第14話 僕と未来
「うさぎーーーー!!」
「あ、危険ですよご令嬢!!」
階段を駆け上がり、驚きで毛を逆立てているクニーへ、エレナ様が一直線に向かう。
――――ガバッ!!
『ブッ!!』
「クニー!!」
ご令嬢が思いきり抱きしめ、その勢いのまま床へ倒れ込んでしまった。
け、怪我は……!?
リヒトさん達と一緒に階段を上がり確認すると、どうやらクニーがうまくクッションになったらしい。
ご令嬢に怪我はなさそうだ。
それは良かった。
……でも。
クニーが、明らかに苦しそう。
ご令嬢は満面の笑みで、ぎゅうぎゅうと抱きしめ続けている。
だ、大丈夫かな……。
『た、助けておくれよ、クリエント……』
「あ、えぇっと……」
クニーが苦しそうだから、助けてあげたい。
でも、引き剥がすのも可哀想。
でもでも!! このままではクニーが潰れる。
どう言えば角が立たないだろうかと迷っていると――
「エレナ様、それ以上はクニー様がお苦しいですよ。お離しください」
「あ、ごめんなさい」
リヒトさんがエレナ様の肩に手を置き、穏やかに諭す。
よかった……。
解放されたクニーは、一直線にこちらへ跳んできた。
ぴょん、と高く跳び、僕の胸に飛び込んでくる。
少し涙目だ。相当苦しかったらしい。
「よしよし、もう大丈夫だよ」
『オルレアン家の令嬢は、もっと淑やかで清らかと聞いていたはずだ。ここまで破天荒とは聞いておらぬ……』
身体を小刻みに震わせながら呟いている。
「クニーは、オルレアン家の令嬢を知っているの?」
『ご主人様から聞いておった。いずれ関わるだろうと』
クニーのご主人様。
確か、名前は召喚士サモス。
僕は、会ったことがない。
世界一の召喚士だとだけ聞いている。
それ以上は、クニーは教えてくれない。
『語れば我が身が危うい』らしい。
だから、深くは聞かないことにしていた。
そんな会話をしていると――刺さるような視線を感じた。
横を見ると、リヒトさんがエレナ様の両肩をしっかり掴んでいる。
だが、手を離せばまた飛び込んできそうな勢いだ。
目を輝かせ、鼻息は荒い。
兎が好きなのか、それとも動くぬいぐるみが珍しいのか。
どちらにせよ、もう一度突撃されたらクニーが危ない。
今は我慢してもらうしかないかな……ごめんなさい。
僕が難しい顔をしていると、六時を知らせる鳩時計が音を鳴らした。
皆で時計を見ると、サグラモールさんが声を上げた。
「――おっ、リヒト。そろそろ時間じゃないか?」
「そうだな。エレナ様、参りましょう」
え? もう?
今日は少し遅く来たと思ったら、もう帰るのか。
……って、何をがっかりしてるんだ、僕。
リヒトさんは騎士。
オルレアン家に仕える騎士だ。
忙しくて当然。
普段は時間を割いて来てくれているだけだ。
それだけでも、本当にありがたい。
首を振って気持ちを切り替え、見送ろうと顔を上げると、リヒトさんと目が合った。
「――では、私達はこれで。慌ただしくて申し訳ない」
「い、いえ! またお時間がある時にぜひ! 次はもっと、きちんとおもてなし出来るよう準備しておきます」
深く頭を下げる。
リヒトさん達は手を振り、館を後にした。
三人がいなくなった途端、館がやけに静かに感じる。
流れている音楽まで、どこか物悲しい。
思わず消したくなった。
「……また、明日来てくれるかな」
『それは、もうわからぬな』
「え、わからない?」
それは、どういう意味だろう。
聞くと、クニーが僕を見上げた。
『今まで通りの生活は出来ぬ日が来るやもしれぬ』
「――え?」
今まで通りの生活が出来ない?
それって――事件? 戦争?
小説なら、ツェダリア国に敵国が動き出すとか。
でも、ここは物語の中じゃない。
何が起きるか分からない。
ただ、クニーがそう言うのなら、少しだけ警戒しておいた方がいいかもしれない。
今までもクニーは、未来を知っているような発言をする時があった。
時々ではあるが発言し、当たった確率は百パーセント。
今回も、何かしらの事件が起きるかもしれない。
それなら、何か準備をしておかないと。
……何かあっても守れるように。
館の防衛設備、少し強化しておこうかな。
例えば――大砲とか?
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