人は森を抜け、オルレアン家へと帰還した。
※
今日は、リヒトさんは来なかった。
昨日が賑やかだった分、館が静かに感じる。
いつもの掃除は終わり、今は読書の時間。
窓から差し込む月光。
館の灯りは淡く、本を読むのにちょうどいい明るさだ。
クニーは僕の膝の上で丸くなり、眠っている。
背を撫でると、鼻を鳴らして体をよじった。
「ふふ……」
可愛いな、クニー。
「さすがに何時間も読んでると目が疲れるな。一度読んだ本ばかりだから結末は知っているけど、やっぱり考えながら読んじゃうんだよなぁ」
本を閉じ、立ち上がる。
少し空気を入れ替えようか。
「――ん?」
窓に手をかけた瞬間、違和感を感じた。
空気が、重い。
開ける前に外を覗く。
森はいつも通り。
特に異変は見えない。
気のせいか……?
「気にしすぎかな」
窓を開けようとした瞬間――
――ゲシッ。
「ぐっ!? え、クニー!?」
背中を蹴られた。
振り返ると、クニーが真剣な目でこちらを見上げていた。
『今は開けてはならぬ。嫌な気配がする』
「気のせいじゃないの?」
『違う』
クニーが言うなら、違うのだろう。
窓から手を離す。
外は変わらず静か。
だが、胸騒ぎだけが残る。
なんだろう、この嫌な感じ。
『顔色が悪いぞ』
「……ちょっと気分が悪いかも。今日は、もう寝ていい?」
『休め。無理はするな』
「ありがとう」
今日はもう休もう。
嫌な予感は、消えないけれど。
なんか、嵐の前の静けさ。と、思ってしまうほどに、外は穏やかだ――……
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