本来の目的
「なんかよくわからんけど解決したところなんだが、、」
「ええ」
放課後、付き合っていることになっている黒崎と霧島は一緒に帰らざるを得なくなっていたため、2人は帰路を共にしていた。
「俺らってこっからどうすりゃいいんだ、、?」
「どうって?」
黒崎が不安に思っていたのは、これからのこの関係である。元は問題を解決するために始めた関係であり、それが解決した今この関係である必要がなくなってしまったのである。
「委員長が今すぐ辞めたいって言うなら辞めるけど」
「や、やだ、、!」
霧島は黒崎の言葉に焦ったように言葉を返した。
「やだ?それって、、」
「ほ、ほら!付き合ってすぐ別れたら印象悪いじゃない?だからしばらくは続けた方がいいんじゃないかしら?」
「まあ、確かに」
霧島の意見に黒崎も純粋に賛成である。不良の黒崎と委員長の霧島が、付き合って数日で別れたなんて話はどう考えても印象が良くない。黒崎もそうだが、霧島の印象が下がるのは黒崎にとって避けたいことであった。
「それじゃあもう少しだけ続けるか」
「そうね!続けましょ!」
霧島はとても嬉しそうにそう言った。
(くそ、、そういう顔されると勘違いしちまうだろうが、、)
付き合っているというのはあくまで仮である。霧島には他意はないはずだ。なのに霧島の顔はまるでこの関係を続けられて嬉しいとしか思えない顔つきに、思わず思い上がってしまいそうになる黒崎である。
「なに、、?そんなにジロジロ見て、、私の顔になにか付いてるかしら?」
「いや、なんか前と比べて笑顔が増えた気がするなって」
「な、なによ!笑顔じゃダメなわけ!?」
「いや褒めてんだよ!前より表情が柔くなってていいなって話!」
黒崎はプンスカと怒る霧島を諭すように説明した。
「誰のせいでこんな顔になると思ってるのよ、、」
「ん?なんか言ったか?」
「うるさい!なんでもないわよ!」
「いてえ!なんで!?」
何故か普通に話しているだけなのに、霧島に足を蹴られて困惑する黒崎であった。
「じゃあまだ継続なんだ!よかったじゃん!」
「よかった、、のよね、、?」
とある休日、霧島と星宮は勉強会という名の女子会を霧島の家で開いていた。
「このままグイグイ行って距離を詰めちゃおうよ!」
「そうだよ玲奈ちゃん!頑張って!」
「あとなんで亀井さんがいるのよ!」
どういうわけか、その勉強会に亀井の姿もあった。
「なんか意気投合して話してたら色々バレちゃった☆」
「1番バレちゃいけない人にバレてるじゃない!」
亀井に仕掛けるために始めた作戦が、何故か亀井にバレているという謎の状況になっていた。
「大丈夫!私は玲奈ちゃんの味方だから!」
「なにも大丈夫ではないわね」
霧島の腕にしがみついてくる亀井をポイッと投げ飛ばす霧島である。
「玲奈っちはこれからどうしたいの?ガンガン攻める?告白する?」
「どうしたいって言われても、、」
ほとんど突発で始まった出来事であり、霧島本人は実際なにか考えがあるわけではない。これからどうするかはまだ悩んでいるところだ。
「だってあいつ鈍感なんだもの!ちょっとアピールしただけじゃ意識するどころか逆に警戒されるのよ!?」
「まあ玲奈っちは素直じゃ無さすぎるからね〜、、急に素直になったりしたらそりゃあ警戒されちゃうよ」
「ならどうすればいいのよ、、」
霧島は解決策が思い浮かばず、頭を抱えていた。
「ずっと素直になればいいんじゃない?そうすれば警戒されることもなくなるんじゃないかな〜」
「そ、そんなこと私に出来るわけ、、」
「ないよね〜」
「うう、、」
いつも案をたくさん出してくれる星宮ですらいい案が浮かばず、さらに問題は難航していた。
「わざわざあまり考えなくていいんじゃないかな」
「え?」
話が詰まり始めたところで、亀井が霧島に対して問いかけた。
「難しく考えすぎずに、自然体で行った方が玲奈ちゃんはいいと思うよ!」
「そうかしら、、?」
「その時したいと思ったこと、言いたいと思ったことを直感のままにやればいいと思う!」
亀井は自信満々そうな顔をして霧島の方へ近づいた。
「ち、近いわね!暑苦しいわよ!」
「ほら!そうじゃなくて!そこで自分からもっとくっついたりとか!抱きしめたりとか!」
「こ、こうかしら、、?」
霧島は亀井の言う通りに体を抱き返した。
「ぐへ、ぐへへ、、いい感じだよ玲奈ちゃん!」
亀井は霧島に抱きしめられ、まるで中年のおっさんのような顔をしていた。
「元々それが狙いだったでしょ!気持ち悪いわよ!」
結局話はほとんど進まず、何も解決しないままとなったのであった。
「なあ」
「なによ」
「世の中の彼氏彼女ってなにすんだ?」
今日も一応2人で登校していた霧島と黒崎は、通学路でそんな話をしていた。
「一緒に帰ったりとか、デートしたりとかじゃないかしら?」
「んー、、、、、」
霧島の返しに黒崎は言葉を詰まらせた。
「でもさあ、、いや、、やめとくか」
「なによ、気になるじゃない」
途中で言葉を濁した黒崎の発言が気になり、問い詰める霧島である。
「いやー、、俺らって元から結構やってる気がするなって、、」
「え、、?そ、そうかしら、、?」
黒崎自身も意識してなかったとはいえ、一緒に帰ることは頻繁にあったし、遊ぶことだってある。薄々思っていたが、彼氏彼女がやるようなことを元からしていたのではないかと思っていたのだ。
「だからまあいつも通りにしてても意外と大丈夫なんじゃねえか?って話」
黒崎は霧島が無理して彼氏彼女のフリをすることがないように、気を遣いすぎないような発言をした。
「ふーん」
「な、なんだよ」
しかし霧島は何故か不満気な顔をしていた。
「うるさい、早く行くわよ」
「え、、ちょ!?」
霧島は黒崎の手を握って、そのまま引っ張った。
「なに?彼氏彼女だったらこのくらいするでしょ?」
「いやそうかもしれんけど、、!別にわざわざやる必要は、、!」
「ふふふ、もしかして恥ずかしいわけ?いつもあーんなに余裕そうなのに」
霧島はいたずらっぽい笑みを浮かべながら黒崎に言葉を返した。
「そんなこと言ってるけど、お前耳赤いぞ」
「な、、!こ、これはただ寒いだけよ!!」
前を歩いている霧島の耳は赤く染っており、むしろ恥ずかしがってるのは霧島の方であった。
「こんなクソ暑い夏なのにとんだ寒がりだな」
「う、うるさい!ちょっと、、!なんで離してくれないのよ!」
霧島は黒崎の手を離そうとしたが、逆に黒崎が握り返して離さなかった。
「ん、寒いっていうからあっためてやろうかなって」
「うるさいバカ!」
耳も顔も真っ赤にした霧島は、黒崎に手を握られたままそっぽを向いてそのまま歩き続けたのだった。




