無視の真実
「おはよう黒崎くん」
「、、、、」
(え、、?無視、、、?)
朝早く学校に来ていた霧島は、あとからやってきた黒崎に挨拶をしたが何も返答がなかった。いつもはちゃんと返してくれるのに、今日初めて返して貰えなかったのだ。
(ま、まあ誰しも機嫌が悪い日はあるわよね、、?)
黒崎の感情が読み取れなかった霧島は、とりあえずそういうことにしておいた。だがそのつかの間、その考えを打ち砕く光景を見た。
「龍ちゃんおはよう」
「ああ、おはよう蒼空」
(え、、、?)
まさかの蒼空には普通に挨拶を返していた。もしかしたら先程のは聞こえていなかったのかもと思った霧島は、もう一度話しかけに行こうとした。
「ねえ黒崎くん、、」
「ああー、そういや購買行こうぜ蒼空」
「いいよー」
「ねえちょっと、、」
霧島の問いかけも虚しく、黒崎は蒼空とそのまま購買に行ってしまった。
(やっぱり避けられてるわよね、、)
その考えがずっと心の中に残り続けたまま、霧島は午前中の授業を受けることとなった。
「はぁ、、、」
「どうしたの?玲奈っち」
昼休み、星宮と昼食を取っていた霧島は、大きなため息をついた。
「ごめんなさい、、なんでもないわ、、」
「そうなの?困ったらなんでも相談に乗るよ!」
「いやほんとに、、大丈夫よ、、」
「、、、?」
絶対に大丈夫じゃなさそうなのに大丈夫だと言い張る霧島に違和感を覚える星宮である。
「もしかして龍っちのこと?」
「ち、ち、ち、違うわよ!なんで黒崎くんのことで私が悩まないといけないのよ!」
(わかりやすいなあ)
霧島は見るからに動揺していた。前から思っていたが霧島は嘘がとてつもなく下手である。
「まあ誰のことかは言わなくていいから内容を話してよ」
「わかったわ、、ありがとう、、」
(もう誰のことか言ってるようなものだけどなあ)
という言葉を返そうと思ったが心の中にしまっておくことにした。
「今日とある人に挨拶をしたのだけれど、挨拶が返ってこなかったのよ」
「うんうん」
「聞こえてなかったのかなって思ってその後何回も話しかけたのに全部無視されるのよね、、」
「なるほど、、、?」
その話を聞いて星宮の頭の中に1つの疑問が浮かび上がった。
「ねえ、玲奈っちってほんとに龍っちのこと好きじゃないの?」
星宮は、包み隠さず聞きたいことをそのまんま言葉にして聞いた。
「す、す、好きじゃないわよ!黒崎くんはただの友達で、、、って今は別に黒崎くんの話してないわよ!?」
「あ、そう」
霧島は星宮の罠に引っかかって自爆してしまった。
「でもなんで好きじゃないのにそんなこと気にするの?」
「そ、そりゃ友達、、だし、、」
「自分は無視されて他の人が話してたら嫌な気持ちになるんでしょ?」
「それは、、その、、」
「もう認めた方が楽だと思うけどなあ」
星宮は真面目にニコニコしながら霧島を問い詰めた。
「もう自分でも分からないのよ、、確かに好きと言われれば好きなのだけれど、、それが友達としてなのか異性としてなのか、、」
「前も同じこと言ってたじゃん、モジモジしてると他の人に取られちゃうよ」
「取られちゃうって、、別に私のものでもないし、、」
「じゃあ龍っちが他の人と付き合ってラブラブだったらどう思う?」
星宮は少し意地悪に霧島に質問をした。
「それは、、、もう、、わかんない、、」
「ちょっと待ってなんで泣いてるの!?ごめんごめん!ちょっとやりすぎた!」
急に目に涙を浮かべる霧島に星宮は困惑しながら、何とか霧島をなだめていた。
「もうそれが全てな気がするけど、、まあすぐに答えを出さなくてもいいけど、モジモジしすぎても良くないよ?」
星宮は、星宮なりに恋愛のアドバイスを霧島にした。
「わかったわ、、よく考えてみるわね。とりあえず今はなんで無視されてるのか解明しなきゃならないわ、、」
「そうだね〜、なんかあったのかもしれないよ?嫌なことがあったとか、玲奈っちと話したくない理由があるのかもしれないし」
「そうね、、今度無理矢理にでも聞き出してみようかしら、、」
「あんまりやりすぎないようにね〜」
「ええ、ありがとう」
そうして霧島の心も少し落ち着き、黒崎との会話を試みようと決心することができた。
(それにしてもなんで無視されてるんだろう)
星宮にもなぜ無視されているのか全くわからなかった。今まで若干の言い合いはあってもガチ喧嘩や無視したりなどは一切なかった。明らかに何か特別なことが起きていると星宮は感じていたのだ。
(そうだ、蒼空っちに聞いてみよ)
星宮は蒼空にメッセージで聞いてみることにした。
『最近龍っちってなんか変わったことあった?』
『んー、特にないかな。なにかあったの?』
『ごめんなんでもない!ありがとう!』
そうして会話は終わってしまった。
(まあ、玲奈っち本人に任せるか)
もうここからは星宮はあまり深く介入しないことにした。友達とはいえ星宮自身は関係は無いので、余計なことをすると悪いと思ったのだ。
(頑張れ!玲奈っち!)
そう心の中で応援する星宮であった。
「く、黒崎くん、、!」
「あ、、、」
放課後黒崎は霧島と鉢合わせてしまった。
「悪い、俺もう帰らないと」
黒崎はそのまま霧島を振り切って教室から出ようとした。
「ちょ、ちょっと、、!」
霧島は黒崎の手を掴んで、黒崎を引き止めた。
「な、なんだよ、、」
「私何か嫌なことしてしまったかしら、、、それならごめんなさい、、、」
「え、、、別にそういうわけじゃ、、!」
「今日一日中口を聞いてくれないし、、挨拶も無視されてたから、、もしかしたら何か気に障ることしてしまったのかもしれないと思って、、」
「あー、、、、」
黒崎は、霧島に対してどれだけ良くないことをしていたか自覚した。先日母親に言われたことは気にしないようにしていたはずだったのだが、どうやら体が反射的に霧島を避けてしまっていたようだ。
「す、すまん、、ちょっと色々あって、、落ち込んでたというか、、」
「山田さんとは普通に話してたから、、私だけ無視されてるかと思って、、えっと、、、」
「ちょっと待て泣くな、、!ちゃんと説明するから、、!」
今にも涙が出そうになっている霧島を、黒崎は必死になだめていた。
「実はこの前母親と会って、、」
そうして黒崎は霧島に対して、先日母親に言われたこと、自分の両親のことなど話せる範囲のことを話した。
「私たちが一緒にいるところを見られてそんなことを言われたのね、ひどい話だわ」
「すまんな勘違いさせちまって、、でもあのクソババアの言うことも確かに一理あるんだよな」
「それはどういうこと?」
霧島は怒りから困惑の顔つきに変わった。それもそうだ、先程まで話していた黒崎にとって良くない話のはずのことを、いきなり肯定し始めたのだから。
「確かに俺みたいな見た目のやつと委員長が関わるのは委員長のイメージが確かに悪くなる、これは間違っていない」
「、、、、」
「それに俺だって委員長のイメージが悪くなるのは嫌なんだ、確かに委員長とは仲良い友達でありたいけど、それ以上に俺のせいで委員長が傷つくのは嫌だ」
黒崎は自分が思っていることを霧島に全てぶつけた。
「それで?話はそれだけかしら?」
「お、おう、、そうだけど、、」
案外ケロッとしていて、急に強気な剣幕になったため、黒崎は少しびっくりした。
「私、あなたと関わって迷惑に感じたこともないし、傷ついたことなんて1度もなかったわよ?」
「そ、それは、、そうかもしれないが、、周りはどう思ってるか、、」
「周りなんて関係ないわよ、そんなことより今日一日中避けられた方がよっぽど傷ついたわ」
「す、すまん、、」
霧島の強気な言葉に、黒崎は返す言葉もなかった。
「たとえあなたのことで私の印象が下がったしても、私は何も気にしない。そうなるより無視される方がよっぽど気が悪いわよ」
「ほんとにすまん、、」
初めて見るほどに怒っている霧島に、黒崎は謝ることしかできなかった。
「周りのイメージなんて所詮イメージよ。それにあなたは周りがイメージしているような悪い人間じゃないわ、友達思いで強い人間で、外見からじゃ判断できないあなたの良さがあるのよ」
「そ、そうか、、?」
急に霧島にストレートに褒められ、かなり恥ずかしくなる黒崎である。
「とにかく、明日からはいつも通りでお願いしたいのだけれど」
「お、おう、、!すまんななんか、、色々気使わせちまって、、」
「わかればいいのよ、じゃあまた明日ね」
そうして霧島は教室を後にしていった。
「なんか、かっこよかったな今日の委員長」
黒崎はそう呟いた。
(なんで俺の鼓動はこんなに速いんだ、、?)
何故かいつもよりかなり速い鼓動に、黒崎は困惑していた。
(俺も、、委員長と堂々と関われるような人間にならないとな、、)
そう決心した黒崎は、学校から出たあととある行動に出るのであった。




