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繰り返す日常の中で。  作者: 理春


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第12話

度数の高いカクテルというのは、ウォッカベースのものが多かったりする。

当たり前だ。ウォッカなんて誰もが知る、度数高いお酒の代表格。

お酒というのは薬物と同じで、依存性が高く、ハマると意識もお金も簡単に飛んでいく。

飲み過ぎれば思考力を乱して、正常な判断は出来なくなる。

まともに頭が働かなくなるということは、普段の自制心を保てなくなるし、理性のタガも外れてしまう恐れがある。

だが裏を返せば、日常生活の中で、必死に自分というキャラクターを作り上げ、取り繕ってる人の本性を、あわよくば簡単に暴けるということ。


酔うと饒舌になる人もいるし、甘えたくなる人や、誰とでもコミュニケーションを取れるようになったり、説教臭くなる人もいる。

俺が卯月さんの飲み比べに乗ったのは、半ば強引に彼の本性を暴けると踏んだからだ。

彼の意図はどうかわからないけど、正直負ける気はしなかった。

何故なら俺の両親は二人とも、九州出身の大酒飲み。

かといって大袈裟に飲んでるところを子供の前で見せない人だが、度数の高い酒をいくら飲んでもザルなもんで、酔っているところなんて、子供の頃から一度も見たことがなかった。

アルコール耐性は遺伝するもんで、俺も妹も泥酔して失敗した~なんてイベントは起こさない。


5杯目

普通の人なら、度数の高いカクテルを立て続けに飲んでいると、そろそろ酔いが回ってくる頃。

けれど卯月さんは思ったほどそうでもない。

飲み進める俺を心配してか、急性アルコール中毒に気を付けながら、水を途中で挟みつつ、食べ物も色々つまみながら飲んでいた。

まぁカクテルじゃあグラスが小さいし、ジョッキで飲む人とは量が違う・・・。

まだまだこれからだろう。


「そこそこ食べてると、お腹いっぱいになってきましたね・・・」


俺がふぅと息をつきながら言うと、彼も少しベルトを緩めつつ微笑んだ。


「確かに・・・。酔いはそうでもないけど、色んな物少しずつ食べたからか、そろそろお腹いっぱいかも。」


7杯目

俺はまだまだ余裕。日本酒も美味しいのを頼みつつ、ウイスキーにも手を出していた。


「おいし~♪」


「・・・灯、大丈夫?」


「何がですか?酔ってるように見えます?」


「・・・うん、ちょっと・・・」


「・・・。全然シラフですよ。」


以前卯月さんは、楽しいデート場所で盛り上がれることは、その場所に頼っていること。

それを抜きにして楽しませてあげられる程の、力量が自分にはないと言っていた。

人がコミュニケーションの中で、相手と仲を深められるかどうかは、色んな手口があるとは思うけど、自分の趣味や感性を、どれだけ受け止めてもらえるかが大切かもしれない。

好き嫌いや価値観、生活リズムや公私の優先度・・・どれ程マッチするかで関係性は変わってしまう。


「卯月さん・・・」


「ん?」


「・・・何でイケメンで賢くて、国立大学の准教授っていう立派な職業なのに、彼女いないんですか?」


「・・・・・ふふ・・・」


彼は直球な質問に一瞬面食らった表情を見せてから、特に不躾な俺に怒った様子もなく答えた。


「この前から今まで、俺と会話してたら何となくこうじゃないかなぁっていう検討はつかない?」


「・・・いいえ?」


「そっかぁ・・・」


「人間なんて表面的なことで判断出来ません・・・。パッと思いつく原因としては、実は外面がいいだけで性格に難ありなのか、はたまたとんでもない性癖の持ち主か・・・付き合ったら豹変して、暴力を振るうような危ない人か・・・それとももっと恐ろしい秘密を持った人なのか・・・とかですかね。でも俺はご存じの通りゲーム脳ですから・・・」


「ふふ・・・。」


彼はミステリアスに微笑みを落とすだけで、自分は何も答えを持っていないとばかりに、どこか興味なさげだった。


「・・・しいて言うなら・・・興味ないからかな・・・。」


「・・・何にですか?」


「灯がさっき言ったような・・・肩書で興味を示されることに。もしくは・・・本能的なことに。」


「・・・本能的なこと・・・」


卯月さんは手元のグラスを煽って飲み干し、近くにいた店員さんに新しいお酒を頼んだ。


「生物的に当たり前の事だけど、女性がルックスのいい人や、頭のいい人、もしくは身体的に優秀な人を魅力的だと感じるのは、遺伝子が優秀だからなんだ。女性は子供を産むから、より強くて優秀な遺伝子を残すために男性を選り好みする。その判断基準として、見てすぐわかる優秀さは、顔の良さだったりするよね。」


「そうですね・・・」


「一説によると、顔のパーツが整っていて高身長な人は、遺伝子が優秀なのはもちろん、免疫力も優れているっていう研究結果があったりするんだ。」


「へぇ・・・」


「でも昔から・・・人から好感を持たれることよりも、弟が話す医学の話が面白く感じて、人の病気を解き明かすための生物学にのめり込んでいった。遺伝子の研究を一学者として進められるようになれたら、今まで誰も発見出来なかったことを解き明かして、現代の医学に貢献出来たりするかもとか・・・それで救えないはずの難病を抱える人を、助けてあげられるかもしれないんだっていう希望を、傲慢にも抱いちゃってるんだ。」


卯月さんはその綺麗な瞳を輝かせて、次に恥ずかしそうに目を伏せた。


「毎日やっていることは、小さな研究の積み重ねで・・・論文書いても、箸にも棒にも掛からないことだってあるよ。有名な科学雑誌を読んだり、最新の論文の記述や、高名な教授の講義を受けても、小さな第一歩になるような発見すら、自分に出来るかどうかわからない。医学でも生物学でも、ラボで働いている人たちは皆、もちろん他の分野の学者だって、自分の何かがきっかけになって、未来の確変を夢見てる。・・・俺はね・・・自分の身近な幸せとか・・・家族にとっての幸せとかを・・・犠牲にしてるから、恋人がいないんだと思うよ。」


「・・・・・・」


優しく微笑むその笑顔が、悲しそうに見えてしまって

本当は寂しいんじゃないんですか、なんて酔った勢いでも言えなかった。


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