やはりアクシデント
ケーキを食べ終えたあと、つかの間の雑談タイムになっていた。
「黒崎くん一人暮らしなのね〜!」
「そうですね」
「大変じゃないかしら?困ったらいつでも私たちを頼っていいのよ〜?」
「もう慣れてきたので割と大丈夫っすね」
なにせ黒崎は小学生から家事は全て自分でやっていたのだ。一人暮らしになったところで今更何も変わらない。
「そういえば黒崎くんってあの駅前のカフェでバイトしてたりするかしら?」
「え、まあしてますけど、、」
「そうよね〜!見る度に似てるって思ってたのだけれどやっぱり黒崎くんだったのね〜」
知り合いに見られるのは本当に嫌なので、一応変装しているつもりだったのだが、どうやら結構バレているようだ。
「おい」
少し異変を感じた黒崎は霧島の方を向いた。
「わ、私はお母さんにはあそこのカフェがおすすめって言っただけよ!?特に変なことは言ってないわよ!」
「うん、てか俺がバイトしてる時に来んな」
黒崎は呆れた顔を霧島に見せた。
「てか、、もうこんな時間か、、」
時刻は19時になっており、そろそろ帰ろうか迷っていた。
「あらほんと!私ケーキ屋のお手伝いに行かなくちゃならないのよ〜」
「そうなんですね、、」
「あら、もしかして名残惜しいかしら?」
「そうっすね、結構楽しかったんで」
初めてのクリスマスパーティ。予想以上に楽しかったため、少し寂しさが込み上げてきた。
「べ、別にもう少しいればいいじゃない」
「そうよ!泊まっていけばいいわ!」
「そ、そこまでは言ってないわよ!」
「いやでもさすがにそこまでは、、」
「いいのよ〜気を遣わなくて〜、それじゃあ私は行ってくるから」
「ちょっとお母さん、、!」
そうして霧島母は家から出ていって、黒崎は桐島家に泊まることになった。
「いやすまん、、ほんとに泊まってって大丈夫だったか、、?」
「あんたは悪くないわよ、、妙にあんたを気に入ってるお母さんが悪いわ」
やはり霧島の目線から見ても黒崎は霧島母にだいぶ好かれているらしい。
「ところで、、俺ほんとにお前の母親の布団で寝ちまっていいのか、、?」
実は霧島母はケーキ屋の手伝いに行ったあと夜遅くなるためホテルに1日泊まっていくらしい。なので霧島母に「私のベッドで寝ていいから!」と連絡が来たのだ。
「別に良くは無いわよ、、」
「そ、そうだよな、、?」
せめて寝るなら父親の布団である。しかし霧島父は普通に自分の部屋のベッドで寝るためそれは出来ないのだ。
「まあ仕方ねえか、、」
「あ、あんた」
「ん、なんだ?」
霧島は1度黒崎を呼んで言葉を詰まらせた。
「あんた、私の部屋で寝ていいわよ」
「は??」
黒崎はその言葉に戸惑った。なにせどういう意図で言っているのか全くわからなかったからである。
「私だって嫌よ、でも自分の母親のベッドに男を寝させる方が正直嫌」
「な、なるほど、、?」
「それに、あんだってお母さんのベッドよりはまだ私のベッドの方が寝やすいでしょ?」
「んー、どっちもどっちだな、、」
「嫌なのよ!クラスメイトの男子が自分の母親のベッドで寝てるのが!なんか気味が悪いのよ!」
「んー、、まあ言わんとすることはわかるが、、」
どうやら霧島はどうしても自分の母親のベッドに黒崎を寝かすことはできないらしい。
「まあ俺は別にいいんだが、、委員長の問題であってだな、、」
「私はいいって言ってるでしょ。でも変なことしたら包丁持って部屋に特攻するわよ」
「いやこっわ」
何故か命懸けで泊まらないといけなくなった黒崎は冷や汗をかいていた。
「わざわざそんなことしなくても別に俺リビングのソファでも寝れるけど」
「お客さんをそんなところで寝かせる訳にはいかないわよ、、お母さんに怒られそうだし、、」
「ああもうわかったよ、、ここで寝ればいいんだろ?」
「それじゃあ私お母さんの部屋でもう寝るから」
「ああ、おやすみ」
そうして霧島は部屋から出ていった。
「いや寝れるかよ!!」
夜中0時、霧島のベッドに入っていた黒崎だがいまだ眠れずにいた。
「なんか毛布可愛いし、ぬいぐるみ転がってるし、いい匂いするし、、、いや、、キモイからやめとこう、、」
当たり前だが女の子のベッドで寝るなどという経験は今までない。そんな状況でゆったりと寝れるわけがなかった。
「無心で寝る無心で寝る、、」
そう考えながら寝ようとして30分がたった。
「どうしよう、、今からでもリビングで寝るか、、?」
霧島には何か言われそうだが、最終手段はそれしか無かったので立ち上がろうとした。
「は、、?誰だ、、?」
立ち上がろうとした瞬間、いきなり部屋のドアがガチャリと開いて誰かが部屋に入ってきた。誰かを確認しようとするも部屋が暗くイマイチよく見えない。そうモタモタしているとその人物がなんと布団の中に入ってきた。
「おま、、!なんで、、!」
「なんか大きいぬいぐるみある、、、」
「おい、、!ちょっと待て、、!」
そう、紛れもなくこの人物は霧島である。どうやらトイレか何かで部屋を出て戻る際に、寝ぼけて霧島母の部屋ではなく自分の部屋に戻ってきたようだ。
「ちょ、、!頼むから離れろ、、!」
「やだ、、、一緒に寝る、、、」
「腕を解いて、、、ってなんでこういう時だけ力強えんだよ!」
引き剥がそうとするも謎に強すぎる力により霧島にがっちりと抱きしめられていた。
「離れちゃ、、いや、、」
「ああもう可愛いなクソが!」
どうにかしないといけないのに、普段は見せない素直な霧島に少し邪念が混ざってしまい、そんな自分に呆れる黒崎である。
「いい匂いする、、、」
「こっちのセリフだわ」
折角匂いのことを忘れていたのに寝ぼけた霧島に掘り返されたせいでまた意識してしまった。
「んー、、、、」
「はあ、、、受け入れるしかねえか、、、」
このままだと朝になったらとんでもないことになりそうだが、もう何もすることができないので潔く諦めることにした。
「今日はほんとにありがとな、、楽しかった、、」
霧島が寝ぼけていることをいいことに黒崎は思っている本音を霧島にボソッと告げた。
「私も、、、楽しかったよ、、、?」
「え、ちょっとまって起きてる、、?」
なんと霧島がこちらを向いて笑顔でそう言った。
「ちょっと待って今のなし、、!忘れてくれ、、!」
聞かれてると思うと突如恥ずかしさが込み上げてた黒崎である。
「すー、、、、」
「寝てんのかよ、、」
しかしそんな心配をする必要もなく、霧島は深い眠りへとついていった。
「ああもう知らん、、、俺も寝る、、、」
慣れないことをした今日1日の疲れが溜まっており、黒崎にはこの状況をどうにかする気力は残っておらず、そのまま眠りにつくこととなった。




