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屋敷について制服のままクレアと一緒に早速厨房へと向かう。今日は何を作るのかと胸を躍らせているとオリバーが唐突に聞いてきた。
「お嬢様達は、軽食系とお菓子系どちらを差し入れに選ばれるおつもりですか?」
しまった。考えていなかった。クレアと顔を見合わせる。
現状、差し入れるとしたら放課後アドレアン様が寝ているときがベストだろう。だとすると授業後小腹もすいているはずだし、軽食系でもいい気がするがお菓子の方が気軽に差し入れしやすくもある。素直にそう打ち明ける。
「わかりました。では最初は差し入れしやすい焼き菓子などから始めて、差し入れに慣れてきたタイミングで軽食などを差し入れるといった方針で行きましょう。いかがですか?」
私達はオリバーの提案に頷いた。
そうと決まれば今日の練習は焼き菓子だ。前にも作ったことがあるが、まずスコーンとクッキーの練習をすることになった。フィナンシェとかは少し技術がいるので次のステップだ。
スコーンはシンプルにプレーンスコーン、クッキーはチョコチップを入れたものにする。バリエーションをつけていくのはまだ先だ。まずは必要な材料を集めることから始まる。今回作るものは初めてではないので、オリバーは口を出さずに見ているだけだ。聞けば答えてくれるが、このくらい自分でできるようにならなければ料理はできるようにならない。いい機会なので、クレアと私は一緒に作らずにそれぞれ作ってみることにした。
私は最初にクッキー次にスコーンの順、クレアは反対でスコーンそれからクッキーと作ってみることになった。カンニングはできない。自分の記憶と経験で作り上げることになる。ドキドキしながら粉を吟味した。一口に粉と言ってしまっても色々な種類がある。その中から小麦粉を探し出す。小麦粉は小麦粉でも焼き菓子に向いたものから食卓に上るような料理に向いたものまである。その中からオリバーに教わった記憶を手繰りつつ、焼き菓子に使うものを探す。バター、砂糖、チョコチップ・・・と必要な材料を集めていき、今度は計量だ。お菓子作りは計量が命だとオリバーに教わった。慎重に量っていく。材料を量り終えたらようやく作業にとりかかる。おっといけない。混ぜる前にオーブンを予熱しておかなければ。日頃の練習の成果を見せる時とばかりに魔法石に魔力を注ぐ。無事にできたようだ。だがまだまだ慣れそうもない。時間も集中力も必要以上にかかってしまった。改善の余地がありそうだ。魔法の訓練に邁進しよう。
材料を混ぜて鉄板の上に落としていく。ここまではいい感じだ。オーブンの具合を確かめる。温度はちょうどよさそうだ。クッキーの生地をオーブンに入れ、その間に今度はスコーンの材料を取りに行く。
材料を集め終え、計量にかかる前にオーブンを見た。まだもう少しかかりそうだ。時間を確認する。焼き時間はもう少しある。私は先にスコーンの材料の計量にとりかかることにした。
そんな感じでクッキーを焼き、スコーンを焼き、紅茶を淹れてそれっぽいティータイムセットが出来上がった。厨房からサロンに移動してクレアと一緒に各々いただくことにする。
(・・・まずい。)
うん、まずい。何がとも言えないが何かそこはかとなくまずい。なぜだろう。見た目は完璧なのに。
紅茶からクッキー、スコーンに至るまで、何かが残念な味に仕上がった。紅茶の淹れ方もレベッカに教えを請わねばならないだろう。クレアの方はどうだったのか聞いてみる。
「クッキーもスコーンもそこが焦げてて硬くてかじれないわ。オーブンの温度が高すぎたのかしら。」
「正解です。クレア様は高温での予熱のしすぎ、ルーチェリアお嬢様はオーブンの温度が少し低かったですね。それとルーチェリアお嬢様に関しては粉も間違っています。」
一緒にサロンに来たオリバーが教えてくれる。このまずさは粉が間違っていたからなのか。サクッとしていなくてなんだか少し粉っぽいような気がするのは温度が低かったから。料理の奥深さを改めて知らされた気分だ。
「ちなみに紅茶がまずくなったのは温度と蒸らし時間が理由だと思いますよ。」
オリバーが紅茶についても教えてくれた。普段侍女たちは特に何も考えずに簡単に淹れているように見えるのに、そうではなかったみたいだ。
「差し入れまでにはまだまだ練習が必要ね。」
クレアが言う。私もそれに同意した。
「そうね。難しい物なんて贅沢は言わないから、せめて美味しいものを差し入れられるようになりたいわ。」
「カタル様が卒業するまでにまだあと2年半くらいあるから、頑張りましょう。今ならまだ巻き返せるわ!」
クレアが謎の気合を入れて言う。
「やっぱり魔法石の使い方ももう少し勉強しないといけないわよね。」
「うん。実技の授業も始まったし、もっと自主練時間を増やさなきゃいけない気がする。」
それからレベッカも呼んで、紅茶の淹れ方と魔法の使い方の自主練についてのレクチャーを受けた。




