夏祭り
「どれにしようかしら、、」
霧島はとても悩んでいた。何に悩んでいるかというと、明日の夏祭りに着ていく浴衣で悩んでいた。
「派手なのは似合わないかしらね、、でも地味でもなんかだし、、」
「彼氏さんはなんでも喜ぶと思うよ?」
「か、彼氏じゃないわよ!!」
そうこう悩んでいると、横からひょこっと妹の莉奈が出てきた。
「別にそういうのじゃないし、、余計なお世話よ」
「え、そういうのじゃないのになんでそんなに悩んでるの?」
「か、可愛くないよりは可愛い方がいいでしょ?」
別に誰に可愛いと思ってもらいたいとかは決してないのだが、着るなら可愛いものの方がいいと思っているのである。
「お姉ちゃんみたいな人はなんも思ってない人には別に可愛いと思ってもらいたくないタイプだと思う」
「な、、、!そんなこと、、、ないわよ、、!」
「お姉ちゃん素直じゃなさすぎ。そんなんじゃ他の女の子に取られちゃうよ」
「よ、余計なお世話よ!」
リビングにいると莉奈にちょっかいをかけられるので、自室に戻りまた散々悩み始める霧島である。
「派手だと笑われるかしら、、」
自分のイメージ的には派手目なものは似合わないと思っている。しかし、折角の夏祭りなので着ていくかいかないかで非常に迷っているのだ。
「まあいいわ、笑われたらぶっ飛ばせばいいもの」
悩んだ末結局開き直った霧島であった。
「夏祭りだーー!!」
「声でけえな」
夏祭り当日、まだ会場に着く前からウキウキの星宮に少々呆れ気味の黒崎である。
「お、おまたせ」
「あ!玲奈っちもきた!!」
そして黒崎の目に入ってきたのは、ピンク色の浴衣を着た霧島であった。
「ど、どうかしら、、?」
「えっと、、いいんじゃねえか、、?」
「そう、、?ほんとう、、?」
「な、なんだよ」
「ふふ、なんでもないわよ?」
「??」
何故かいきなりご機嫌になった霧島に困惑する黒崎である。
「ねえねえうちはどう!?」
「ん、まあいんじゃねえの?」
「やったー!!」
星宮も浴衣を着てきているようだ。蒼空と黒崎は普通に普通の私服である。
「ふーん、、?姫華にも褒めるのね」
「ん?今なんて、、」
「それじゃ早速屋台行こーー!!」
「おい待てって!」
「僕も星宮さんの方行ってくるね!」
「おい!人の話を聞け!」
そして2人は屋台の方へと消えていった
「はあ、ったくあいつら、、」
「、、、、」
(待ってなんかこっちも様子おかしいんだけど!?)
霧島の方を見ると完全にそっぽを向いていた。
「な、なあ俺なんか悪いこと言ったか、、?」
「ふん、、、別に?」
(めっちゃ拗ねてる!?!?)
いつもより素っ気ない返事が返ってきて、すぐに異変に気づいた。
(浴衣の褒め方がまずかったか、、?)
黒崎は先程の発言を振り返ってみた。
(いやでも機嫌良かったしな、、)
先程まで普通に笑顔だったはずなのだが、気が付けば機嫌が悪くなっていた。
「なあ、、なんか変なこと言ったなら謝るから何に怒ってるか教えてくれよ」
「ふん、、あんたが女たらしなクソ男ってだけよ」
「すごい悪口だな!」
急に霧島の口から出てきた罵倒に少々傷つく黒崎である。
「それにしても意外だな、結構派手な浴衣着てくるからびっくりした」
「そ、そう?派手なのはどうかと思ったのだけれど、、似合ってるかしら、、?」
「あ、ああ。とても似合ってると思うぞ?」
「さっき姫華にも言ってた癖に、、」
「え?」
「どうせ誰にでもお世辞でそうやって言うのでしょ?どうせ似合ってるなんて思ってないんでしょ?」
「いや別にそんなことは、、」
「嘘つき、、」
(いやちょっと待てよ?)
ここで黒崎の頭の中に1つの答えが出てきた。
(もしかして嫉妬してる!?)
黒崎はとてもびっくりしたと同時に、1つの感情が芽生えた。
(だとしたらこいつ可愛すぎだろ)
自分だけ褒められてると思ったのに他の人も褒められてて嫉妬をする、あのツンツンした霧島がそんなことを思うなんて黒崎は到底思っていなかった。
「ふふふ」
「何笑ってるのよ」
「いやあやっぱ委員長は可愛いなあって」
「な、何よ急に!いきなり褒めても無駄よ!」
「そうやって照れ隠しするとこも可愛い」
「う、うるさい!とっとと行くわよ!!」
「はいはい」
怒りながらも機嫌はとりあえず戻った霧島を連れ、屋台を歩き回ることにした。
「へえーあんま祭りとか行かんけど色んなものがあるんだな」
「1人で行ったら顔の圧で通報されそうだものね」
「おお悪口がすごいな」
でも確かに顔関係なしに1人では祭りに行くことはない。前までも蒼空と行くという選択肢はあったが、男2人で祭りに行って何が楽しいのか黒崎にはよく分からなかったのでほとんど行ったことがない。
「それにしてもすげえ人だな、、、、ってあれ委員長は!?」
人混みのせいでどうやらはぐれてしまったようだ。
「どこだ、、、?」
人が多すぎてまともに探せない黒崎である。
「とりあえず連絡を、、」
「これ美味しいわね」
「うわびっくりした!」
そう思っていた矢先後ろから霧島がやってきた。
「りんご飴って美味しいわね」
その手にはりんご飴があり、どうやら先程屋台で買ってきたらしい。
「いきなりどっか行くなよ!!はぐれたかと思ったわ!!」
「あら、私がいなくなって寂しかったわけ?」
「そういうことじゃねえ!お前1人で行動したら危ねえってことだよ!」
「そうかしら?あなた背でかいから見渡せばすぐにどこにいるかわかるわよ?」
「わがままめ、、、、ったくしょうがねえな」
「ひゃっ、、!なに、、、!?」
黒崎は霧島の手を握りしめ、勝手にどこか行かないよう手のリードをつけることにした。
「わ、わかったから、、!もう勝手にどっか行ったりしないから、、!」
霧島は顔を赤くして俯きながら言った。
「これは勝手な行動した罰だ、嫌なら行動で示すんだな」
「べ、別に嫌なわけじゃ、、」
「そこのカップルさん!!射的やってかない?」
「い、いや俺らカップルじゃないです、、!」
「カップルじゃない、?」
射的のお兄さんは黒崎たちの手をじっと見つめた。
「そんなに手ぎゅっと握ってるからカップルかと思っちまったわ!すまんすまん!」
「これはえっと、、!その、、、!射的やります、、!!」
「あ、、!ちょっと、、!」
黒崎は霧島の手をパッと離し、逃げるように射的を始めた。
「それじゃあ1回500円で5発ね!しっかり後ろに落としたら景品ゲットだ」
「委員長欲しいのある?」
「え?私?」
「欲しいのあったら取ってやる、何がいい?」
「じゃ、じゃああの熊のぬいぐるみを、、」
「わかった」
そうして黒崎は射的の銃を持ち、弾を撃つ姿勢に入った。
(すごい自信ね、それに構えもそれっぽいし得意なのかしら)
真剣な顔で挑む黒崎にただならぬ雰囲気を霧島は感じた。
「よし、、行くぞ、、」
そして黒崎は弾を撃った。そしてその弾はパンッ!という音と共に熊とは全く別の方向の遥か彼方に飛んでいった。
「、、、、え?」
「な、なんだよ」
「ふふっ、だって、、!あんなに自信満々そうだったのに、、!」
霧島はまさかの展開に腹を抱えて大爆笑していた。
「しょ、しょうがねえだろ!やったことねえんだよ!」
「あんなに自信ありげだったのに、、!!面白すぎでしょ、、!!」
「恥ずいから笑うなって、、!」
恥ずかしさでいたたまれなくなった黒崎はとっとと残りの4発を撃ちきることにした。
「残り一発か、、」
3発とも全く別の方向にいってかすりもしなかった。
「たのむ、、当たってくれ、、!」
最後の1発に心を込めて、パンッという音とともに弾は飛んで行った。
「ダメか、、」
結局熊のぬいぐるみに弾を当てることは出来なかった。
「いや待って!黒崎くん!」
「ん?」
霧島にそう言われ景品の方を見たと同時に、その隣にあるタコのぬいぐるみが落ちた。
「お兄さんおめでとう!ほらこれ景品ね!」
「え?なんで?」
「どうやら流れ弾で落っこちたみたいね」
まさかの熊のぬいぐるみを狙った弾は、逸れて隣のタコのぬいぐるみにヒットしたらしい。
「まさかそんな当たり方するとは、、」
黒崎は意外な結末に呆然としていた。
「こ、これいるか、、?」
黒崎は霧島にタコのぬいぐるみを渡した。
「ふふっ、ありがたく頂くわね」
「いいのか?熊じゃないけど、、」
「いいのよ、これがいいの」
霧島は笑顔でぬいぐるみを抱きしめながら言った。
「そうか、、?それならいいけど、、」
「黒崎くんが私の為に頑張って取ってくれたものだもの、いらないわけないでしょ?」
「っ、、、!」
黒崎はそう言った霧島と目を合わせることが出来なかった。
「一生大切にするわ」
「そ、そうか、、?」
(よく意識しねえでそんなこと言えるな、、)
ぬいぐるみを抱きしめながらそういう霧島に恥ずかしさと、そして嬉しさも少し込み上げてきた気がした。




