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 授業が開始されて一週間が経過した。一通り受けてみた今のところだが、問題なくやっていけそうな気がする。1年生限定の授業も当初思い描いていたよりレベルの高いものになりそうで、なかなか興味深い。

 これからまたダンスの時間になるが、クレアがぶうたれている。


「王都の男ってなんであんなに貧弱なのよ。あんなんじゃステップもまともに踏めないじゃない。ターンなんてしたら吹き飛びそうよ。」


 クレアの言うことはなんとなくわかる。実際先週の様子を見ていてもクレアの相手の男子生徒は何度か吹っ飛ばされそうになっていた。体幹の強さの違いから踏ん張りがきかないんじゃないかと思うのだ。


(これは今日からクレアのお相手は、先生に吟味してもらってそれに耐えうる相手にしてもらわなければ駄目ね。)


 私は心の中でそっと思った。


(そうなると相手はレイナルド殿下かアドレアン様。

 私がダンス講師なら教えやすさとか技術を鑑みて、少なくともしばらくの間クレアのお相手にはレイナルド殿下を推薦したいところだわ。)





 私の考えはダンス講師の先生の意見と一致していたらしい。真っ先にクレアのお相手としてレイナルド殿下が指名されていた。私のお相手は先週から引き続きアドレアン様だ。


「よろしくお願いします。

 今週もアドレアン様となんですね。」


「納涼会の様子でも見てたんだろ?俺が普段やる気なく授業を受けてるからだよ。この調子なら今学期の間中ずっと、俺の相手はお前だろ。」


「え、そうなんですか。」


「なんだよ、嫌か?」


「別にそういうわけじゃないんですけど、新鮮さはないな・・・と。」


「悪かったな、新鮮さがなくて。」


「いえ。でもクレアの相手がレイナルド殿下で安心しました。

 クレアと踊れるのはレイナルド殿下かアドレアン様しかいないと思っていたので。」


「あー、俺はないだろ。素行的に。

 レイナルド一択だよ。」


「素行的にって。今学期はちゃんと踊ってくださいね。」


「ちゃんと踊ってるだろ?

 元々必要最低限はやってたんだよ。」


「最低限しかやってなかったんですね。」


「それで充分だろ。」


「全然充分じゃないですよ。必修授業なんですからね。」


「だから相手がお前なんだよ。」


「わかったような、わからないような。」


「いいんだよ、それで。」


 (いいって何がだろう?)


 そう思ったが口にはしなかった。今のところアドレアン様はちゃんと授業を受けてダンスを踊っているし問題はない。このままちゃんとやってくれることを期待しよう。



 クレアはレイナルド殿下が相手であることで踊りづらそうにしてはいたが、動きはだいぶ安定している。さすがレイナルド殿下だ。クレアの動きに翻弄されることなくちゃんとリードしている。クレアの動きに優雅さが足りない気がするが、それはレイナルド殿下と踊っているうちに矯正されていくだろう。周囲のご令嬢たちはうらやましそうにクレアを見ている。私もちょっとうらやましい。レイナルド殿下のリードで踊ると足に羽根でも生えたのではないかと言うほどかろやかに踊れるし、リードの最中にも細かな気遣いが伝わってきてなんだか幸せな気分になれるのだ。そんなレイナルド殿下の相手をこれからも務めるかもしれないクレアに複雑な気分になった。

 他のご令嬢とレイナルド殿下が楽しそうに踊っているのを見るよりはいいかと思ったが、何かがあってクレアがレイナルド殿下に惹かれないとも限らない。それを想像して私は少し気が重くなった。



 


 ダンスの授業が終わった後、私はクレアと一緒に馬車に乗っていた。今日は恒例の我が家での特訓の日なのだ。今日はレベッカから魔法ではなく、料理長のオリバーから料理を習うことになっている。


「レイナルド殿下とのダンスはどうだった?」


 早速クレアに聞いてみる。


「前の時より格段に踊りやすかったわ。気づくとステップの方に誘導されてる感じなのよね。主導権を握れないのはちょっとやりづらいような気がしないでもないけれど。

 それより、いきなり王子殿下と組めって指名されたときはどうしようかと思った!他のご令嬢からの視線に焼き殺されて心臓が止まるかと思ったわ。」


「ああ、それはたしかにね。」


「踊ってる最中も恨みがましい視線が突き刺さるかと思ったくらいよ。」


 私は自分も似たような視線をクレアに送っていたことなんておくびにも出さず、答える。


「レイナルド殿下は納涼会でも踊っていないし、みんな狙っているのよ。同じクラスになるだけでも嫉妬されるくらいなんだから仕方ないわ。」


「そういうルーチェだって前回に引き続きカタル様と踊っていたじゃない。」


「ああ、それね・・・。」


「どうしたの?なんか含みがある感じ?」


「アドレアン様によると納涼会の時の様子を見てたんじゃないかってことだったわ。それとアドレアン様の素行に問題があるから、今後もアドレアン様と組むことになるかもって。」


「嫉妬イベントも遠くないかもしれないわね。」


「やめてよ。」


 私は恨めしく息を吐いた。





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